クルマの運転で活用する人も多い「エンジンブレーキ」ですが、過去にSNSでは「うざい」と思う人もいるという内容が話題を集めていました。一体どういうことなのでしょうか。

エンジンブレーキがうざい? 過去にSNSで話題

 クルマの運転で活用する人も多い「エンジンブレーキ」ですが、過去には「うざい」と思う人もいるとする投稿がSNSで話題となりました。
 
 一体どういうことなのでしょうか。

 クルマを減速・停止する方法として「フットブレーキ」を利用するのが一般的です。

 フットブレーキは、車輪とともに回転するディスク(ドラム)にパッド(シュー)が押し付けられることで発生する摩擦で、クルマが減速、停止する仕組みです。

 一方でエンジンブレーキは、エンジンが回転することで発生している抵抗を用いる減速方法で、アクセルペダルを離したり、低いギアに落としたりすることで減速できます。

 強いエンジンブレーキを使う時は、MT車では1・2段低いギアにシフトダウンをします。例えば「5速」で走行中であれば「4速」や「3速」などに落とします。

 AT車でも「D」ポジションから「2」「L」「S」などポジションを落とすことで、強いエンジンブレーキが発生します。

 こうしたエンジンブレーキを活用したクルマの減速方法について、過去にSNSでは「エンジンブレーキをうざいと思う人がいる」「迷惑運転だ」といった意見があがっていたことが話題となっていました。

 一体なぜ、エンジンブレーキが煩わしいと感じてしまうのでしょうか。

 というのも、クルマが減速や停止状態にあることを後続車に知らせるブレーキランプは、ほとんどの場合ブレーキペダルを踏んだ際にスイッチが押されることで点灯するようになっています。

 一方、エンジンブレーキはブレーキペダルを踏まないためにブレーキランプが光らず、後続車にとっては合図なしで減速し、急に車間が近づくために煩わしいと思う人がいるようなのです。

 この話題について当時SNSでは、「エンブレがうざいって意味わからん」「それだけ前を見てないって事だよな」「眼の前でピカピカとブレーキランプを光らせるより良いと思う」など、多くの賛否が集まっていました。

 なかでも、エンジンブレーキ使用の有無について述べる意見が多数見られましたが、そもそも運転時に“あること”に気をつけていれば前方車に対して不快に感じることは少なくなるといいます。

エンブレは悪ではない! ではどう気をつける?

 これについて、指定自動車教習所の指導歴18年の現役教習指導員であるA氏に話を聞きました。

 運転時に気をつけたいことについて、A氏は以下のように説明します。

「クルマによってエンジンブレーキが強く働くものもあるため、ブレーキランプが点かずに減速するようなクルマの後ろを走るときは、いつも以上に車間距離を取ることが大切です。

 前のクルマと少しでも車間距離が短くなったと思ったら、早めにブレーキをかけて減速することが自車の追突事故防止だけでなく、後続車からの追突事故防止にもなります」

 減速する際、フットブレーキを用いるほうがブレーキランプを点灯させられるため、後続車には気づかれやすいと考えられますが、そもそも車間距離を十分に取っていれば煩わしいと感じることは通常はないでしょう。

 この問題は、改めて車間距離の大切さを考えさせられるものともいえます。

 その一方で、エンジンブレーキを積極的に活用したほうが良い場面もあります。

「急な下り坂や長い下り坂を走行するときは、フェード現象やヴェーパーロック現象などを防ぐためエンジンブレーキを活用することが大切です」(A氏)

 フェード現象とヴェーパーロック現象はいずれも異なるものですが、どちらともフットブレーキを使用し続けたことでブレーキが発熱してしまい、ブレーキが効きにくくなるものです。

 こうしたトラブルを避けるためには、エンジンブレーキも活用したほうがよく、時と場合によってフットブレーキとエンジンブレーキを上手に使い分けていく必要があるのです。

※ ※ ※

 そもそもエンジンブレーキで減速する行為について、迷惑運転とみなされる可能性はあるのでしょうか。これについてA氏に見解を求めたところ、以下のように説明します。

「後続車に対して、意図的に強いエンジンブレーキをかけて急に減速し、追突させようとする運転は、安全運転義務違反等の違反になる可能性があります。

 減速するときや停止するときは、ブレーキランプを点灯させることが追突事故防止に効果があります」

 自分自身が「適切に利用できている」と思っていても、周囲にとっては“迷惑”と感じさせることも少なくありません。

 このことから、A氏は過度にエンジンブレーキを用いて減速する行為について、違反になる可能性もゼロではないと指摘します。

 周囲に「うざい」と感じさせないように、今一度自身の運転を振り返りつつ、状況に応じた方法で思いやりと余裕を持った運転を心がけることが大切です。