とある日に「Apple Watch Series 9」(以下、Apple Watch)を紛失した。紛失に気付いた日、紛失日の記憶が定かでなく、思い出せずに焦っていた。どうしてもなければ生活や仕事が成り立たないわけではないので、意気消沈することはなかったが、高価な物で個人情報も入っていることは頭の片隅にあり、どうにかして探し出さねば……と思っていた。

 思い当たる節がないか冷静になって考えたところ、どうやらApple Watchを家ではなく外出時に紛失したようだった。腕に身に付けるので置き忘れはなかろう……と思ったのだが、カフェやレストランで過ごすときは邪魔になるため、腕から外してしまう癖があることに気付いた。バンドが意図せず外れてしまったのではないか? とも考えたが、置き忘れの方が気になり出した。

 考えているだけでは仕方がないので、iPhoneの「探す」アプリを開いて、行方不明になったApple Watchを探し、第三者による悪用を防ぐためにも一時的にロックをかけることにした。知らない人のためにも記しておくが、本来の持ち主のApple IDとパスワードがなければ、第三者がApple Watchを消去したり、第三者のiPhoneで使ったりすることはできない。これは「アクティベーションロック」という機能で、主にデバイスを保護するのに役立つ。

 肝心の位置だが、Apple WatchはGPS(Series 1はGPSに非対応)、Wi-Fiによる接続、モバイルデータ通信(セルラーモデルのみ)による接続を利用することで、iPhoneの探すアプリでApple Watchの“おおよその位置”が分かる。裏を返せばバッテリーが切れると正確な位置取得ができない場合がある。

 自分のApple Watchの位置を検索したら、なんとJR東日本管轄の車両基地にあること<と思われる?>が判明。自宅から数十kmも離れた都内だ。この車両基地は普段、一般の人が立ち入れない場所で、最寄りは高輪ゲートウェイ駅だった。少し位置情報がずれているのではないか? と思い立ち、念の為、駅の落とし物窓口に問い合わせた。筆者の予想通り、「車両基地へは案内できない」という回答とともに、「Apple Watchの落とし物はない」と案内された。

 確かにその付近は取材へ行く途中に電車で通過したので、もしや電車内にあるのでは? と推測したが、電車内でApple Watchを腕から外した覚えはないため、その場所にある可能性は低い。……と、考えを巡らせていても、それ以外に思い当たる節はなく、どこで落として、現在、どの位置にあるのか、見当がつかない。

 諦めてロックをかけたままにしておき、最寄りの交番へ出向き、落とし物をしたことを届け出ようかと思い、ため息をついていたある晩、自宅で発見した。それも洗濯物の中でだ。幸いにも洗濯前のズボンからこぼれ落ちたため、洗濯機への投入は免れたが、バッテリー切れで電源は入らなかった。

 何かの拍子にズボンに紛れてしまったのだろうが、Apple Watchが最後に発した位置情報が「高輪ゲートウェイ駅付近の車両基地」だったようだ。その後、さらにApple Watchを持ち出したまま移動して紛失し、Apple Watchのバッテリーが切れたので、紛失した場所の位置情報を正確に把握できなかったようだ。

 Apple Watchは毎日飲む薬の通知や、歩数確認、スマホへの通知確認などに活用していただけに貴重品であることは確かだが、今回の一件を機に外出先への持ち出しをやめようと考えた。コロナ禍でテレワークが増え、外で使う頻度は多くない他、歩数確認はスマホでもできるので、外出時にApple Watchがなくても問題ない。

 外への持ち出しをやめようと思った、その他の理由に以下の3つも挙げたい。

・冬の時期の防寒として身につける手袋やコートの袖がApple Watchに当たり、Apple PayのSuicaで決済ができない場合があること

・Apple Watchが予備電力機能付きエクスプレスモードに対応していないため、バッテリーが切れるとFeliCaそのものが使えなくなること

・Apple Watch向けの「紛失補償サービス」が少ないことを挙げたい。

 特に今回のような紛失、盗難に関しては、KDDIが「紛失補償オプション(i)」を用意しているが、機種ごとに定められた月額料金に加え、再購入時にかかる代金を負担する必要がある。

 Webページには「紛失や盗難などが発生した際、Apple Watchの再購入において、「再購入補償金」として12,731円をお支払いします」とあるので、例えば、Apple Watch Series 9(アルミニウム41mm)を紛失し、再度購入する場合、auオンラインショップ価格が8万3380円(税込み、以下同)で、このうちKDDIが1万2731円を負担するため、利用者が実質的に負担する金額は紛失補償オプション(i)の月額747円(初回のみ715円)と、再購入にかかる7万649円ということになる。

 AppleがiPhone向けに提供している「AppleCare+ 盗難・紛失プラン」は、Apple Watchには当てはまらない。つまりApple Watchは同プランの対象外だ。こうした紛失に対するアフターケアがもう少し多くなることを切に願う。とはいえ、今回の一件はApple Watchを外で腕から外す癖のある筆者の責任でもあるため、紛失や盗難に関してはiPhone向けのサービスが充実しているのは仕方がないと思う。

 ここで話題をApple Watch本体に戻すと、Apple Watchはいわずもがな「外で使ってなんぼ」のデバイスで、心拍数、心電図、酸素測定、ランニングをはじめとするワークアウトの記録、管理は外で動いてこそ真価を発揮できる。極端にいえば、家の中でじっとしていても、あまり効果がないわけだ。

 現在のところは家の中でも心拍数の測定により、低心拍数か高心拍数かが分かることに加え、異常時には通知されるため便利に感じる。心拍数の測定はiPhone単独ではできないため、当然今後もApple Watchで使い続けたい。他にも、iPhoneの通知を手元で確認すること、記録しておいた飲み薬の種類や飲むタイミングが通知されることが便利で、薬の飲み忘れを防げる。

 悩ましい決断になったのはワークアウトの利用を止めるか否かだ。先に「外への持ち出しを止める」と記述したが、記者という職業柄、椅子に座っている時間が長くなるため、できればApple Watchを身に付けたままランニングをして、走った距離やどのルートを走ったのか、走るペースなどを確認したい。ランニング中はApple Watchを腕から外さないため、極力、家の中とランニングにApple Watchを活用したい。