岡山国際サーキットで開幕した2024年のスーパーGT。注目の新車両のひとつと言えるのが、GT300クラスで2チームが投入するフェラーリ296 GT3だ。

 その296を投入するチームのひとつであるTeam LeMans(チームルマン)は、2021年からアウディR8 LMSでGT300を戦っていたが、かねてより車両変更を検討していることが明らかになっていた。motorsport.comでも2022年秋に報じたが、チームルマンは当時レースカー売買サイトにR8を出品しており、その際に現エントラント代表(当時アドバイザー)の古場博之氏がその旨を認めていた。

 それから1年半。チームルマンはフェラーリを持ち込んできた。数あるGT3規格の車両の中で、フェラーリを選んだ理由は? 古場代表に聞いた。

 古場代表曰く、GT3車両はパフォーマンスウインドウの中で性能均衡化が図られているものの、「様々な条件が変化する中でも強い車両」として「車両が重くなっても速いパワーウエイトレシオの良い車両」「ターボエンジン車両」、そして「重量配分が良くリヤタイヤに優しいFR車両」の3つを車両選定の条件に挙げたという。

 以上の条件をテーブルの上に並べた結果、それに合致するものとして挙がったのはBMW M4 GT3であった。チームはM4を手配しようと動いたが、デリバリーが間に合いそうになく、実現はしなかったという。そこで別の選択肢を検討した際に持ち上がったのが“4つ目の条件”で、それがフェラーリを選んだ決め手にもなったようだ。

「チームオーナーからも、クルマそのもののネームバリュー、レース以外のトータルな事業展開を考えた時にフェラーリがいいかなという話がありました」と古場代表。

「フェラーリはパワーウエイトレシオ(が良い点)とターボカーという点は合致していました。ミッドシップでタイヤに厳しいという点も、488から296になってエンジンがV8からV6になり、Vバンクも120度なのですごく低重心。なおかつシリンダーが2気筒減ったので重量配分も前寄りになっていて、すごく良い方向になっていました」

「そう考えるとフェラーリも良いよね、という話になりました。ただお金はかかりますけどね(笑)」

 296のパフォーマンスに関して古場代表は、2月の富士テストでは過給圧の設定にミスがあった影響でストレートスピードが280km/h近く出ることもあったものの、3月の公式テストでBoP(性能調整)も入った状態で走ったところでは、直線でのパフォーマンスはそれどほ高くないという。しかしドライバーはダウンフォース量の多さを感じているようで、一発のタイムは出そうな感覚があるという。

 その一方で、レースでのパフォーマンスに関してはまだ確認が必要なものも多いようだ。例えばアウディ時代は、後ろ寄りの重量配分を活かしたブレーキングでオーバーテイクを連発することもできたが、それがフェラーリになった場合どうなるか。タイヤの持ちは実際のところどうなのか。その辺りは実戦を経て見えてくる形になりそうだ。

 昨年はアウディを駆り、片山義章とロベルト・メリのコンビが3位表彰台を3回獲得するなど躍進したチームルマン。フェラーリとなった今季も片山とメリのコンビは継続となるが、シリーズタイトルに近付くためにも今年こそ優勝を狙いたいと古場代表は語る。

「昨年は表彰台に3回上がりましたが、なかなか勝てなかった。チームのメンバーとも『今年は勝つぞ』という話をしています」

「1位になると20点を獲得できますが、3位は11点と、ほぼ半分なんですよね。そうすると上位のランキングに行くことは難しいので、優勝を狙っていきたいです」

「ただ決勝で後ろから上がっていくことは簡単ではないので、今年は予選で良いところに入れるように頑張っていきたいです」