2023年度が間もなく終わり、来週には24年度がやってくる。新社会人になる人たちは期待や不安、さまざまな気持ちを抱えて緊張している人もいるかと思う。その緊張の原因の一つには、ビジネスマナーも入っているのかもしれない。

 ビジネスマナーは、仕事をする上で必要とされるマナーであり、相手を不愉快にさせないように配慮すべき作法とされている。そんなビジネスマナーの中でも「20代社会人が特に苦手意識を持つというのが電話とメールのマナー」と指摘するのが、マナー研修事業を手掛けるトークナビ(東京都渋谷区)だ。

 同社は「上司世代は当たり前のように使っている電話やメールも、SNS育ちのZ世代にとっては不安とストレスを感じる未知の世界。『これくらい常識だろう』という思い込みを捨て、Z世代の常識を知ったうえで、マナーを教える必要がある」と指摘。新社会人向けに、電話とメールで守るべきビジネスマナーをそれぞれ5つ挙げている。

●ビジネス電話では「もしもし」NG

 電話のマナーは「かけるとき」と「受けるとき」でそれぞれ5つ挙げている。かける際の5つのマナーとしているのは「利き手と反対の手で受話器を持つ」「第一声は明るく『ソ』の高さで」「『もしもし』NG」「誰でも『お世話になっております』」「受話器でガチャ切りNG」だ。

 同社は「Z世代は固定電話のない家庭で育ち、固定電話を触ったことがない人もいる」と指摘し、まずは電話機の使い方と姿勢を覚えてほしいと説明。「本体と受話器がつながった有線式固定電話の場合、利き手と反対の手で受話器を持ち、利き手ではメモを取るのが基本」としている。

 また「Z世代にとって、電話はつながっている友人との通話が中心。知らない相手にかける緊張からメモに集中し、下を向いたままになりがち」だと続ける。この状態では、喉が圧迫されて声がうまく出せないため、背筋を伸ばし第一声は明るく発することを推奨。「音階で言うと『ソ』の高さで始めるのがおすすめ」としている。

 「もしもし」については、ビジネス電話では使わないNG用語だという。また、電話をする前にSNSで「今から電話してもいい?」と確認することが多いZ世代は、名乗る習慣がないという。「ビジネス電話では、名乗り+『お世話になっております』がマナー」と説明している。

 電話を終える際も、受話器をそのまま置く「ガチャ切り」は印象が悪いとし、本体にあるフックを手で押したあとに受話器を置くことがマナーと述べている。

●まずは「会社の電話に出る意識」から

 電話を受ける際のマナーには「会社の電話が鳴ったら出る」「『はい』『はい』言い過ぎに注意」「名前を聞く前に、名乗る」「社内の人の『さん付け』NG」「電話メモはすぐ共有」の5つを挙げている。

 同社は「電話は1人1台が当たり前の環境で育ったZ世代は『会社の電話に出る』意識がない」と指摘。自分のスマホ宛でも、知らない電話番号には出ない人も多いため、まずは「会社の電話に出る」という役割を認識する必要があるとしている。

 その後電話に出た際も「『はい』ばかり繰り返すと、適当に流している印象を与えかねない」とし、相手の話したことを復唱したり、会話したりするよう意識するといいという。他にも「SNSでは互いに名前やニックネームを知った上でやりとりするため、(Z世代には)名前を聞く文化がない」とし、名前を聞く前に名乗った上で、相手の名前を確認することを推奨している。

 また、ビジネスでは社外/社内の人を区別するため、自社の社員の名前を出す際は呼び捨てに、電話で受けた言伝などはすぐに社内で共有するよう、促している。

●ビジネスメールを“チャット感覚”で打つのはNG

 ビジネスメールを送る際にも5つのマナーがあるとし「件名なしはNG」「相手の名前と、署名を入れる」「やりとりは1往復半で終わらせる」「CC誤送信には注意」「大容量のファイル添付はNG」を挙げている。

 同社は「SNSには件名がないため、Z世代は件名を軽視しがち」と指摘。ビジネスメールでは件名は、メールを開いてもらうために重要であるため、件名なしはNGとしている。また、ビジネスメールには定型文があり、冒頭には「相手の会社名・部署名・名前+様」を書き、あいさつをしてから本文、その後またあいさつで締めた後、自身の署名を入れるのがマナーだという。

 チャットでの短いやりとりに慣れているZ世代は、メールもチャット感覚で書いてしまう場合がある。メールで聞きたいことを尋ねる際は、箇条書きや期日の明記など、一度で用件が伝わるよう工夫して、やりとりは一往復半で終わらせるのが理想だとしている。

 また、メールの宛先での「TO」「CC」「BCC」の使い分けにも注意が必要だ。CCで送ったメールは、受信者全員にアドレスが公開されるため主に情報共有などで使われる。他の受信者にアドレスが見えなくなるBCCと混同して誤りを起こさないよう、注意を呼びかけている。

 添付ファイルを送る場合は、相手の上限設定などで受信できない場合も考慮し「1〜2MB程度に収めるのがマナー」と同社は指摘。社内ルールも確認した上で、ファイル共有してほしいとした。

●“相手を不愉快にさせないように配慮すべき作法”とは……?

 と、ここまでがトークナビが推奨する電話とメールのビジネスマナーである。すでに社会人の人の中にも「こんなマナーがあったのか?」と驚くものもあったかもしれない。ここで挙げたビジネスマナーはあくまで一例であり、必ずしも全ての社会人が守っているものではないということは、頭に留めて置いてほしい。

 冒頭にも記載したように、ビジネスマナーとは“相手を不愉快にさせないように配慮すべき作法”である。一つ一つのマナーを厳密に守るというよりも“この振る舞いは相手を不愉快にさせないだろうか?”と考えた上で行動を起こすことのほうが重要なのだと思う。