あの「ポラロイド」が日本で再度復活を果たす瞬間を見てきた。2023年秋に欧米で発売されたPolaroidのフラッグシップモデル「I-2」の日本での発売が発表されたのだ。

 今、日本でインスタントカメラといえば「チェキ!」が有名だけれども、以前はインスタントカメラの代名詞は「ポラロイド」だった。インスタントカメラやそのフィルムの総称として、普通名詞のように「ポラロイド」と呼ばれていた時代があったのだ。

 最初のモデルの発売は1948年。撮ったその場で写真が見えるインスタントカメラの元祖なのである。でも、そのポラロイド社がどうなったかを知る人は少ない。

 実は2度も経営破綻し、Polaroidというブランドは残ったものの、フィルムの製造は2008年に一度途絶えてしまったのだ。

 フィルムがなかったら、もうあのポラロイドカメラは完全に失われてしまう。でもオランダのインポッシブル社による「The Impossible Project」という活動でオランダにあった最後のフィルム工場が救われ、そこでインスタントフィルムの復活を試みた。このプロジェクトの中心にいた若者が、今のPolaroid社チェアマンのオスカー氏だ。

 だが、一度失われたものを復活するのは大変で、当時と同じ材料は入手できず、一から開発することになったのだという。だから当時とまったく同じではないが、互換性のあるフィルムをなんとか完成。その後、「Poraloid」の商標も獲得してブランドを統一したのが2020年だった。

 その後、いくつかインスタントカメラの新製品を出したが、日本での正規販売はなく、今回「I-2」で本格的に日本での復活を遂げることになったのである。

 その発表会におじゃましてきた。

●最上位モデルの「I-2」とフィルムが日本でも

 今回、日本での発売が発表された「I-2」は往年の名機「SX70」を超えるべく開発された上位モデルだ。

 4年かけてすべてを一から開発したカメラだという。ちなみに日本のエンジニアも関わっている。かつてオリンパスでデジタルカメラの開発を手がけていたエンジニアがレンズ開発を担当したのだ。

 レンズは98mmで開放でF8。フィルムサイズが大きいので35mm判換算にすると38mmくらいで扱いやすい画角だ。

 I-2は、ポラロイドのインスタントカメラとしては初のマニュアル露出機能を持つ上位モデルだが、操作やスタイルは非常にシンプルでかつてのポラロイド社のカメラらしい。

 レンズの向かって左にある赤いボタンがシャッター。

 右上にはLiDARを使ったAF用センサー。右下はファインダーだ。

 ファインダーはけっこう大きくて見やすい。

 I-2は、オートに加えて絞り優先、シャッタースピード優先、多重露光などのモードも持っており、それは本体右側のディスプレイに表示される他、ファインダー内にも表示される。

 フィルムは伝統的なポラロイドなので正方形だ。

 フィルムは3種類で、それぞれカラーとモノクロがあるので合計6種類。その他、フレームのバリエーションがある。

 フィルムは1パック8枚。価格は約3000円になる予定だ。

 撮影が終わるとモーター音がして、フィルムが吐き出される。

 このときの一連の動作音が非常に心地よい。ポラロイドならではの撮影感だ。

 像が現れて定着するまでの時間は、カラーだと10〜15分とけっこうかかる。5分も待てば像は見えてくるが、それがしっかりコントラストを持って落ち着くまで時間がかかるので待つべし。

●専用アプリで撮った写真のスキャンができる

 このように豊富な撮影モードを持ったI-2は、カメラとしては完全にアナログなのだが、実はBluetoothでスマホとつながるようになっており、専用のアプリも用意されている。デジタルとの融合もなされているのである。

 専用のアプリ「Poraroid Originals」を使うと、カメラのコントロールや撮影した写真をスキャンしてアルバムにすることができる。

 今回、タッチ&トライで撮影した写真をスキャンしてみた。

 撮った写真は唯一無二のものだが、アプリで撮影してシェアしたり記録しておけるのは非常にイマドキだ。

●まずは「クラウンドファンディング」から

 I-2の販売は、まず「クラウドファンディング」で行う。扱うのは「GREEN FUNDING」で、4月24日からプロジェクト支援の募集が始まる予定だ。

 その後は店頭での一般販売や、Polaroid社の他のカメラの取り扱いも計画しているという。

 撮ってみないと仕上がりが分からない、うまくいけばすごく印象的なアナログならではの写真が仕上がる、しかも複製も連写もできないのでその瞬間を捉えた1枚きりの写真である、という独特の個性を持つポラロイドのカメラはデジタルカメラとも35mmフィルムを使ったカメラとも違う独特の個性を持っており、その魅力にとりつかれた人は昔から多い。

 フィルムカメラ時代を知っている世代には懐かしいカメラの復活として、デジタル以降しか知らない世代には新鮮でアーティスティックな写真を撮れるカメラとして注目である。