事件の結末はもちろん、意表を突く展開や張り巡らされた伏線が気になって、つい続きを見てしまうサスペンスミステリー。注目タイトル目白押しの昨年のドラマの中でも、続きを見ずにはいられない作品として高評価だったのが「彼女たちの犯罪」だ。

(C)横関大/幻冬舎/ytv

ミステリー作家・横関大の小説が原作で、元乃木坂46の深川麻衣が主演し、元AKB48の前田敦子、元E-girlsの石井杏奈らも出演。女優として活躍中の元アイドルたちの共演と熱演も話題となった。ここでは主演の深川について見ていきたい。

深川が演じるのは、大手アパレル企業で広報を担当しているバリキャリの日村繭美。大学時代はチア部に所属し、男性からも人気があった。現在は、仕事は充実しているが恋人はいない。

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そんなある日、繭美は撮影現場で事故に遭い、運び込まれた病院で大学時代の知り合い神野智明(毎熊克哉)と再会する。智明は大学では野球部のキャプテン、今は医師というエリート中のエリート。病院からの帰り際、智明に食事に誘われたことで、繭美の運命の歯車が回り出す。

物語の冒頭の繭美は職場でテキパキと仕事をこなし、まっすぐで真面目な雰囲気だ。しかし智明と会い、智明がチア部の真似をしてみせた時には、親しげでいたずらっぽい笑顔を見せる。まるで乾いた心が潤いを取り戻したような笑顔だ。智明と関係を持つ時には、大きな瞳でしっかりと相手を見つめる。自分の気持ち、相手の気持ち、自分が幸せになれるのかを、確かめるように。

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智明との再会は、繭美にとって渇望していた出会いだったのだろう。仕事が上手くいかなくなった時に、LINEを交わしながらほんのりと笑顔を浮かべる様子から、智明が繭美にとって必要な存在になっているのが伝わってくる。だが、そんな智明には妻がいた。前田が演じる神野由香里だ。由香里は智明の実家で義理の父母と暮らしていて、はたから見るとセレブ妻だが、毎食の支度や風呂の掃除などを言いつけられる使用人のような生活を送っている。

妻の存在を知った時から、繭美の雰囲気も変わっていく。病院で智明の妻と間違えられた時の瞳は燃えるようだし、直後に由香里と出会った時は、重苦しいほど沈んだ様子となる。幸せが幻影だったと知った時の心情の変化を伝える深川の演技力は、秀逸というほかない。

そして智明と結婚したい繭美と、神野家の束縛から逃れたい由香里が協力し合い、お互いの望みを叶える計画を立てる。しかし思うように事は進まず、さらに物語は複雑化。由香里の友人・玉名翠(さとうほなみ)、チア部の後輩で今は刑事の熊沢理子(石井)らが現れ、皆が望むものを手に入れるための"ある計画"を立てる。

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その過程での深川の演技も見どころだ。第3話では、妻の存在を隠していた智明に目も合わせず「言い訳だね」と冷たく言い放ち、第4話での由香里との言い合いではテーブルを叩いて絶叫し、嫌悪感と必死さに満ちた眼差しで相手を見つめる。
また、第5話では、トイレの鏡の前での殺意さえ感じる白目がちな表情や、"ある計画"に乗ると決めてマンションから出た時の、虚ろで病んだような目つき。深川の演技と物語が絶妙に融合し、繭美が追い込まれ、やつれ、それでも必死になっている様子が痛いほど伝わってくる。

自分の人生に疑問を感じている由香里を演じる前田、何かを胸に秘めていそうな理子を演じる石井、ざっくばらんで自由な翠を演じるさとうの演技も素晴らしく、深川を始め、出演者たちの力量によって、物語がより深みのあるものになっている。

それぞれが幸せを求めて実行した"ある計画"はどんな結末を迎えるのか。繭美は望むものを手に入れられるのか。ラストまで見ずにはいられないこの名作ドラマに、深川の演技にも注目しながら、どっぷりとハマってほしい。

文=堀慎二郎

放送情報【スカパー!】

彼女たちの犯罪 一挙放送
放送日時:2024年3月24日(日)11:00〜
チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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