今シーズンのスーパーフォーミュラ・ライツ(SFL)には、ある有名ドライバーの息子が参戦している。エンツォ・トゥルーリである。父親はもちろん、ルノーやトヨタなどからF1に参戦し、2004年のモナコGPで優勝を手にした、あのヤルノ・トゥルーリだ。

 エンツォは昨年FIA F3に参戦したが、ポイントを獲得することができず、今季は活躍の場を日本に求めた。

 その息子エンツォをサポートするために、ヤルノも来日。今季のSFL開幕戦の舞台であるオートポリスにも帯同し、熱視線を送る。

「エンツォがスーパーフォーミュラ・ライツで最高のチームであるトムスのマシンをドライブできるチャンスを得られたのは、素晴らしいことだ。トムスはSFLだけでなく、スーパーフォーミュラや日本の他のレースでも最高のチームのひとつだからね」

 ヤルノはそうmotorsport.comに対して語った。

「実はずっと昔……90年代に、私はトムスでレースする予定だったんだ。それは叶わなかったんだけど、今回息子がトムスで走ることになり、嬉しい」

「エンツォはまだ若く、経験も浅いから、簡単ではない。初日(オートポリス戦の金曜日)に彼はとても速かったが、ドライでは1周も走っていない。コースのことを知らなければ、予選で多くのことを期待することなんてできない。エンツォはこれまで、鈴鹿と富士しか経験していないから、難しいシーズンになるだろうね」

 ヤルノはSFLについて、学ぶのには適したカテゴリーであると感じているという。

「ここ(オートポリス)で2日間テストを行なった。天候は悪かったけど、それでもポジティブだった。そして彼はここで3レースを戦い、多くのことを学び、次のレースに進むことになる」

「彼が走れば走るほど、クルマやチーム、さらにはエンジニアとの関係もよくなると確信している」

 経験豊富な先輩として、どのくらいエンツォをサポートしているのか? そう尋ねるとヤルノは、次のように語った。

「彼が知らない部分についてアドバイスするようにしている。彼が慣れていない条件がいくつかあるからね」

「データを分析したり、ビデオを見たりしながら、週末にどのように取り組むべきか、彼が理解しやすいようにしているんだ。そして、学習スピードを加速させようとしている。私にできるのはそれだけだ」

 ヤルノ・トゥルーリといえば、トヨタのF1で走っていたこともあり、日本での人気が非常に高いドライバーである。トヨタF1に初表彰台や初ポールポジションをもたらしたのも彼だし、日本にはヤルノ・トゥルーリのファンクラブもある。そして実は既にエンツォのファンクラブも発足しているのだ。

 日本についてどんなイメージを持っているのか? そう尋ねるとヤルノは次のように語った。

「ヨーロッパとは全く違う世界で、大好きなんだ。我々の当初からの目標は、日本に来ることだった。日本の人たちが、モータースポーツにどれだけ情熱を注いでいるかを知っていたからね」

「エンツォがステップアップして、スーパーフォーミュラやスーパーGTに参戦できたら、本当に素晴らしい。ここで学び、ここでプロになってくれればとても嬉しいね」

 エンツォも以前、もっと早い段階で日本に来るつもりであり将来的にはスーパーフォーミュラにステップアップしたいと語っていた。

「僕らは去年の時点から、日本に来る計画を立てていたんだ。でも新型コロナの影響でそれが叶わなかった。ようやく日本にやってくることができて、本当に良かった」

 そうエンツォは今年の3月に語っていた。

「僕のキャリアにとっては大きな一歩だし、素晴らしい経験になることを願っている。そして将来的にはスーパーフォーミュラにステップアップしてレースができればと思っている」

「(父ヤルノも)トヨタで走ったから、トヨタは僕にとってとても魅力的だ。トヨタはWECをやっているから、いずれそこでレースしたいと思っている」

 ヤルノはエンツォが日本でうまくやっていくためには、日本人の働き方に慣れる必要があると考えていると語った。

「私は彼に、日本はヨーロッパとは異なる働き方があり、その文化に適応する必要があると言った。彼がここでの仕事を続けていきたいなら、それは基本的なことだ」

「でも、エンツォはこの状況に満足しているようだし、周りの人たちのことを信じているようだ。どうなるか見てみよう」

「エンツォにとって今は学びのシーズンだ。彼はチームと協力して、サーキットを学ぶ必要があるし、マシンのコンセプトもヨーロッパとは異なる。しかし、うまく適応している」

「これまでのところ、彼には競争力があるようだし、シーズンを通じて彼は成長すると確信している」

 なおエンツォは、5月20日に行なわれたSFLの初戦を7位でフィニッシュ。21日の第2戦も7位、第3戦は6位だった。

「スーパーフォーミュラ・ライツと日本での最初のレース週末はかなり難しいものだった」

 エンツォは週末を振り返り、チームのプレスリリースにそうコメントした。

「最初の2日間の練習走行はウエットコンディションで行なわれた。このコンディションでは本当に速く、常にトップ3に入ることができ、ユーズドタイヤでのフィーリングもとても良かった。しかし、土曜日の朝は路面が乾いていた。ドライコンディションでの走行経験がなく、セッティングも完璧でないまま予選に臨んでしまった」

「それが残りの週末を台無しにしてしまった。いくらか調整を行なって良い方向に向かったけど、それでもまだ十分ではなかった」

「この2レースで得たポジティブな要素もあるので、次のSUGOではドライコンディションでレースを迎えられるように準備したい。この場を借りて、今年僕をチームに迎え入れてくれたトムスに感謝するとともに、初めてこのようなプロフェッショナルな環境でレースを楽しめたことを伝えたいと思う」