シンガー・ソングライターの嘉門タツオ(64)が、3月25日に復帰ライブ「嘉門タツオ 反省と叱咤の会」を東京「SHIBUYA PLEASURE PLEASURE」で開催する。

嘉門は’23年1月17日朝、自宅近くの飲食店で「冷酒180mlを1本半」飲酒し、車を運転して帰宅する際に追突事故を起こした。警察の事故処理中にアルコールが検出され、「酒気帯び運転」で現行犯逮捕され、2日後の19日に釈放されている。

その後、道路交通法違反(酒気帯び運転)で略式起訴され、罰金を納付している。また、被害者の女性が幸い軽症だったため、過失運転致傷については不起訴となった。

本誌は事故の約2カ月前から嘉門を密着取材していたが掲載を見送り、事故後の’23年3月27日にあらためて取材すると、「もう一生(免許の)再取得はしません。死ぬまで車を運転しません。今日でお酒もやめようと決めました」と誓った。

その嘉門が今年2月10日、自身の公式サイトでライブ復帰を発表。《被害者の方からも「ぜひ活動を再開なさって下さい」という有難いお言葉も頂きました》と綴っていた。

約1年間、活動自粛とともに断酒してきた嘉門に復帰の第一声を聞こうと、久しぶりにインタビューすると、愛用のギターを手に嘉門は、ほがらかに語り出した。

「25日のライブには、ゲストに宇崎竜童さんが来てくださいます。日ごろからアドバイスをいただいているんです」

嘉門の代表曲のひとつ『替え唄メドレー』シリーズでは、宇崎の作曲作品から『プレイバック Part2』や『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』など多くの名曲が、爆笑の替え唄になって使用されている。

「以前から『作曲:宇崎竜童、作詞:阿木燿子』という、ご夫婦で作り上げるスタンスっていいなと憧れていました。だから僕も、こづえさんといっしょに楽曲や映像を作るのが、とても楽しかったんです」

優秀な眼科医だった妻・こづえさんとは、’08年に嘉門49歳、こづえさん43歳で結婚し、’16年にはアルバム『食のワンダーランド 〜食べることは生きること〜 其の壱』を共同制作していた。

しかし、そんな愛妻を病魔が襲い、’22年9月15日、脳腫瘍の一種「びまん性星細胞腫」で、57歳の若さでこづえさんは旅立ってしまったのだ。

「人間という物質としては、なくなったけれど、『死んだけれど死んでいない人』がこづえさんです。彼女が伝えたかったことは、これから僕が伝えていきたい」

インタビューはこのように前向きに進み、最後にほんの確認程度に聞いてみた。



――昨年、取材で「断酒」宣言して以来、お酒はもう飲んでいませんよね?

「……半年は、一滴も飲んでなかったんですよ。でも去年の10月に酒店から電話がかかってきまして、『お預かりしていたワイン、どうしますか?』と。妻が生前、支払いを済ませていた赤白36本が、まだお店に保管されていて……。これは天国の妻が『飲んどきや』って言ってくれてるんだっていう解釈で。年末には、周りの友人にも勧められて飲みました。『やっぱりおいしいなあ』と」

妻の“お告げ”と友人の勧めを言い訳にして、最後はハハッと笑いながら言った。

「酒は二度と飲まない」宣言の半年後にワインを口にし、その後も何度か飲酒して「断酒の誓い」を破っていた。

そもそも嘉門は逮捕時、警察の取り調べに「前夜の酒が残っていた」と供述していたが、レコーダー解析が進むと「事故の直前に寿司店で飲みました」と白状していた。その「嘘」の前例に加え断酒の誓いを破ったとなると「運転免許の再取得はしない」としていた言葉の信憑性すら薄れてくる。

そう指摘すると、深刻な表情になり、

「ただ『酔うために飲む』とか、『今日は飲むぞ!』と自分からお酒に手を伸ばしたりは、していません。飲みたい気持ちは抑え、自分で線を引いています。本当に、周りに人がいるとき、味見程度にしか口にしていないんです」

そして、今度は深々と頭を下げて、謝罪した。

「本当に、申し訳ございません」

嘉門は25日のライブに関して「売上の一部は交通遺児のための基金に寄付させていただきます」と発表している。まずは交通事故で保護者を失うなどした子どもたちへの寄付から、活動を始めるという。

「交通事故のご遺族のことは、考え続けたい」と嘉門自身も話しているが、これからも真摯に罪と向き合い続け、世の中から悪質な交通事故がすこしでも減るための啓蒙活動に努めるべきだろう。

「昨年の誕生日(事故後の3月25日)にいただいた」と嘉門が言う、宇崎竜童からの魂のこもったメッセージを一部、抜粋する。

《奥方を亡くして淋しい気持を酒で癒すのは良しとしよう。しかし酒を飲んだら車に乗るな。奥方が天国で泣いているぞ。キッチリ自分に落とし前をつけたら又、阿呆らしい歌を聞かせてくれ!》

3月25日、このロックなエールと亡き愛妻への思いを胸に、嘉門はステージに立つ。

(取材・文:鈴木利宗)