3月9日(土)、藤沢周平原作、北大路欣也主演の大人気オリジナル時代劇シリーズ最新第7作「三屋清左衛門残日録 ふたたび咲く花」が時代劇専門チャンネルで放送される。本作は、北大路演じる前藩主用人の三屋清左衛門が隠居の身ながら、幼なじみで町奉行の佐伯熊太と共に町や藩にはびこる悪に迫り、事件解決に奔走する物語。昨年1月に同チャンネルで放送された第6作「―あの日の声」は、「ドイツ・ワールド メディア フェスティバル2023」エンターテインメント部門で金賞を受賞。悪を成敗しながらも人々を優しいまなざしで見つめる藤沢周平の世界は、日本のみならず海外の人々の心にも響くことが示された。

前藩主用人の清左衛門を演じる北大路欣也
前藩主用人の清左衛門を演じる北大路欣也

(C)日本映画放送/J:COM/BSフジ 藤沢周平(R)

今回放送される最新第7作「―ふたたび咲く花」は、清左衛門が道場の少年たちのけんかを仲裁したことをきっかけに、ある家族の問題と複雑に絡まった藩の闇に切り込んでいく。今作以外にもドラマ「銭形平次」をはじめ、さまざまな作品で共演している北大路と熊太役の伊東四朗の二人に、第7作の見どころを聞いた。


――まずは「三屋清左衛門残日録」シリーズの魅力について、お聞かせください。

北大路「毎回、藤沢先生の作品の中の『心』に打たれます。自然や人間が生きていると同時に、生かされていることへの感謝の気持ちもある。『利他愛』があるので、毎回、それを感じ取れる素直な自分を意識して、現場に向かうようにしています」

伊東「私は作品の根源に、主人公の優しさがあるところがいいなと思います。ですから、熊太が物語をまぜ返すほどに清左衛門の優しさが際立ったら...と思っています。それから、冒頭に自然の風景が出てきて、ホッとするところも魅力だと思いますね」

北大路「今、伊東さんがおっしゃった自然の中に熊太や清左衛門が存在していて、一人一人が務めを果たしている。そうして、一歩ずつ前進していく清左衛門の姿に魅力を感じます。ただ、清左衛門といえども完璧ではないので、肝心なところで熊太が出てきて、『そうじゃないだろう』と言ってくれる。出過ぎれば注意もしてくれ、安心できる。ですから、清左衛門が小料理屋『涌井』などで熊太に会うとうれしくて仕方ないという顔をしますが、あれは本心そのものなんですよ」

伊東「幼なじみが年月を経て、憎まれ口をたたき合っても一緒にいることが楽しい。そういう雰囲気が出るといいなと思いながら、毎回演じています」

――とても仲が良い清左衛門と熊太の関係も魅力の一つだと思います。

北大路「実は伊東さんと初めてお会いしたのは、今から約40年前になります」

伊東「『男子の本懐』というドラマで、私は床屋の役でした」

北大路「そうです! それで私は学生時代からてんぷくトリオの大ファンで、生放送があるときは急いで帰っていたほどだったので、髪を切ってもらうシーンでは心の中で、『うわー! 伊東さんに頭を刈ってもらっている!』と思っていました」

伊東「そうだったんですか(笑)。私から言わせてもらえば、その作品よりもずっと前に月刊誌に載っていたスケートリンクで撮られた北大路さんの写真がとても印象的で、それが心に残っていました」

北大路「キョートアリーナ(1975年に閉鎖)というスケート場で撮ったものです」

伊東「ですから、幼なじみ役をするときは、その写真を思い出しているんです」

北大路「いやあ、そうでしたか(笑)」

――良い関係が40年以上、続いているんですね。

北大路「良き出会いに恵まれ、今、この作品で共演できていることで喜びが倍増しています」

伊東「それは私が言うことですよ。私は最初の舞台も映画も時代劇だったのですが、時代劇のことはまったく知らずにやっていました。それが『銭形平次』に呼んでいただき、88本撮っている間に学ばせていただけた。侍の歩き方、町人の歩き方、刀の差し方などを全部、北大路さんをはじめ皆さんが見せて教えてくださった。ありがとうございました」

北大路「いえいえ。私も先人から教わったものですから。それが、こうして『三屋清左衛門残日録』でも共演させていただき、シリーズも7作目。毎回演じるたびに伊東さんから何らかをいただき、私はそれに反応することでお芝居できている。それが楽しく、うれしくて、同じことを繰り返しているという感覚は一切ないですね」

(C)日本映画放送/J:COM/BSフジ 藤沢周平(R)

――「―ふたたび咲く花」では、事件が見えてくるきっかけとなる少年・俊吾を演じる一ノ瀬嵐さんの存在も際立っていましたが、どのような印象を持たれましたか?

北大路「彼は撮影当時まだ11歳だったのですが、演技に加えて音楽もダンスも若い頃から...って今も若いですが(笑)、ずっとやってきたそうなんです。それも、言われたからではなく好きだから自ら望んでやってきたと。自分の12歳の頃と比べてみて、すごいなと思いましたね。だから、現場では『先輩』と呼んでいました。私がデビューしたのは12歳でしたし、彼は11歳であのようなお芝居をするので『大先輩だ』と伝えたら、ポカーンとしていました(笑)」

伊東「私は同じシーンがなかったので、一ノ瀬さんには会えなかったのですが、子役さんのうまい子を見るとびっくりしますね。小料理屋のシーンに出てくる小林綾子さんは、連続テレビ小説『おしん』でご一緒した時にびっくりしました。例えば、何回リハーサルしても、毎回まるで初めて聞いたような表情をして真剣に驚くんです。その彼女がこのシリーズでは小料理屋のシーンに出演されているのですが、今もご一緒できているのがうれしいです」

――第7作「―ふたたび咲く花」の印象に残っているシーンを教えてください。

北大路「どのシーンも新鮮でしたが、中でも金田明夫さん演じる筆頭家老の朝田弓之助と清左衛門が対峙(たいじ)するシーンは印象的ですね。隠居の身の清左衛門と朝田家老が会うきっかけがきちんと練られているし、その後は清左衛門と熊太という、変化球と直球の両方で彼を攻めていくのでとても面白く感じました。詰め寄るシーンは毎回ありますが、今回は珍しく熊太と二人で詰問するんです。その際の金田さんの反応を見るのも楽しかったです」

伊東「北大路さんと金田さんの掛け合いが好きなので、個人的には二人のシーンをもっと増やしてほしいなと思っていました(笑)。それから、私は(清左衛門と熊太、優香演じる里江との)ラストシーンも好きですね。ほんわかとしていて」

北大路「あそこはお互いに何の飾りもなく、素っ裸ですね。そうして、疲れたものを流し落とし、新たな気持ちでまた次に向かえるのだと思います」


取材・文=及川静 撮影=大川晋児

原作=藤沢周平『三屋清左衛門残日録』(文春文庫刊)
「山姥橋夜五ツ」(文春文庫『麦屋町昼下がり』所収)

放送情報【スカパー!】

三屋清左衛門残日録 ふたたび咲く花
放送日時: 3月9日(土)19:00〜ほか
放送チャンネル:時代劇専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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