2023年シーズンに躍進し、一気にトップチームのひとつとして名乗りを挙げたアストンマーティンF1。その強さは、優れたレースペースにあった。しかし今季は一転、予選で高いパフォーマンスを発揮しつつも、決勝では苦しむ傾向にありそうだ。チームも、この理由について分析を進めているという。

 フェルナンド・アロンソの活躍もあり、昨シーズン前半は表彰台の常連となったアストンマーティン。ただその後は、ライバルチームのパフォーマンス向上もあり、相対的なポジションが後退。最終的にはコンストラクターズランキング5位でシーズンを終えた。

 バーレーンとサウジアラビアでの2024年シーズン開幕2戦を見ると、そのポジションは今も大きくは変わりなく、引き続き5番手チームのままであるようだ。これはおそらく、アストンマーティンが開発に失敗したというわけではなく、メルセデスとフェラーリが特にレースペースの面でパフォーマンスを上げ、マクラーレンは昨年中盤に大きく底上げをしたという要因が大きい……アストンマーティンが後退したというわけではないだろう。

 しかし明らかになったのは、今年のアストンマーティンのマシン”AMR24”は、予選ではライバルと互角の戦いを繰り広げるものの、レースペースの面ではライバルに遅れを取るという傾向にあるということだ。これは、昨年とは真逆の状況だ。

「バーレーンでは、1周のペースでは我々は速かったものの、ロングランやレースペースでは苦戦しているようだ」

 アロンソはサウジアラビアGPの予選後にそう語った。

 そのサウジアラビアGPではマクラーレンのオスカー・ピアストリに迫り5位でフィニッシュしたが、それでもアロンソは、レースペースに苦労していると語った。

「メルセデスやマクラーレンと比べると、まだコンマ2秒からコンマ3秒及ばない。レッドブルやフェラーリと比べると、もう少し足りないかもしれないね。でも、予選ではかなり近づけているようだ」

 アストンマーティンのパフォーマンス・ディレクターであるトム・マッカローは、予選とレースペースのバランスが変化した理由についてはまだ調査中であるが、レースで得られたデータが、手掛かりになる可能性があると明かしている。

「歴史的に見ると、我々は力強いレースをする傾向にあり、予選は少し厳しいと感じていたんだ。でもこのクルマは、空力的に見れば、我々にとっては全く異なるクルマなんだ」

 マッカローはサウジアラビアGPの際にそう語り、予選と決勝でのパフォーマンス差について次のように説明した。

「我々はそれを最大限に活用する方法を学んでいるところだ。ロングランを改善することを試み、予選の順位についてはあまり心配していなかった。そういう戦略で週末に臨んだ。そしてエンジニアリングの面では、リヤタイヤを労わることができるマシンを作ることに集中していた。その結果、どんな予選結果を得られるか見てみようじゃないか」

 予選でアストンマーティンが強みを見せている理由のひとつに、DRSの効率というのが挙げられる。レッドブルは、このDRSを効果的に使い、最高速向上に活かしていることはよく知られている。アストンマーティンも、この傾向に近づきつつあるのだ。

 予選ではDRSを、作動が許されている区間では自由に使うことができる。バーレーンとサウジアラビアは共にDRS区間が3箇所設けられているため、DRSの効果が特に出やすい2グランプリだったと言える。

 アストンマーティンAMR24は、DRSを開くことによってバーレーンでは20km/h以上、サウジアラビアでは約19km/h最高速が向上していた。昨年はDRS使用時と不使用時の速度差が12〜15km/h程度だったことを考えると、いかに効率が高まっているかが分かる。

「マシンの効率……DRSの効率は、レッドブルの強さを見て、我々が昨年から非常に熱心に取り組んできたことだ」

 そうマッカローは語る。

「多くの人がこれを見て、DRSのボタンを押した時により多くの空気抵抗を軽減できるための解決策を見つけようとしている」

「それが我々が予選をうまく戦うことができた理由の一部であり、我々は非常に強力なDRSを持っている。ほぼ同じ風向きと風速だった昨年の予選と、今年の違いを調べていたんだが、その差はかなり大きかった。それによって我々は、ラップタイムを削ることができた」

 アストンマーティンにとって心強いのは、サウジアラビアでは予選のパフォーマンスを失うことなく、レースペースを改善することを、セットアップの選択によって実現できたということだろう。ただそれ以上にアストンマーティンにとって重要なのは、シーズンを通じてパフォーマンスを上げ続けるということ。これは、昨年の彼らが実現できなかったことだ。

「我々は今年、マシンの空力面で異なる哲学を取り入れた。そして開発を続けるために、その基盤に身を委ねようとしたんだ」

 そうマッカローは続けた。

「現時点では、開発ツールを使用して適切に開発できる段階にある。開発が継続できることを願っている。こういうことを、できるだけ早く軌道に乗せることが重要だ」

「その部分についてはかなり良い感じだ。しかしこれは、相対的なゲームなんだ。我々は少しずつでも前に進み続け、マシンを改善し、グリッドの先頭に近付きたいと思っている」