クラシコはレアル・マドリーが制し(3‐2)、リーグ優勝を確実にした。残り6試合で11ポイント差の逆転は不可能だ。

監督シャビの退団もこれで決定的だ。すでに今季限りを宣言していたが、CLでパリ・サンジェルマンを破って準決勝に進出するか、昨夜の試合でレアル・マドリーに勝っていれば慰留され続投の可能性もあった。

このクラシコの教訓はいくつかある。

まず、ラリーガにもゴールライン・テクノロジーが導入されるべきであること。27分の幻のゴールのように、VARのカメラではGKの体で死角ができて、ゴールラインをボールが完全に越えたか否か判断できない場合がある。おそらく越えておらずノーゴールで正解だったと思うが、角度によってはゴールかのように見える写真も出てきている。テクノロジーがあれば省くことができる無駄な論争が起きている。

次に、バルセロナの補強の方向が決まったこと。

攻撃の中心はラミン・ヤマルであり、かつてのメッシと同じように彼がプレーしやすいようにチームを作れば良い。カマビンガは一度も1対1を止めることができなかった。スペースへの飛び出しと足を止めた状態からのダッシュの両方が得意で、シュートもセンタリングも鋭く(2点目に繋がるパスは見事だった)状況判断も良い。さらにハートも強く精神的にも安定している。この試合ではビニシウスの脅威よりもヤマルの脅威の方が上だった。まだ16歳だが、若い選手にありがちな波がなく、どこまで伸びるのか末恐ろしい。

まず補強すべきは左SBだろう。

カンセロは一度ボールを奪いながら失ってPKに結び付いた1失点目、ルーカス・バスケスのマークを外しビニシウスのセンタリングをシュートさせた2失点目、絞り過ぎてルーカス・バスケスにフリーでセンタリングさせベリンガムに決勝ゴールを挙げられた3失点目と、すべての失点に絡んだ。週中のCLパリ・サンジェルマン戦でも甘いマークでデンベレへのゴールを許し、さらに不要なPKを与えて2失点に絡んだ。こうした致命的なミスを犯すDFはCL上位進出を目指すチームに相応しくない。バルデがケガから復帰し控えに回ったとしても、だ。

CFはレバンドフスキが不調の場合、控えがいない。いや、ビトール・ロケがいるはずなのだがCLに続きクラシコも出番なしで、信頼に足る選手ではないことが明らかになった。

反対に、放出の噂があるが出すべきではないのが、デ・ヨングとアラウホ。デ・ヨングは昨夜も担架で運ばれるなど、今季は不運なケガが重なって調子が上がっていないが、CBからトップ下までこなせる技術と戦術眼とフィジカルコンディションを兼ね備えた唯一無比のスーパーMFである。アラウホはSBのクンデのサポートがあればビニシウスやエムバペクラスまで止められる、速さと強さでやはりチームナンバー1だ。パリ・サンジェルマン戦でのパスミスからのレッドカードで批判されたが、売りに出して同じレベルのCBが獲れる保証はない。

そもそも、バルセロナは今夏こそ補強よりも現有戦力の維持を目指すべきだと思う。

財政的な問題があり、補強しようとすれば誰か主力を放出しなければならない。だから放出要員にデ・ヨングやアラウホの名が挙がっている。だが、お金がないのなら買い物を我慢する、という手もあるのではないか。レアル・マドリーにエムバペが加わりそうで戦力面でもゴージャスさという点でも見劣りするのは許されない、というのは気持ちとしてはわかるが、選手の入れ替えでは戦力は劣化する可能性の方が高い。

せっかく優秀な下部組織があるのだから、戦力外のみの放出+現有戦力の維持+下部組織出身者に期待、という感じで「我慢の1年」を送り、目標をCL優勝ではなく「上位進出」に下げ、新スタジアム完成後による収益増を待つ方がはるかに確実な道だと思う。

クラシコに敗れ今季の無冠が決まった。だが、試合内容では互角で、引き分けが妥当な結果だった。パリ・サンジェルマン相手にパリでは圧倒し、ホームでも11対11の間は互角以上だった。CL優勝を狙うレアル・マドリー、パリ・サンジェルマンと互角に戦えたこのチームが、解体されるのを見るのは忍びない。

もっとも、新監督選びについては同じ「下部組織から昇格」(すなわちBチーム監督のマルケスの就任)という理屈を通しにくいのは確かだ。感情のコントロール面で経験不足が露呈したシャビは下部組織出身だった。若いチームだけに指揮官はある程度のベテランに任せた方がいい、とも思える。

すでに新監督候補とは接触が行われているはず。これからの報道合戦に注目したい。

文:木村浩嗣