タンタン、私たちを笑顔にしてくれてありがとう。ずっと忘れないよ―。3月、天国に旅立った神戸市立王子動物園のメスのジャイアントパンダ「タンタン(旦旦)」の追悼式が10日、同園で開かれた。式には動物園や市、タンタンが生まれた中国からの関係者のほか、公募で選ばれた一般の約100人が参加。24年の間、愛らしい姿で人々を元気づけてくれた“神戸のお嬢様”にそれぞれが思いをはせ、別れを惜しんだ。

 タンタンは、阪神・淡路大震災から5年後の2000年、中国・四川省からオスの「コウコウ(興興)」とペアで来神。その愛らしい姿で震災後の神戸を明るく照らし、一躍人気者に。園の来場者数は前年度の2倍、200万人を数えたという。2008年、人工授精によって出産するも、赤ちゃんは生後4日目に死亡。その2年後、パートナーの2代目コウコウも死に、以来、1頭で過ごした。2021年春に心疾患が判明、日中の専門家チームが全力で治療を続けたが、2023年秋から衰弱が進み、ことし3月31日夜、死亡した。国内のジャイアントパンダの中で最高齢の28歳だった。

 追悼式は園内のホールで午後2時から催された。冒頭、同園の加古裕二郎園長が「波瀾万丈でドラマチックな一生だった。四季折々のんびり過ごし、チャームポイントであるちょっと短い手足を上手に使ってリンゴや竹をほおばっていた。見る人会う人を笑顔にする、青空に輝く太陽のような存在だった」とあいさつ。タンタンの思い出をつづった、約5分間の動画が上映されると、集まった参列者からすすり泣きが漏れた。

 飼育担当の1人、吉田憲一さんは「ソウソウ(タンタンの中国名)が治療を頑張ってくれたおかげでパンダについて分かったことがたくさんあった。おかげで長生きできるパンダが増えると思う。ありがとう。これからゆっくり空の上で見ていてください。でもたまには思い出して、どんな形でも良いから会いに来てくれるとうれしいです」と遺影に向かって涙声で語り掛けた。

 もう1人の担当、梅元良次さんは「本当に頑張り屋さんで賢い子。家族や友達に近い存在でした。最期の瞬間まであなたらしく、よく頑張ってくれました」と振り返り、会場に向かって「悲しい記憶でなく、皆さんを笑顔にしてくれたタンタンとして記憶に残してあげてください」と呼び掛けた。

 好物の竹を提供していた神戸市北区淡河町の竹生産者、治療に携わった中国の獣医師も感謝とねぎらいの言葉を述べた。動物園近くの「青谷愛児園」の子どもたち約20人による合唱の後、参加者全員が順番に献花した。

 式に参加した神奈川県川崎市の女性(54)は「タンタンに『これからも一緒だよ、ずっと忘れないよ』と伝えに来ました。お空では苦しい治療もない。元気に遊んでいてほしい」と話した。

 追悼式の様子は動物園公式YouTubeでライブ配信された。動物園公式ホームページなどで今後も録画を閲覧できる。ホームページの特設サイトも順次、内容を充実させていく方針という。

 また園内の動物科学資料館では、11日から9月1日まで、特別展「ありがとうタンタン」を開催。生涯をまとめた年表や写真、飼育で使った道具や愛用のタイヤ、飼育員や中国専門家からのメッセージなどを展示する。日中共同飼育繁殖研究に関する論文や飼育・治療の取り組みについても紹介する。特別展の観覧は無料(要別途入園料)。