「50代になってからはお酒を飲みに行くこともなくなりました。孤独死しそうで心配です」

歌手で俳優の小泉今日子(58)が、2月27日、深夜番組『紙とさまぁ〜ず』(テレビ東京系)に、そうコメントを寄せて話題を呼んだ。

「孤独死リスクが高いのは高齢者と思いがちですが、これまで依頼があった孤独死物件の清掃依頼は、50〜60代が非常に多いです」

そう明かすのは、孤独死現場などの特殊清掃を請け負うマインドカンパニー合同会社の代表、鷹田了さん。

「高齢者なら周りも気にしてくれますが、50〜60代の場合、〈自分はまだ大丈夫〉と過信しているからではないでしょうか」(鷹田さん)

加えて、孤独死には、男女別のこんな特徴もあるという。

「男性のほうが孤独死リスクは高いですが、社会とのつながりが希薄な方は女性であっても安心はできません」

実際に、日本少額短期保険協会が実施した2022年の調査では、賃貸住居内で亡くなった孤独死の男女別割合は、女性より男性のほうが多いが、59歳未満で孤独死した女性の割合は、43・3%と高い。また、女性の孤独死の約50%が65歳未満となっている。

■助けを求めて玄関先で倒れている人が多い

鷹田さんは、孤独死現場で目にした過酷な光景を、こう語る。

「死因の多くは、男女共通で心筋梗塞や脳梗塞などの突然死です。苦しくなって誰かに助けを求めに行こうとしたのか、玄関先で力尽きて倒れている方が多い。土間に頭を打ちつけて流血し、その血が玄関ドアの隙間から流れ出て、ご近所の方が気づかれるというケースもありました」

悲惨なのは、浴室での突然死。

「浴室は暖かいですから、すぐにご遺体が腐乱して、どろどろになってしまいます。近所からものすごい腐乱臭がすると通報されて、発見に至るというケースも少なくありません」

孤独死の4割が3日以内に発見される一方で、15日以上経過して発見される割合も3割を超える。

こうした孤独死リスクにさらされているのは、「単身者だけではない」と警鐘を鳴らすのは、司法書士で、『あなたが独りで倒れて困ること30』(ポプラ新書)などの著書もある太田垣章子さん。こう続ける。

「夫や妻がいても、夫婦同時に死ねませんから、いずれどちらかが“おひとり様”になります」

国勢調査のデータでは、孤独死予備軍となりかねない単身世帯や夫婦のみ世帯が2020年で6割近くまで増加している。

「少子高齢化の日本は、“総おひとり様”社会です。50代から“もしも”に備えることが大切です」(太田垣さん)



■“孤独死”を防ぐためにいまから備えること

では、将来、孤独死しないために、どう備えればよいのだろうか。

【1】近隣コミュニティに参加して近所づきあいを強化しておく

太田垣さんは、「近所づきあいを深めておくことが大事」と、こうアドバイスする。

「仕事をしているうちは、無断欠勤したら会社の誰かが訪ねてきてくれますが、問題は、リタイア後。社会とのつながりがなくなれば、独居で倒れたとき気づかれません」

そうならないためには、現役時代からボランティアや習い事など、地域コミュニティとのつながりを深めておくことが必要だ。

【2】無料アプリを利用

「まずはスマホの無料アプリなどを活用してみましょう」とすすめてくれたのは、前出の鷹田さん。

「緊急支援アプリ“MySOS”の場合、“救援依頼”ボタンを押すと、事前に登録した緊急連絡先等に一斉に連絡がいく仕組みになっています」

健康診断の結果や、かかりつけ医などをアプリに登録しておくこともできるので、万が一の場合はスムーズに医療につながりやすい。

「LINEにも、友だち登録することで利用できる見守りサービスがあります」(鷹田さん)

無料なのは、NPO法人エンリッチが提供する見守りサービスだ。

あらかじめ設定した間隔で送られてくる安否確認LINEに応答しない状態が一定時間続くと、サービス提供元から本人に直接電話が入る。本人が応答しない場合、事前登録しておいた緊急連絡先に連絡が行く仕組み。

「孤立しないためには、緊急連絡先に登録している家族や友人などとは、定期的に連絡を取り合うことも大切です」(鷹田さん)

■見守り・訪問サービスなどを上手に活用する

【3】訪問サービスを利用

50代でも持病があって不安が大きいという場合は、手軽に備えられる訪問サービスがおすすめ。

ヤマト運輸が提供する見守り・訪問サービスの場合、電球を“ハローライト”に交換するだけで、定めた時間にスイッチのオンオフが確認できない場合に家族などに通知がいく。依頼に応じて宅配スタッフが自宅訪問してくれる。(利用料は月額1千78円(税込み))

「こうした見守り・訪問サービスは郵便局のほか、一部の自治体でも行っているので興味のある方は確認してみましょう」(鷹田さん)

【4】Appleウォッチを利用

Appleウォッチを活用するのもいい。Appleウォッチには、着用者が転倒した場合に、そのことを察知して手首をたたいたり警告音を発したりする機能がある。転倒者の動作が1分間認められない場合は、あらかじめ設定した緊急連絡先に通報してくれる。

「倒れてからなるべく早く発見されれば、そのぶん救命率も上がります」(鷹田さん)

【5】任意後見人を指定しておく

ただし、こうしたサービスを利用しても「“落とし穴”がある」と。前出の太田垣さん。

「日本は、その人に何かあった場合に対応できるのは家族や親族、正式に権限が与えられた人だけ。緊急連絡先を友人等にしている場合、倒れて運ばれても入院手続きや延命治療の有無など、重要事項が決定できません。家族や親族と疎遠の方は、あらかじめ公証役場で“任意後見人”を指定して、いざというときに困らないようにしておきましょう」

一億総おひとり様社会で孤独死しないために、今から備えよう!