軽井沢安東美術館 展示室2 (中央)《二人の少女》1918 年 油彩・キャンバス、(左)《腕を上げた裸婦》 1924 年 油彩・キャンバス、(右)《街はずれの門》1918 年 油彩・キャンバス

1913 年、世界の舞台で闘うためにパリに渡った藤田。自由な作風の画家たちに衝撃を受け、自らも自分のスタイルを模索し、ついに「乳白色の肌」という藤田独自の作風を開拓しました。

軽井沢安東美術館 展示室 5 撮影:Ryota Atarashi

本展では、藤田の名が次第に知られるようになった頃の作品《二人の少女》(1918年)や《街はずれの門》(1918 年)をはじめ、「乳白色の肌」の作品の数々、並行して制作された油彩画などが展示されます。独自の画風を開拓した「エコール・ド・パリ」時代の藤田の歩みを追う本展は、葛藤や困難の末にたどり着いたオリジナリティーに迫る機会となりそうです。

見どころ①初公開作品をはじめ充実の展示

軽井沢安東美術館 展示室 4 撮影:Takahiro Maruo

本展では同館で初公開の作品 2 点に加え、「乳白色の肌」が特徴の藤田らしい作品が多数展示されます。

初公開作品のうち 1 点は《二人の少女》(1918 年 油彩・キャンバス)です。少女の肌や背景の色合いには、藤田が後に打ち出した「乳白色の肌」や「乳白色の下地」の要素が感じられ、独自の作風の開花を予感させます。

もう 1 つの初公開作品は《シャリテ病院の自画像》(1924 年 鉛筆・紙)で、事故に遭って入院していた病床での自分の姿を描いた自画像です。本展では同じ頃に描かれた他の自画像 3 点とあわせて鑑賞でき、自画像という共通点を持ちながらも、個性豊かでユニークな作品に触れることができます。

「乳白色の肌」が特徴の作品では、モンパルナスの女王と呼ばれたモデルのキキや、3番目の妻となったユキを描いた人物像のほか、《腕を上げた裸婦》(1924 年 油彩・キャンバス)、《横たわる裸婦》(1923 年 油彩・キャンバス)なども展示されます。

見どころ②藤田の言葉とともにエコール・ド・パリ時代の歩みを紹介

軽井沢安東美術館 展示室 3 撮影:Takahiro Maruo

本展では藤田の初期の作品とともに、作品が制作された背景や藤田自身が語った言葉も紹介されます。

ピカソのアトリエを訪ねた藤田が受けた衝撃や、アンリ・ルソーに魅せられた藤田が風景画に取り組んだこと、親友のモディリアーニとのエピソードなどなど……。藤田が残した言葉を通して出来事を追体験し、画家の人生を立体的に捉えることができそうです。

見どころ③写真で知るエコール・ド・パリ時代の藤田

軽井沢安東美術館 展示室 2 撮影:Takahiro Maruo

本展では絵画作品に加え、1910〜20 年代にパリで撮影された藤田の写真も紹介されます。

展示されるのは、藤田の作品の舞台にもなったカフェ・ラ・ロトンドでの写真や、自宅のアトリエでユキをモデルに作品を描く藤田の写真など。写真を通して当時のパリを感じ、藤田が見た風景を間接的に知ることができます。

背景にあるのは、「当時の藤田嗣治を等身大で知っていただきたい」という主催者の強い思い。本展では絵画作品のみならず写真や言葉も隈なく堪能し、作品と画家の魅力に迫ってみてはいかがでしょうか。

展覧会情報

軽井沢安東美術館 撮影:Ryota Atarashi

春の特集展示 藤田嗣治 エコール・ド・パリの時代 1918〜1928 年

会場:軽井沢安東美術館(長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢東 43 番地 10)
会期:2024 年 3 月 7 日(木)〜7 月 23 日(火)
開館時間:10:00〜17:00(入館は 16:30 まで)
休館日:水曜日(祝日の場合は開館、翌平日が休館)
※休館日や観覧料など詳細は美術館公式ウェブサイトを参照
美術館公式ウェブサイト:軽井沢安東美術館

※本記事に掲載した写真は過去の展示風景であり本展の展示とは異なる場合があります