「現在『ブギウギ』(NHK総合)で、羽鳥善一役として存在感を放っている草彅さんですが、早くも3月から別作品の撮影が始まっているとか。役者として多忙な1年になりそうです」(制作関係者)

草彅剛(49)の“次回作”はNetflix映画『新幹線大爆破』。約49年前の高倉健さん(享年83)の名作をリブート(再起動)する。

主演を飾る草彅は、製作発表で「前作の主演の高倉健さんの気持ちを受け継ぎ、全力で挑みます」と意気込んでいた。前出の制作関係者は言う。

「彼が恩師として慕い、長年追いかけていたのが健さんなのです。それだけに今回は大変喜んだことでしょう」

2人の交流はある一通の手紙から始まった。旧ジャニーズ事務所の副社長(当時)が、過去のインタビューでその経緯を語っていた。

《それこそミッドタウンの公園でね、草彅が裸になってしまった時がありました。その時に健さんは「そういうことはみんなあるんです。彼も悪い子ではないと思うので許してあげてください」と一番先に手紙を届けていただきました。そればかりか、草彅宛ての手紙も同封されていました》(『週刊新潮』’16年1月28日号)

健さんが直々に届けに来たという手紙の話を受け、謹慎中の草彅も思わず“えっ!? どちらの高倉健さんですか?”と聞き返したそうだ。そこから文通が始まった。

「たくさんの方に迷惑をかけてしまって、いちばん落ち込んでてどうしようと思っていたときに、本当に励みになる文章をいただいて。そこからすごい自分の中では落ち込んでたが、人生はいろいろあるから諦めてはいけないというのを、考え直させてくれた」(『あさイチ』〈NHK総合〉、’19年12月27日放送)

やりとりを重ね、信頼関係を深めた2人。ついに共演を果たしたのが、健さんの遺作となった’12年の映画『あなたへ』だ。

「草彅さんにどうしてもやってほしい役があった健さんが、自ら手紙でオファーを出したというのです」(映画関係者)

初対面から、健さんの優しさに触れたという草彅。

「撮影前夜、到着が遅くなった草彅さんにステーキを差し入れしてくれたといいます。そして翌朝、“ようやく会えたね”と握手とハグをし、健さんの部屋で一緒に朝食を食べたそう。草彅さんは“ああ、なんだか大きい山のような人だ”と思ったと振り返っていました」(前出・映画関係者)

この作品で健さんと共演したことが、のちの草彅の役者人生を変えることになった。

「“健さんの演技に導かれて、この役で開花できた。そして、心を解放できた”と述べていました。当時、いろいろな作品に出演しつつも、自分を役者だとは思っていなかったという草彅さんですが、これを機に興味が湧き“役者になりたい”と心から思うようになったそうです」(前出・映画関係者)

草彅は、撮影時のことを回想し、こう語っていた。

《それまでやってきた芝居だとか、それ以外の芸能活動が、大げさに言ってしまえば、「あなたへ」で健さんといっしょに仕事をするために存在していたのか、とさえ思うんですよ》(書籍『もういちど あなたへ—追憶 高倉健』’18年刊行)

では、健さんにとって草彅はどんな存在だったのだろうか。

同作の公開直前、健さんは『SmaSTATION!!』(テレビ朝日系)に登場した。15年ぶりのテレビ出演かつ、人生初の生放送だ。

「健さんは番組内で、草彅さんに演技のダメ出しをしていました。『任侠ヘルパー』で彼が演じたヤクザ役について、“役が合っていない”“俺をまねしないほうがいい”と。実際草彅さんは、健さんを意識して演じていたようです」(前出・制作関係者)



■健さんのアドバイスは“あなたらしくやれ”

一見厳しい指摘にも聞こえるが、実際は愛ある激励だったようだ。

「そもそも、彼の出演作をよく見ているからこそ言えるアドバイスです。草彅さんのドラマの一場面について細かく語ったり、手紙で“顔がよく変わってきた”と褒めたりしたこともあります。

それに、健さんはダメ出しのなかで“あなた自身がいいんだから!”と声をかけていました。映画の撮影時も“あなたの好きにやればいいんだ”と言ってくれたそうです。

ありのままの草彅さんを評価しているからこそ、誰かを目指すより、個性を磨いてほしいと思っていたのではないでしょうか」(前出・制作関係者)

草彅の成長を見守っていた健さんだが、’14年に亡くなってしまった。

「健さんの死後も、草彅さんはあらゆる場面で名前を出し、敬意を表していました。初めての手紙から約15年、健さんとの思い出を忘れることはなかったようです」(前出・映画関係者)

’21年、ブルーリボン賞で主演男優賞を獲得した際、草彅は「高倉健さん、大杉漣さんのようにお世話になった先輩方に『立派な賞をいただきました』と報告したい」と各メディアのインタビューで話していた。

そして彼の心の中では、健さんの言葉が今も生きている。’13年、主演映画『中学生円山』の舞台挨拶で、草彅はこう語った。

《お芝居はうまくやろうとしなくていいんです。“おまえの中にある芝居の神様が勝手にやってくれる”と高倉健さんもおっしゃってました》(「スポニチアネックス」’13年6月3日配信)

「これは後輩俳優の『ラブシーンは緊張しますか?』という質問への答えです。健さんの教えを、今度は若手に引き継いでいくのだと思います」(前出・映画関係者)

“芝居の神様”は新幹線に再び舞い降りるはずだーー。