韓国ドラマが得意なカテゴリーにしているのが「復讐ドラマ」だ。最初に主人公が徹底的にひどい目に遭う。「これでもか」と人間性を否定される。本当にかわいそうだ……そこで生じた恨みを晴らすために、ドラマは用意周到に復讐計画を描いていく。そんなふうにドキドキするような物語に、思わず喝采をおくりたくなる。

●『復讐の花束をあなたに』
(2020〜2021年/KBS)
出演者(役名)/カン・ウンタク(イ・テプン=ユ・ミニョク)/オム・ヒョンギョン(ハン・ユジョン)/イ・チェヨン(ハン・ユラ)/イ・シガン(チャ・ソジュン)
〔ドラマ解説〕怒涛のように「復讐」という感情が迫ってくる展開になっている。ストーリーの中心にいたのが、おぞましい悪女のハン・ユラ。貧しい生活から抜け出すために、ユラは嘘にとことん染まっていく。被害を受けた人たちが復讐に乗り出すと、さらにユラが想像を絶する悪事をどんどん繰り出してくる。
とにかく、シーンごとに変化するユラの表情が本当に不気味だった。こうして最強の悪女を描くことで『復讐の花束をあなたに』は復讐劇の会心作となった。
●『ザ・グローリー〜輝かしき復讐〜』
(2022〜2023年/Netflix)
出演者(役名)/ソン・ヘギョ(ムン・ドンウン)、イ・ドヒョン(チュ・ヨジョン)、イム・ジヨン(パク・ヨンジン)、パク・ソンフン(チョン・ジェジュン)、ヨム・ヘラン(カン・ヒョンナム)
〔ドラマ解説〕単なる復讐ドラマではない。人間の業を徹底的に描き切った脚本と演出がすばらしい。主人公のムン・ドンウンは、高校時代にひどすぎるいじめを受けていた。ヘアアイロンをからだ中に押し付けられるという悲惨な場面は見るのがつらかった。18年後、5人のワルに対して復讐を始めるムン・ドンウンの計画性が完璧だった。
一番の標的にしたのが気象キャスターとして人気を得ていたパク・ヨンジンだ。彼女への復讐を完遂させるために、ムン・ドンウンはヨジョンという美容整形医師に様々な手助けをしてもらう。かくして2人は名コンビになって、次々に復讐を完成させていく。
●『梨泰院クラス』
(2020年/JTBC)
出演者(役名)/パク・ソジュン(パク・セロイ)/キム・ダミ(チョ・イソ)/クォン・ナラ(オ・スア)/ユ・ジェミョン(チャン・デヒ)
〔ドラマ解説〕『梨泰院クラス』はスケールが大きいヒーロー成長物語なのだが、その本質は復讐ドラマだった。主人公パク・セロイは、高校時代にひどい仕打ちを受けて、高校を中退せざるをえなかったし、父親まで殺された。悪いのは、外食産業の大手チャンガ・グループの会長とその息子だ。
この2人に仕返しするためにパク・セロイは壮大な野望を果たしていく。復讐心が大成への一歩になったことを端的に見せてくれたのが『梨泰院クラス』であった。
●『D.P.―脱走兵追跡官―』
(2021年/Netflix)
出演者(役名)/チョン・ヘイン(アン・ジュノ)/ク・ギョファン(ハン・ホヨル)/キム・ソンギュン(パク・ボムグ)/ソン・ソック(イム・ジソプ)/シン・スンホ(ファン・ジャンス)
〔ドラマ解説〕主人公のアン・ジュノは正義感が強い青年で、軍隊で先輩兵士による壮絶なイジメを目撃して憤慨する。その後、アン・ジュノは憲兵隊に配属されて脱走した兵士を逮捕する任務に就く。
その際の活躍をドラマは丹念に扱っていくが、後半になると、イジメを強烈に受けた脱走兵が憎き相手に復讐するために大騒動を起こす場面が徹底的に描かれていた。目をそむけたくなるほど悲惨な場面が多く、人間の復讐心の根深さを思い知らされる。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)