今週、スイス・ジュネーブで開催される定例のF1委員会では、チームやFIA、F1首脳陣がビデオ会議を通じて参加し、技術やスポーツに関する様々なトピックについて話し合われる。

 話し合いに先駆けて配布されたF1委員会の議題で注目すべきは、F1が新たなポイントシステムを導入する可能性があるということだ。

 2010年から使用されてきた現在のポイントシステムでは、優勝したドライバーから10位でフィニッシュしたドライバーまでに順位に応じたポイントが付与されてきた。今回提案されたのは、上位12名のドライバーにポイントを与えるというモノだ。

 総合優勝争いへの影響を最小限に抑えるため、この新ポイントシステム案では上位7名のポイント数には手を加えず、8位以下のポイントのみが変更される。順位に対するポイント配分は以下の通りだ。

順位 従来→新
1 25→25
2 18→18
3 15→15
4 12→12
5 10→10
6 8→8
7 6→6
8 4→5
9 2→4
10 1→3
11 0→2
12 0→1

 上位5チームが後方を大きく突き放す現状では、下位5チームにとってはポイントを獲得するチャンスが増えることになる。上位5チームそれぞれが2台する完走すると、下位5チームがポイント圏外へと自動的にはじき出されるという状況ではなくなるのだ。

 motorsport.comの調べでは、ポイント配分拡大がプラスに働くと考える小規模チームやF1側からの働きかけによって、今回の提案に至ったという背景があるようだ。

 上位5チームに圧倒されがちな現在、下位5チームにとっては1点でも多くのポイントを獲得することが大きな差や価値を生む。

 今季は5戦を終えて、アルピーヌ、ウイリアムズ、ザウバーの3チームがポイントを獲得できず。下位5チームの”ベスト・オブ・ザ・レスト”の争いでは、RBが角田裕毅の稼いだ累計7ポイントで先行している。

 仮にポイント付与が12位まで拡大することとなれば、熾烈な中団争いの中でコンスタントにポイントを獲得し、シーズンを通して一貫したパフォーマンスを発揮したチームがランキングのより上位に並ぶこととなる。現在のコンストラクターズランキング争いでは、たった一度の幸運で好成績を掴んだライバルチームに敗れるという可能性もあるのだ。

 上位陣のポイントを据え置くという計画は、これまでポイントシステムの変更に関して消極的だった上位チームの支持を確保するためにも重要だ。またこれまで、獲得ポイントに応じてエントリー料の支払いを求めてきたFIAにとっても都合が良いだろう。

 全会一致の支持は得られないと見られているが、来季からの導入については10チーム中、6チームの賛同が得られればいい。

 1990年まで、F1では有効ポイント制が使われていたが、1991年から全戦がランキングの対象となり、優勝者に与えられるポイントが10点となった。入賞対象は6台で10-6-4-3-2-1点という配点だった。2003年には入賞が8台までに増え、10-8-6-5-4-3-2-1点が与えられることとなった。

 2010年には、現行システムと同じ上位10台が入賞の対象に。25-18-15-12-10-8-6-4-2-1点という割当は、より優勝の価値を高める配点となっている。そして2019年からは、入賞者のファステストラップにも1ポイントが加算されることとなった。また2021年から導入されたスプリントレースもポイント獲得の対象となっていて、現在では上位8人のドライバーにポイントが付与される形となっている。