「メイヒン」と聞くと、国宝や重要文化財のような公認された「名品」が思い浮かびますが、多くは注目されずにいる「迷品」にも、異なる視点から見れば際立つ魅力があります。

作品の背後にある逸話や意外な面が、それが「名品」か「迷品」かを判断する鍵を握っており、その分岐点は観る人の主観に委ねられています。この展覧会を通じて、来場者は自らの眼で「メイヒン」を見つけ、美術品への新たな発見を見つけることができるかもしれません。

「漆工」、「絵画」、「陶磁」、「染織と装身具」、「茶の湯の美」、「ガラス」と、日本の伝統的な美術および日々の生活との関係を6つの章で深く掘り下げていきます。

第1章「漆工 生活を美で彩る」

鞠・鞠挟 一組 江戸時代 18〜19世紀 サントリー美術館 【通期展示】

この章では、日本の伝統芸術、漆工に光を当てます。長年にわたり、螺鈿や蒔絵が施された漆工品は高貴な生活を彩り、「名品」と称えられてきました。しかし、漆工の魅力はその実用性にもあり、一般庶民の生活用品としても広く使われてきました。

装飾的な美だけでなく、日常生活に根差した漆工の魅力を紹介していきます。この章では、「身の回りに置いて使ってみたい」と思わせるような、人々の生活に寄り添ってきた漆工品をご紹介します。

国宝 浮線綾螺鈿蒔絵手箱 一合 鎌倉時代 13世紀 サントリー美術館 【通期展示】

第2章「絵画 おおらかな心で愛でる」

重要文化財 泰西王侯騎馬図屛風 四曲一双のうち右隻 桃山時代 17世紀 サントリー美術館 【展示期間:4/17〜5/13】

サントリー美術館の絵画コレクションを通して、日本絵画の幅広い魅力を探求します。屛風・掛軸など大名や貴族の邸宅を飾る絢爛豪華な作品から、室町時代のお伽草子絵巻は、多岐に渡る作品を展覧します。

お伽草子は、迫力ある劇的な描写から、技法とは無縁の素朴な描写まで、その画風は多岐に渡っており、これらは技術的な巧みさだけでなく、見る者の心に直接訴えかける魅力を持ち、「上手い」「下手」に捉われずに作品を愛でることで、自分だけの「メイヒン」に出会えるかもしれません。

重要文化財 泰西王侯騎馬図屛風 四曲一双のうち左隻 桃山時代 17世紀 サントリー美術館 【展示期間:4/17〜5/13】

第3章「陶磁 人類最良の友と暮らせば」

重要文化財 色絵花鳥文八角大壺 一合 肥前・有田 江戸時代 17〜18世紀 サントリー美術館 【通期展示】

日本のやきものは、縄文時代から江戸時代にかけて進化を遂げていきます。桃山から江戸時代にかけて、美濃焼や伊万里など日本独自の陶磁が発展し、「名品」とされる作品も生まれました。しかし、やきものの価値は美術品としてだけでなく、日常生活を支える必需品としての面も重要です。

サントリー美術館のコレクションを通じ、やきものが長い歴史の中でどのように人々の生活と共にあったかを紹介し、生活の中に息づく美を再発見します。この章では、それぞれの作品がたどってきた歴史とその魅力を探っていきます。

根引松文三耳壺 一口 丹波 南北朝時代 14世紀 サントリー美術館 【通期展示】

第4章「染織と装身具 装わずにはいられない」

能装束 段に流水海松貝模様縫箔 一領 江戸時代 18〜19世紀 サントリー美術館 【展示期間 4/17〜5/13】

身なりを整える「装い」という行為とそれが表現する美意識に注目します。染織品や装身具は、文化や生活様式を反映した重要なアイテムであり、和装の小袖や地域固有の染織技法などから、当時の生活や美意識が垣間見えます。

また、江戸時代の飾り櫛や簪などの装身具は、実用性を超えた繊細な美しさを表現しています。それらには、使用者の個性やセンスを際立たせる独創的なデザインが多く見られます。この章では、ファッションを通じて自分らしさを表現し、染織品や装身具の新たな魅力を探求します。

鼈甲台三味線棹形変り簪 一本 江戸時代 19世紀 サントリー美術館 【通期展示】

第5章「茶の湯の美 曇りなき眼で見定める」

色絵七宝繋文茶碗 一口 野々村仁清 江戸時代 17世紀 サントリー美術館 【通期展示】

茶の湯では、独自の美意識で道具を選び、茶会でのもてなしを通じて、無名の作品であっても、使い手次第で名だたる「名品」となりうる道が開かれます。サントリー美術館が紹介する茶道具コレクションには、素朴な土の趣から華麗な色絵の茶碗、繊細な文様や大胆な造形を持つ釜、そして漆工品を転用した香合など、茶の湯の美意識が凝縮されたアイテムが揃っています。

これらの茶道具は、茶の湯が持つ自由自在な美の在り方を見事に伝えるものです。この章は、茶の湯の美意識とその探求を促す内容となっています。

二福神文真形釜 一口 筑前・芦屋 室町時代 15世紀 サントリー美術館 【通期展示】

第6章「ガラス 不透明さをも愛する」

花器「カトレア」 一口 エミール・ガレ フランス 1900年頃 サントリー美術館 【通期展示】

サントリー美術館のガラスコレクションを通じて、ガラスの多様性と美しさを探っていきます。江戸時代の和ガラスからエミール・ガレのアール・ヌーヴォー作品まで、異文化の交流によって進化したガラスの世界を紹介します。

この章では、装飾品や日常生活に欠かせない実用品としてのガラスも取り上げ、その地域ごとの生活文化を反映したユニークな形状やデザインを紹介します。透明さや儚さとはまた違った魅力を発見することで、新たな「メイヒン」を見つけていきます。

乳白色ツイスト脚付杯 一口 江戸時代 18世紀 サントリー美術館 【通期展示】

展覧会情報

「サントリー美術館コレクション展 名品ときたま迷品」サントリー美術館
開催期間:2024年4月17日(水)〜2024年6月16日(日)
※作品保護のため、会期中展示替を行います
所在地:東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階
アクセス:
都営地下鉄大江戸線「六本木駅」出口8より直結
東京メトロ日比谷線「六本木駅」より地下通路にて直結
東京メトロ千代田線「乃木坂駅」出口3より徒歩約3分
開館時間:10:00〜18:00
※金曜および4月27日(土)、28日(日)、5月2日(木)〜5日(日・祝)、6月15日(土)は20時まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
休館日:火曜日(6月11日は18時まで開館)
観覧料:
当日券:一般 1,500円、大学・高校生 1,000円、中学生以下無料
前売券:一般 1,300円、大学・高校生 800円
※サントリー美術館受付、サントリー美術館公式オンラインチケット、ローソンチケット、セブンチケットにて取扱
※前売券の販売は2024年1月31日(水)から4月16日(火)まで
※サントリー美術館受付での販売は開館日のみ
割引:
・あとろ割:国立新美術館、森美術館の企画展チケット提示で100円割引
・団体割引:20名様以上の団体は100円割引
※割引適用は一種類まで(他の割引との併用不可)
公式サイト:サントリー美術館
主催:サントリー美術館、朝日新聞社
協賛:三井不動産、三井住友海上火災保険、サントリーホールディングス