能登半島地震で店舗が被災し、休業していた志賀町末吉の中華料理店「唐人(とうじん)」が9日、営業を再開する。いったんは七尾税務署に廃業届を提出したが、再開を望む多くの常連客の声に押されて取り下げた。8日は店舗の修繕作業に当たった地元業者の6人を招いて試食会を開き、店主の徳野外茂男さん(75)は「楽しみにしてくれる人のため、もうひと踏ん張りする」と意気込んでいる。

 唐人は1974年の開業で、妻敦子さん(69)と2人で切り盛りしてきた。チャーハンや天津飯、中華丼など定番の中華料理をはじめ、カレーやオムライスなど50種類以上ある多彩なメニューが人気で、夫婦の人柄を慕って多くの人が訪れていた。元日の地震では、2階建て店舗の柱4本が基礎からずれたほか、厨房(ちゅうぼう)の棚が倒れ、駐車場が約50センチ隆起する被害を受けた。

 徳野さんは年齢なども考えて店を畳むことを決め、1月15日に廃業届を提出したが、毎日のように常連客から電話で励まされ、再び店を開くことにした。3月下旬に店舗の修繕に着手し、廃業届も取り下げた。当面は昼のみの営業で、水曜は定休となる。

 試食会に訪れた同町仏木の上田誠也さん(61)は「この味を待っていた。生活の一部がようやく戻った」と喜んだ。