2026年から27年にかけて三菱「パジェロ」が日本で復活することが分かりました。タイで発表された新型「パジェロスポーツ」とは関係あるのでしょうか。

三菱「パジェロ」復活!? 新型「パジェロスポーツ」とは違うの?

 2019年に日本での販売を終了して以来、もはや伝説の名前となっていた三菱「パジェロ」。
 
 一部の報道によれば、2026年から27年にかけてタイから輸入するカタチで日本市場に復活すると言います。
 
 一方で2024年3月18日にタイで新型「パジェロスポーツ」が発表されましたが、このモデルと関係はあるのでしょうか。

 パジェロは80年代に興った「四駆ブーム」の仕掛け人とも言われるクルマで、1982年に初代が登場しました。

 70年代までの四輪駆動車と言えば、同社がライセンス生産していた「ジープ」に代表される実用車。

 しかし働くクルマが必要な高度成長期が終わり、“クルマは一家一台”が定番になったこともあって、日常的に乗れるヨンクが市場から求められるようになっていました。

 三菱は当初、ジープにドレスアップを施したコンセプトカー「ジープパジェロ」にその名前を冠しましたが、ライセンス生産のジープをベースにすると、海外輸出が自由にできません。

 それに見た目はジープですから、目新しさにも欠けており、結局発売には至りませんでした。

 そこで三菱は、当時国内外で販売が伸びていたピックアップトラック「フォルテ」をベースに、新世代の四輪駆動車を開発。これがパジェロとなります。

 デビュー当時は4ナンバーバンとキャンバンストップ(共にショート)のみのラインナップでしたが、後にリアシートの居住性を考慮した5ナンバーのショートワゴン、ハイルーフロングワゴンを追加。このボディバリエーションで人気に火が付き、四駆ブームに火を付けることになったのです。

 1991年には2代目が登場し、このモデルが新型「トライトン」のメカニズムのベースにもなっている『スーパーセレクト4WD』を採用。

 フルタイム4WDモードを持ち、乾燥路面でもタイトコーナーブレーキ現象の影響を受けないことは、当時のパートタイム4WD車では画期的でした。

 またスポーツグレード「Jトップ」は、電動キャンバストップを採用した上に、国産クロカン4WDでは初の3LV6ガソリンエンジンを搭載。大きな話題を呼びました。

 バブル期は「パリダカールラリー(現ダカールラリー)」の注目度が高く、そこで故篠塚健次郎氏や増岡浩氏が大活躍したことで、さらにパジェロの売り上げに貢献。
 
 パジェロは、「ギャラン」や「ランサー」「デリカ」と共に三菱王国の礎となった車種だけに、パジェロの国内復活は同社社員の念願となっていました。

「アウトランダーPHEV」が3代目にスイッチした時、同モデルの開発陣がパジェロ復活への意気込みを熱く語っていたのを思い出します。

 では、新型パジェロはどんなクルマになるのでしょうか。

 各報道によると、トライトンのシャシ構造がベースになるといいます。

 このことから頭に浮かぶのが、前述の新型「パジェロスポーツ(2024年モデル)」です。

 このモデルは先代トライトンとメカニズムの多くを共用しており、兄弟車といっても過言ではありません。

 新型パジェロスポーツとトライトンとの構造上の大きな違いは、リアサスを3リンク式ダブルウイッシュボーンに変えただけ。

 エンジンは今回の2024年モデルで一新され、2.4リッターディーゼルを搭載。トランスミッションは6速AT、駆動システムには「スーパセレクト4WD II」を使っています(FR仕様もあり)。リアデフロックも標準装備となっています。

 ただし、トライトンで話題になった「AYC(アクティブヨーコントール)」の採用はなく、代わりに「ASTC(アクティブスタビリティ&トラクションコントロール)」が装備されています。

 しかし、これが日本で発売される「パジェロ」なのかというと、少々疑問が残ります。

 第一に、今回発表された新型トライトンは16年ぶりにラダーフレームを刷新しています。

 しかし、新型パジェロスポーツ(2024年モデル)は2015年にデビューした当初のものをそのまま使っており、エクステリアもフロント周りのフェイスリフトのみで、リア周りはほぼ変わっていません。

 好感が持てるデザインと言え、前時代のSUVテイストであることは否めず、トライトンのそれに比べると明らかにインパクトがありません。

 日本でもまもなくデビューする予定となっている「ランドクルーザー250」と比べてしまうと、ユーザーの反応はイマイチのような気がします。

 スズキ「ジムニー」を見てもわかるように、現代のクロカン4WDのデザイントレンドは「スクエア」であり、80年代のそれに先祖帰りしています。

 加えて、三菱にはアウトランダーPHEVや「エクリプスクロス」をラインナップしているため、SUVをさらに国内投入することにも疑問が生じます。

 やはり現在のトライトンのシャシを使って、完全な新型車として登場するのではないでしょうか。

 筆者の予想では、トライトンのスクエアなフロントデザインを見ていると、パジェロもまた初代に原点回帰したエクステリアになるのではないでしょうか。

 三菱にはダイナミックシールドというデザイン上のプロトコルがありますが、最近登場した「デリカミニ」を見るかぎり、必ずしも“細目”でなければダメという感じでもないようです。

 これは予想というよりは熱望に近いのですが、今こそ初代パジェロのようなクロカン4WDが復活すれば、飛びつくユーザーが多いのではないでしょうか。

 予想が難しいのは搭載パワーユニットです。

 トライトンは2.4リッターディーゼルエンジンを搭載していますが、2024年1月5日からディーゼルを含む全てのエンジンでの排出ガス規制値が強化されました。

 これは継続生産車であれば2028年10月1日まで猶予されますが、新型車の場合は2024年10月1日から適合されます。

 つまり、パジェロがディーゼルエンジンを搭載するには、相当厳しいハードルを越える必要があるのです。

 また2.4リッターの排気量も少々物足りない部分であり、やはりアウトランダーと同じモーター+2.4リッターガソリンエンジンのPHEVシステムを採用するのが、もっとも現実的と言えそうです。

 サスペンションですが、筆者的には前後ダブルウイッシュボーン式で、リアはマルチリンクにするのではないかと思います。

 トライトンのリーフリジッド式の完成度が高いため、これを流用してもいいと思いますが、やはりパジェロの商品性を考えれば、初代パジェロにメカニズムを先祖返りさせるわけにはいかないのではないでしょうか。

 パワートレーンはドライブモード付きの「スーパーセレクト4WD II」、さらなる悪路走破性を実現するリアデフロックもトライトン同様に標準装備になるでしょう。

 加えて、安定したコーナリングをサポートするASTCとAYCも、トライトンからのスライドとなると思われます。

 すでに、新型パジェロを完成させる技術的なものは揃っていると言っても過言はなく、あとはクロカン4WDが好調なこのタイミングをいかに外さないで再販させるかでしょう。

 ランドクルーザー250、そして「ランドクルーザーFJ」のデビューが近づいている今こそ、三菱ファンは一日も早いパジェロ復活を望んでいると思います。