フジテレビが「TVer」と「FOD」で順次新旧ドラマ40超を順次無料配信するキャンペーンを、2月10日から4月10日まで実施中。伝説のドラマ『白線流し』(1996年放送)も初配信されています。

 『白線流し DVD-BOX』(ポニーキャニオン)筆者も『白線流し』を28年ぶりに再視聴。改めて「えっ……長瀬智也ってこんなに美少年だった?!」と驚いたのは、きっと私だけではないはずです。今回は、そんな長瀬智也の軌跡〜美少年から“俺たちの長瀬”まで〜を振り返りたいと思います。

10代の美少年、演技も光っていた『白線流し』

15歳のときにTOKIOのボーカルとしてデビューした長瀬。その前から俳優デビューを果たし、10代のうちに主演も務めています。ドラマ『白線流し』もそのひとつ。

本作は、長野県の松本北高校で、卒業前の3年生を中心にした男女7人の青春群像劇です。長瀬が演じたのは、一人暮らしで働きながら同校の定時制に通う青年・大河内渉(おおこうち・わたる)。母親は東京に別の家庭があり、父親は他界しています。天文台で働くという夢をもち成績は優秀ですが、複雑な生い立ちから人との付き合いが不器用。演じた長瀬は当時17歳。まだあどけなさが残るまさに“美少年”が拝めます。

 『白線流し〜夢見る頃を過ぎても ディレクターズカット完全版 [DVD]』(ポニーキャニオン)一方演技には、当時から光るものがありました。境遇からくる淋しさや青春期ならではのゆらぎを繊細に表現した長瀬がいたからこそ、その後2年おきに続編が制作され、スペシャルドラマが計5本になるほどのヒットにつながったのではないでしょうか。

ファン層を一気に広げた代表作『池袋ウエストゲートパーク』

そして22歳のとき、長瀬は運命的な作品にめぐり合います。ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』=通称「I.W.G.P.」です。

 『池袋ウエストゲートパーク Blu-ray COMPLETE BOX』(NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン)本作では池袋で名の知れた元不良・マコトを演じました。ギャング集団にも、ヤクザにも、そして警察にも媚びず、群れません。しかし「めんどくせぇ!」と言いながらも、友人や母親のために熱くなる。周囲から信頼され愛される存在です。そんなアイドルの枠を大きく超えた、魅力的な“漢っぷり”は、女性だけでなく男性をも虜にしました。

令和の時代にはそれこそ“不適切”な表現も多い作品ですが、今観ても長瀬のキャラクター・ストーリー展開共に最高! Amazonプライム・Netflix等で配信中なので、当時ハマった皆さんにも、未だ観てない方にもおすすめです。

「I.W.G.P.」は長瀬と脚本家・宮藤官九郎との初共作でもあります。これ以降5年タームでクドカン作品の主演を務めています。まさに長瀬にとって大きなターニングポイントとなった作品でした。



俳優として絶対的な存在感を確立した2000年代

長瀬は「かっこいい二枚目」と「バカっぽい三枚目」どちらも表現できる俳優です。ドラマ『ムコ殿』(2001年)でも、その力を存分に発揮。大スターながら、大家族に婿入りする桜庭裕一郎を演じました。婿としての裕一郎はとにかく人懐っこく、ちょっとダサくておバカ。結婚した・さくら(竹内結子)とのバカップルぶりは和みます。

 『YUICHIRO SAKURABA in ムコ殿(2)』[VHS](ユニバーサルJ)一方、シンガーソングライターとしての桜庭裕一郎はクールで、抱かれたい男No.1! 凄まじい色気を放っています。桜庭裕一郎名義で写真集やCDも発売しており、同じ設定の『ムコ殿2003』(2003年※2023年3月現在、TVer・FODで無料配信中)が放送されるほど人気を集めました。

 『タイガー&ドラゴン「三枚起請の回」 [DVD]』(TBS)2000年代は前述の2作品以外にも、ドラマ『ハンドク!!!』『タイガー&ドラゴン』『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』など多くのヒット作で主演を務めています。それはまさに長瀬の存在感があってこそ! さまざまなキャラクターや表現で、役の芯にある “熱さ”を見せる俳優としての地位を確立しました。

俳優・長瀬智也の集大成となった『俺の家の話』

その後も、唯一無二の俳優としてクドカン作品を中心に数多くのドラマ・映画で型破りな役どころを演じてきました(ちなみにそんなイメージを覆した2018年の映画『空飛ぶタイヤ』での長瀬の演技も秀逸です!)。

しかし、2020年にジャニーズ事務所からの退所を表明し、2021年3月末に退所。「裏方としてゼロから新しい仕事の形を創り上げていく」という意向を示しました。

 画像:TBS『俺の家の話』TBS公式サイトよりそして2021年のドラマ『俺の家の話』が俳優として最後の出演作となりました。演じたのは、能楽の人間国宝を父にもちながら「ブリザード寿」のリングネームで活躍する“ピークを過ぎた”プロレスラー、観山寿一(みやま・じゅいち)。

“親の介護”を通して、自分の生き方や家族と向き合う骨太な作品でした。能楽師と覆面レスラーという二足の草鞋を履く役において、長瀬は気合いの入ったフィジカルな役作りで、スタントマンを使用せずに演じたといいます。長瀬らしい“熱さ”も全開で、まさに彼の集大成を見せてもらいました。



長瀬智也、現在の活躍は? 2023年に音楽活動を再開

退所から現在まで、テレビドラマや映画への出演はない長瀬。しかし、Instagramでは自身の好きなバイクやギター、釣りを楽しんでいるワイルドな姿が見受けられます。『白線流し』の頃とは驚くほど違う(笑)。

 『GOETHE(ゲーテ)2023年 9月号』(幻冬舎)2023年にはバンド「Kode Talkers」として音楽活動を再開し、CDもリリース。いつかまた俳優としての長瀬も観たいと思っているのは筆者だけではないはずです。

<文/鈴木まこと(tricle.ltd)>

【鈴木まこと】
tricle.ltd所属。雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201