高速道路でしばしば発生する「合流渋滞」も、スムーズな合流さえできれば解消も可能だといいます。解決方法となる「ファスナー合流」の利点と、普及が進まない理由について紹介します。

「ファスナー合流」の効果は実験で実証済み

 高速道路のインターチェンジで本線へ合流するポイントで、しばしば発生する「合流渋滞」。加速車線が長く設けられていても、いち早く合流するクルマもいて、そうしたクルマを追い越して、その先で合流しようとするクルマもあり、そんな混とんとした状況がまた混乱に輪をかけていたりします。
 
 合流しようとしているクルマを追い越して、その先でサクッと合流するのは「ズルい」と思いがちですが、実は、合流ポイントの手前で直ちに合流するのも、正しい合流方法とはいえないのです。

 高速道路などの合流車線では、クルマの前後・左右の動きに対しひときわ神経を使うせいもあってか、速やかに合流を済ませてしまいたいという心理が働きます。

 特に本線が渋滞しているときは、できるだけ早く本線側に入りたいところでしょう。

 また近年は、渋滞対策として合流車線が延長され、1キロ以上走行してからその先でようやく合流するケースが増えています。

 本線のクルマが渋滞で停滞しているなか、合流しようと停滞しているクルマを追い越して、その先で合流するクルマがあるなど、さまざまな場所で合流が行われることがあります。

 その結果、本線側のクルマがブレーキを踏む回数が必然的に多くなるため、さらなる渋滞悪化(もしくは渋滞を引き起こす)の原因になってしまいます。

 こうした混乱を防ぐため、提唱されているのが「ファスナー(ジッパー)合流」です。

 合流をしようとするクルマは加速車線の一番奥まで進んでから、そのポイントでジッパーの留め金をひとつひとつ合わせていくように、左右で一台ずつ順番に合流していく方法を指します。

 規則的な流れを生み出すことで、本線の流れの停滞を防ぐことが可能だという理論に基づいたものです。

 その効果は実証済みです。

 NEXCO中日本が2019年に行った実証実験によると、合流する箇所にラバーポールを設置し、手前から物理的に合流できなくしたうえで、ファスナー合流を促したことで、交通量はほぼ同じなのに、渋滞による損失時間が約3割も減少したといいます。

 渋滞区間の平均通過時間も、それまで約13分かかっていたのが、約3分も短縮したそうです。

「理屈はわかるけど…」普及が進まない「心理的な壁」とは

 このように、渋滞緩和に確かな効果が期待できるファスナー合流ですが、しかし実際にこれをやるのはなかなか難しいのも事実です。

 先行車が手前で合流するために停滞しているなか、それを追い越して加速車線の先頭まで行くことに対し、まずはばかれます。

 前述の通り、近年伸ばされるケースが多い合流車線をすいすいと進み、はるか先で合流することに抵抗がある人も少なくないでしょう。

 慢性的な渋滞の解消に向け、各高速道路会社では「高速道路を走る際のマナー」のなかで、ファスナー合流を推し進めています。

 しかしこうした「ズルをしている」「追い越して申し訳ない」といった心理が働くためか、さほど浸透していないのも現状なのです。

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 移動時間の短縮のみならず、トラブルや事故の低減、さらには疲労軽減やCO2削減効果まで期待できるジッパー合流。

 今後少しずつ認知されていくことで、いつしか「当たり前の運転マナー」として定着していくことが望まれます。