先日、4度のF1ワールドチャンピオンであるセバスチャン・ベッテルがWEC(世界耐久選手権)のハイパーカークラスに参戦するLMDhマシン、ポルシェ963をドライブした。しかしながら、彼がそのマシンでレースに参戦するかどうかは決まっていないようだ。

 ベッテルはスペインのアラゴンで、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの963をドライブ。118周を走った。ポルシェのファクトリーレーシングディレクターであるウルス・クラトルはmotorsport.comの姉妹サイトであるMotorsport-Total.comに対し、ベッテルが「非常に上手く操縦していた」としてこう述べていた。

「セバスチャンがマシンを走らせられるということを証明する必要はない」

「彼は未知のマシンをある意味リスペクトしていたが、とても上手く扱っていた」

 クラトルはBMWザウバー時代の2007年に、同チームからF1デビューを果たしたベッテルと共に仕事をした経験がある。

「セバスチャンはあの頃と同じだった。色んなことに食いつくんだ。彼についてまた知ることができたのは新鮮な体験だった」

「4度のF1ワールドチャンピオンと言えども、やるべきことは色々とあった。初めましてのチームで、マシンも複雑だ。その中で彼は見事にマスターしてみせた」

 ベッテルは2022年限りでF1を引退して以降は、本格的なレースに参戦していない。その一方で彼は昨年、ポルシェのカスタマーチームであるJOTAとWEC参戦について仮段階の話し合いをしていたとされている。

 2024年のWEC開幕戦カタールでは優勝を飾り、カスタマーのJOTAも含めて表彰台を独占するなど、センセーショナルな活躍を見せたポルシェ勢。ル・マン24時間ではペンスキーのファクトリーマシンが2台から3台に増える予定であり、ベッテルにとっては参戦のチャンスも広がると言える。

 開幕戦の優勝ドライバーであるポルシェのケビン・エストレも、ベッテルのテストでのアプローチを賞賛しており、次のように語った。

「彼は間違いなくやる気満々だった」

「彼を少しの間見かけたけど、エンジニアと話したり、テレメトリーを見たり、無線でやり取りしていた。彼は全てを知ろうとしていたんだ」

 またベッテルは来季F1へのカムバックを果たすのではないかとも噂されている。先週スポーツドリンクのPRでメディアツアーを行なった際、ベッテルはF1復帰について「魅力的で面白いかもしれない」とコメントしている。

 こういった噂について、クラトルはこう語る。

「彼は色々な人たちを話をしているようだが、我々も記事を読んだだけだ」

「彼が何をするのか、彼が何に乗るのか、そして我々のマシンに乗るのかは、まだ決まっていない」

「それが明らかになるのは数日後か数週間後だ。彼がどこで何をどのようにドライブするのか。その決断がいつ下されるのかすら決まっていないのだ」

 ポルシェは5月19日までにル・マン24時間に出走するドライバーを決めなければならない。ル・マンにエントリーされるポルシェ・ペンスキーの4号車に乗ると決まっているのはマシュー・ジャミネスだけであり、その他IMSAのドライバーも空いているシートを狙っていると見られる。

「我々は常に、企業やチームにとって最善なものを模索している。我々には多くのドライバーがいるからね」とクラトル。

「個人的には我々はスポーツカーレースにおいて最適な10人のドライバーがいると思っている。ル・マンで(3人体制のマシンを)3台走らせるには十分すぎるほどだ」