最新のトヨタ車を観察していると、車体に極めて小さな突起物がいくつか備わっているのが確認できます。これは一体何なのでしょうか。

F1マシンの先端技術が大小のトヨタ車に広く採用されていた!

 最近、多くのトヨタ車のドアミラーの付け根やテールランプ周りなどに、水のしずくのような形をした突起がいくつかついています。
 
 ひとつひとつは非常に小さいものですが、はたしてどのような効果が得られるのでしょうか。

 トヨタ車の小さな突起は「エアロスタビライジングフィン」と呼ばれるエアロパーツの一種です。

 エアロパーツとは、走行中のクルマに対する空気抵抗を低減したり、走行安定性を高めたりする機能部品で、レーシングカーの車体前後に装着された大きな羽のようなパーツが、もっともイメージしやすいでしょう。

 しかしエアロスタビライジングフィンは、長さ100〜200ミリ、幅10〜20ミリ、高さ5〜15ミリ程度と、その名の通り「フィン(魚のひれ)」のように極めて小さな突起です。

 ボディの前方から後方に向かって水平に、1個から複数個が取り付けられています。

 形状は、海の中を一番速く泳ぐカジキマグロにヒントを得たとされており、ツルンとした魚のフォルムを模した「ルアー」(釣り道具の疑似餌)を思わせます。

 エアロスタビライジングフィンは、2011年9月に発売された9代目「カムリ」が、ドアミラーの付け根に装着したのが最初で、現在は多くのトヨタ車で採用されています。

 もともとモータースポーツ最高峰の自動車レース「F1」マシン向けの空力パーツとして開発されたものでした。航空機にも同様のフィンがウイングやフラップ、胴体の尻部などに付いています。

 ちなみに「エアロスタビライジングフィン」はトヨタの商標であり、一般的には「ボルテックスジェネレーター」とよばれます。

 空力性能は、燃費や性能を左右する重要な要素です。

 少し難しい話になりますが、空気抵抗は車速の2乗に比例します。時速80キロを超えるような高速走行では、特に空気抵抗の影響が顕著になるため、この空気抵抗を減らすことが、高速燃費や高速性能の向上につながります。

 とはいえ、そのエアロスタビライジングフィンの効果については、運転条件やクルマの種類等によって効果が異なりますが、高速走行であっても燃費向上効果は1%に満たない程度だといいます。

 燃費が20km/Lならば、20.2km/Lに改善する、ということです。

 たった1%と思うかもしれませんが、燃費を1%向上させるため、各メーカーは必死に地道な開発研究の積み重ねをしています。

 たとえ小さな効果であっても「チリも積もれば」という精神で、トヨタはコンパクトカーやミニバンからスポーツカー、高級車に至るまで、積極的に採用しているのです。

 トヨタのエアロスタビライジングフィンは、テールランプのボディサイド側やサイドミラーといった樹脂部品の一部として成形されています。

 なおカーショップでも同様のフィンが「エアロフィン」という名称で販売されています。

 これら後付けのフィンについても、説明書に従って取り付ければ、ある程度の効果は出せるかもしれませんが、車種によって形状や取り付け場所は異なり、また下手をするとむしろ抵抗になり、マイナスの効果を引き起こす可能性もあります。

 後付けの効果は限定的だと考えたほうがよいでしょう。

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 エアロスタビライジングフィンの採用によって、燃費の改善のほか、走行安定性の向上、風切り音の軽減なども期待できるとトヨタでは説明しています。

 非常に小さい部品ながらも、地道に効果が得られるエアロスタビライジングフィンは、極めて実用的な燃費向上アイテムのひとつなのです。