内野聖陽が主演の「ドラマスペシャル ヘヤチョウ」。原作は、警視庁に勤めていた元捜査一課の刑事で警察ドラマを多く世に輩出してきた飯田裕久の代表作である「地取り」「検挙票」。内野自身がドラマ化を望んだ企画とあって迫真の演技に引き込まれる秀逸作だ。

刑事を演じる内野聖陽
刑事を演じる内野聖陽

⒞東映

捜査一課15係の部屋長で巡査部長の釜本宣彦(内野)は親友の刑事・森山(平野貴大)から電話を受けるが、ちょうど緊急出動がかかり、かけ直すこともなく放置してしまう。その夜、森山は自殺し、激しい自責の念にさいなまれる釜本。そんな折、所轄内で連続通り魔事件と刺殺事件が立て続けに起こる。釜本は刺殺事件の特捜班のメンバーとなり、地道な地取り捜査を担当することに。刺殺されたのは一人息子を10年前に事故で亡くした男。自宅で強盗と思われる犯人に殺害され、不眠症のため睡眠薬で熟睡していたという妻が第一発見者だった。釜本とタッグを組むのは、連続通り魔事件のおとり捜査で暴漢に襲われ、当事者となったことから通り魔事件を外された辻本美紀(武田梨奈)。巧みな話術で近所への聞き込み捜査を行う釜本に、辻本は目を丸くするばかり。後日、釜本を信頼した辻本は「通り魔事件の捜査をしたい」と本音を漏らす。だが釜本は彼女の真意を見抜き、「通り魔事件に固執するのは、何か隠しているからではないか?」と鋭く迫る。次から次へと起こる事件、関わる人々の悲しみ、憎悪、孤独...その全てに体当たりでぶつかり、受け止めていく釜本。真正面から事件に向き合う熱き刑事がたどり着いた場所には、切なすぎる真実が待ち受けていた。

⒞東映

正義感に燃え、額に汗して走り回る、実に暑苦しい刑事がそこにいた。「きのう何食べた?」でシロさんにデレデレのケンジと同じ役者が演じているとは...頭では理解していてもどうにも信じがたいほどにかけ離れている。

内野が演じた釜本は数々の難事件を解決し、現場の刑事としての経験も豊富、聞き込みや取り調べもお手の物。そんなベテラン刑事だが、ひとたび家に帰れば、妻に逃げられ、父親の介護もおぼつかない、何もデキない男なのだ。そんな人間らしい一面も違和感なくすっと入って来るから、さすがとしか言いようがない。また「若いころはゴンゾウと呼ばれていた」というセリフもあり、内野主演の連続ドラマ「ゴンゾウ 伝説の刑事」(2008年)へのリスペクトか、にくい演出がされているのもツボだ(ただし内野が演じた役名が違うので同一人物ではない)。

共演には平田満、利重剛、吹越満、細田善彦、石橋蓮司など、一癖も二癖もある名うての役者陣が並び、それをもろともせず軽々と引っ張っていく内野。彼らが織りなす重厚な芝居の応酬、そして二転三転するストーリーとこだわりの映像、すべてにおいて見応えたっぷり、胸を熱くさせる骨太な刑事ドラマに仕上がっている。

文=石塚ともか

放送情報【スカパー!】

ドラマスペシャル ヘヤチョウ
放送日時:4月3日(水)10:50〜
放送チャンネル:テレ朝チャンネル1
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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