高知県宿毛市で震度6弱を観測した地震から17日で1か月です。南海トラフ地震に備えるために私たちは何を教訓とし、これからどうするべきなのか。宿毛市の人々の1か月から、見つめなおします。

4月17日の午後11時14分ごろ豊後水道を震源とする地震が発生。県内では宿毛市で震度6弱の揺れを観測しました。死者や住宅の全壊はありませんでしたが、多くの住宅で屋根瓦が落ちるなどの被害が出ました。

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地震発生からおよそ一か月経った今も、市内には屋根にビニールシートをかけたままの建物がいくつも見られます。中にはいつ修理が終わるのかめどが立っていない建物も多くあるということです。

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(竹村総平 記者)
「宿毛市中心部にある津波避難タワーの屋上に来ています。眼下にはこれまでと変わらない日常風景が広がっているように見えます。しかし一方で南海トラフ地震が来ればこのようなものではないといった不安や危機意識を多くの市民が持つようになったことも事実です」

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(宿毛市民)
「今まで他人事だった。やっぱり日ごろの備えをしないと、どこで来るかいつ来るかわからないので」
「やっぱりああいう地震は初めてでしょ。だからなんかすごく不安ですよね。またひょっとしたら明日来るか、今晩来るかっていうのがまだ消えていません」
「これから備えというか、水ですとか食べ物は準備しておかないといかんということで最近水は準備しました」

地域の防災力を高めようと長年取り組んできた濵田頼之(はまだ・よりゆき)さんです。宿毛市自主防災会連絡協議会の会長を務める濵田さん、この1か月様々な人から話を聞く中で、「市民の防災意識は間違いなく高まった」と感じています。

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(宿毛市自主防災会連絡協議会 濵田頼之 会長)
「やっぱり不安でね。特に一人暮らしのお年寄りなんかやはり危ないしどうしようかという声が多く聞こえたということで、南海トラフ地震が起きたらこんなもんじゃないよということで震度6でさえこうなのだからというのを感じてくれる人がすごく多くなったと思います」

一方で、自宅が無事だったり、あまり揺れなかったりした地域の人の中には「もう大丈夫」と感じている人もいるといいます。

「いつ、どこで起きるか分からない」ということに改めて気づかされた1か月前の地震。濵田さんは今後の南海トラフ地震対策の中で「住宅の耐震化」に力を入れていく必要があると考えています。

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(宿毛市自主防災会連絡協議会 濵田頼之 会長)
「どこに来るかわからないということは私もつくづく感じたので、それをこれからいろいろな地域にお話して、皆が安心して生活できるよう、耐震を特にやってもらいたいと思っている」

宿毛市では今年度から住宅耐震工事の補助を最大で132万円まで拡充しています。地震発生以降耐震化の相談はさらに増えたということです。

宿毛市小筑紫町の栄喜地区では5月9日の早朝、余震の影響とみられる土砂崩れで地区の道路が一時寸断されました。

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(栄喜地区 濱田省三 地区長)
「(余震で)地震があったんですよね、震度3くらいのその影響ではないかと思っている」

栄喜地区の地区長を務める濱田省三(はまだ・しょうぞう)さん。地域を回る中で多くの人が、意識の変化や悩みを濱田さんに打ち明けました。

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「(地震後)靴と懐中電灯は枕元におきました。あの時はすごかったからまた起きたら怖いと思って」
「(被災の届出を)出していない所もあるしね」
「(被害が)小さいのはもう出さんとこうかという人が多いと思う」

濱田さん自身の防災への意識もまた、1か月前の地震を機に高まりました。

(栄喜地区 濱田省三 地区長)
「私たちも防災を、食料を確保しないかんと思ってね」

揺れへの備え以外に改めて考えたのが、今回も一時的に起きた、道路の寸断。地区長だからこそ知っている地理的な特徴も踏まえ、「地区全体で」災害を生き抜いていく必要性がありました。

(栄喜地区 濱田省三 地区長)
「特に私たちの集落は土砂が滑りやすい状態。大きな地震が起きたら(道路が)寸断されると思うのでそのための食料とかを確保しないかんなと」

さらに、高齢化が進む地区を津波が襲ったら…携帯電話が繋がらなくなったら…防災について考えれば考えるほど備えておくべきことがいくつもあることに気づかされます。

(栄喜地区 濱田省三 地区長)
「一番思うのは高齢化もあるし、隣近所が離れているから、なかなか地震がいつ来るか分らない状態なので、とにかく地区を皆さんと協力して守っていかないかんな」

地域を1つにして守っていく。それが、この1か月地域を回ってきた濱田さんの決意です。

震度6弱という、高知県として初めて経験した揺れでしたが、被害は最小限にとどまった今回の地震。だからこそ、必ず来るとされる南海トラフ地震の対策に生かしていかなくてはいけない。宿毛市はそう考えています。

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(宿毛市危機管理課 有田巧史 課長)
「今回においてもまだまだ余震も続いていますので、なお引き続きしっかりとし気を引き締めていかなきゃならない。一方で課題も新たにあるでしょうから、整理と分析もしっかりしていきたいなというところで、その中でしっかりと対策について住民の方々と共にしっかりとした計画をつくり上げていきたい」

震度6弱から1か月。宿毛市民が抱えている不安と課題は、県内全体に共通するものです。求められているのは、何を教訓にして、「これからどうしていくか」。いま、私たち県民全員が問われています。