8 部下を成長させるために十分に力を注がなかったのではないか・・・前述したように、「ありふれた仕事」は「ありふれた人たち」がやっているという思い込みがある。その結果、ありふれた仕事をしている従業員の成長機会を見過ごしがちだ。

 9 イノベーションを追求する場や時間を設けなかった、あるいは有望なアイデアを支援する機会を逃していないか・・・イノベーションを支援してもあまり見返りはない。時間はとられるし、たいていは失敗に終わる。新しいアイデアを応援するより、身を潜めているほうが簡単だ。しかし、そんなことをしていたら惰性に陥り、動きが鈍くなるだけだ。

 10 事業全体を犠牲にして、自分のチームをひいきしたか・・・官僚主義では、経営資源を他の部門と共有してもほとんど報いはない。組織全体にとって最善ではなくても、一部の利益のために行動するほうが、その人にとって最もよい結果をもたらすことが多い。

 11 不当に責めを免れたり、評価を得ようとしたりしたか・・・官僚主義では、業績評価はチームではなく個人にフォーカスしている。だから、失態を演じても悪い評判が立たないよう、称賛されたときにはそれが長続きするよう仕向ける。この行動によって評価が歪められ、報酬の分配が不公平になる。しかし、個人主義的な組織では、これが勝利を手にする方法となる。

 12 急場をしのぐために、自分の価値観を犠牲にしたか・・・官僚主義では何よりも結果が重視される。だから目標さえ達成すれば、どんな抜け道を使ったかなど誰も聞いてはこないだろう。それに慣れてしまうと、倫理よりも結果を重視するようになり、組織もその行動から生じた道徳的な問題に鈍感になる。

 これらの問いについて考える時間を確保しよう。ノートや表に書き出してみよう。人としてではなく、官僚主義者として振る舞ったときがあっただろうか。そのきっかけは何だったのか。今後、同じきっかけがあった場合に、どうすれば官僚主義者のように振る舞わずに済むだろうか。

 筆者らの経験では、毎週、この12の問いかけをすることには意味がある。これに真剣に取り組めば、同僚はすぐにあなたの変化に気づくだろう。あなたはより寛大に、思いやり深く、接しやすくなり、その結果、より成果をあげられるようになるはずだ。

<連載ラインアップ>
■第1回 「人間らしさ」が失われると、なぜ組織は病んでしまうのか?
■第2回 高収益体質で業界トップを独走、米国鉄鋼大手・ニューコアの企業文化とは?
■第3回 業界平均より25%高い報酬を実現、米ニューコアの独自のボーナス制とは?
■第4回 8万人の「起業家集団」! 中国家電大手・ハイアールの「人単合一」とは?
■第5回 ハイアールの成長と変革の源泉、「リーディング・ターゲット」とは何か?
■第6回 ライバルの足をすくったことは? 官僚主義的思考から脱却する12の問いかけ(本稿)

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(ゲイリー・ハメル,ミケーレ・ザニーニ,東方 雅美,嘉村 賢州)