「こちらの商品は研修生が切ってます」

 「そのため、少しお安く販売しています」

 3月13日にオープンした「MEGA ドン・キホーテ成増店」(東京都板橋区)の一部精肉コーナーでちょっと変わったポップを見かけた。ドンキ初の試みをしているというが、どのような狙いがあるのだろうか。

●見栄えや厚さが不ぞろいなワケ

 MEGA ドン・キホーテ成増店の開店前に取材で訪問したところ、精肉コーナーには他のスーパーにもあるような“普通”の商品が並べられていた。

 ただ、パックをよく見ると「こちらの商品は研修生が切ってます」というシールが貼ってある。シールには初心者を意味する若葉マークやにこやかな男性店員のイラストも。価格のシールには「お肉の学校で切りました」とあった。

 精肉コーナー全体を見渡すと「未熟な従業員がカットしたお肉をお安く提供させていただいております」「見栄えや厚さが不ぞろいな商品もありますが鮮度や品質は劣りませんので安心してお買い求めくださいませ」といったポップもある。

 これはどういったことなのか。広報担当者によると、同店6階には「成増ミート研修センター」が設置されているという。精肉部門の未経験者がここで3カ月研修を実施し、各店舗に巣立っていく。また、計画的・効率的にスキルアップできるような工夫をしているのも特徴だ。

 精肉コーナーでは、具体的に研修生が習得するスキルについても詳しく説明している。例えば、「とんかつ用」の肉は均一の厚みになるようにカットすることがポイントで、難易度は「2」としている。一方、「スライス」「しゃぶしゃぶ用」はうす切りなので、難易度は「4」としている。ビジュアルで分かりやすく説明しようという意図を感じた。

●かつて存在した串カツ田中の研修店

 「新人が手掛けているので、ちょっとお安くします」というコンセプトは、他の企業でも見られる。

 例えば、串カツ田中は2018年4月、東京都中央区に「串カツ田中 小伝馬町研修センター店」(以下、研修センター店)をオープンした。

 筆者はこの店舗を取材したことがあるが、研修センター店には正式配属前の新入社員が集められていた。「未熟なスタッフばかりで営業するのでご迷惑をおかけしてしまうこともある」(広報担当者)という理由で、当時はビールを含むドリンクを1杯216円で提供していた(出所:串カツ田中が新卒だらけの店舗をオープン、狙いは?)。

 ドリンクの価格が安いのは、従業員の成長を温かく見守ってもらうことへの感謝の気持ちを示す意味もあった。なお、研修センター店は23年5月に通常店舗に戻っている。

 ドンキと串カツ田中に共通しているのは、新人が手掛けていることを正直に利用客に伝え、価格を安くする代わりに、成長を見守ってもらう考え方だ。

 ドンキが精肉コーナーで始めた取り組みは、消費者の支持を得られるだろうか。