山田裕貴が声の演技で届ける、ジャズの世界を志す青年の物語！劇場版アニメ「BLUE GIANT」

唯一無二の存在感で、演じる役柄に圧倒的なリアリティを与える俳優・山田裕貴。俳優としてはもちろん、「クレヨンしんちゃん 激突！ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」の防衛大臣役を皮切りに、「100日間生きたワニ」「フラ・フラダンス」「ONE PIECE FILM RED」などアニメーション映画でも声優として活躍。ナチュラルな演技で、キャラクターに命を吹き込んできた。そんな山田の声優としての実力を味わえるのが2023年3月に公開された、シリーズ累計部数890万部超の大ヒットコミックが原作の劇場版アニメ「BLUE GIANT」だ。

ジャズに魅了され、テナーサックスを始めた高校生・宮本大。雨の日も風の日も、毎日たった1人、河原でテナーサックスを吹き続けてきた大は、高校卒業を機に「世界一のジャズプレーヤーになる」という夢の第一歩として故郷の仙台から上京。高校の同級生・玉田俊二のアパートに転がり込み、ある日、訪れたライブハウスで同世代の凄腕ピアニスト・沢辺雪祈と出会う。雪祈が奏でる音に魅了され、初対面にも関わらず、一緒にバンドを組もうと誘う大。初めは本気で取り合わない雪祈だったが、聴く者を圧倒する大のサックスに胸を打たれ、2人はバンドを組むことに。そこへ大の情熱に感化されて自身もドラムを始めた俊二が加わり、3人は"JASS"を結成する。

ジャズに魅せられた青年たちの青春を描く音楽アニメで山田が演じるのは、中学3年生で出会ったジャズに心を打たれ、世界一のサックスプレーヤーになることを決意した青年・大。夢に向かってひたむきに努力を重ねる大を山田は、純朴さを滲ませた優しく柔らかい声で表現した。雪が降りしきる河川敷で1人黙々とサックスの練習をするファーストシーンで山田が披露するのは、声優ならではの息の演技。肺に溜まっていた空気をすべてサックス演奏につぎ込んだ大が、荒く息をするといった一連の場面で、繊細な呼吸音を聞かせる。そして、「雪に音が吸収されて聞こえねえべさ」という仙台弁を交えたセリフや、「なる、なる。プレーヤーに、オレ絶対に、なる。オレは世界一のジャズプレーヤーになる」と自分に言い聞かせるような呟きに「夢を絶対に叶える。そのためならばなんだってする」といった決意を滲ませ、大というキャラクターのピュアなパーソナリティーを見事に表現した。

大の独り言では、声を張ることなく、抑えたトーンで語る一方で、家族や友人の玉田との会話では"元気いっぱいの18歳"といった口調とメリハリをつけた演技を聞かせる山田。そんな山田と見事な掛け合いを披露するのが、雪祈役の間宮祥太朗と、玉田役の岡山天音という若手実力派俳優陣だ。等身大の青年たちが「日本最高のジャズクラブ『So Blue』に出演し、日本のジャズシーンを変える」という夢を共に追う中で育む絆を、ナチュラルな演技で作り上げた。

全編を彩る、世界的ピアニストの上原ひろみが担当した音楽も大きな魅力の本作。山田が命を吹き込んだ大と、その仲間たちが辿り着く未来の行く末を見届けてほしい。

文＝中村実香