日本で古くからあるクッションと言えば“座布団”。近頃は外国人観光客の間で、お土産として人気があるそうです。そんな座布団ですが、筆者は疑問に思う事がありました。それは「四隅にある房(ふさ)」の存在。なぜ付いているのかを、100年以上の歴史を持つ京都の『洛中高岡屋(※)』に聞きました。

※高は本来は「はしごだか」

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【座布団の起源】

 平安時代ごろに天皇や位の高い人が座る、小さな四角い“茵(しとね)”と言われるものが起源だと言われています。茵は座るモノというより、位の高い人のための“場所”を示す役割がありました。戦国時代あたりには、武将が軍議を開くときに並べて座るようになりました。江戸時代になると綿花が登場し、綿を詰めた現在の形に近い座布団の形に。基本的に身分の高い人が座る場所ではありましたが、江戸後期になると、裕福な商人たちが武士の生活を取り入れたことにより、さまざまなモノが夜に流通しました。その中に座布団も含まれており、庶民の間でも使われるようになったのだそう。

【座布団の四隅にある“ふさ”は何のためにある?】

 ひとつめの理由として、「邪気から守るため」と言われています。古くから日本人にとって、ふさというのは邪気を払うという意味合いがあります。そもそも位の高い人が座る場所であった名残から、邪気が入らないように四つの角に付けられるようになったと言われています。座布団以外に扇子にもふさが付いていますが、これは風を送ったときに悪いものが風と一緒に流れないようにするためだそう。鎧や刀も多数のふさが付いており、邪気払いのひとつとされています。

 二つ目の理由は「綿を固定させるため」です。座布団の綿は角に留まりにくいため、長く使っているうちに綿が中心に寄ってきてしまいます。それを防ぐために四隅で綿を固定させる役目があります。ちなみに四つの角の“ふさ”は“角房(すみふさ)”と呼ばれます。

【座布団の真ん中の紐のとめ方→ “十字”と“人型”が存在する】

 座布団の中央に糸が縫われているのは、座布団の上と下の生地がずれないようにするため。留めていないと使っているうちに上と下がずれてしまいます。中の綿が動かず、なおかつ生地がずれないように施されたものなのです。留め方には違いがあり、京座布団と言われるものは“人の字”に、それ以外の多くは“十字”になっています。

 じつは座布団は正方形のように見えて、縦の方が数センチ長く前後も決められているのだそう。4辺のうち1辺だけ縫い目がないところがあり、それが座布団の「前」です。一見するだけでは分かりにくい「座布団の前後」ですが、京座布団は中央の留めの形で分見分けやすくしています。「人」の頂点側が「前」になります。十字型の留めは生地のずれを無くすためだけに施されたものなので、前後の判断は難しいとのこと。

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 座布団のほかにも、古き良き日本の伝統的なアイテムをじっくり調べてみると意外な発見があるかもしれませんね。

※ラジオ関西『Clip』2024年4月2日放送回より

(取材・文=濱田象太朗)