「AA」という略語で思い浮かべるもの

 2024年現在、「AA」というアルファベットの略語を見て真っ先に浮かぶ言葉は何でしょうか。現代を代表するSNSの一つX(旧ツイッター)で見掛けるものでは、SDGsの理念にもつながるアファーマティブ・アクション(格差是正)などでしょうか。……しかし今から20年前の2000年代、AAといえば圧倒的に「アスキーアート」を意味していました。

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 アスキーアート(ASCII art)とは、パソコン入力による点や線、アルファベットや記号などを用いてイラスト・絵を表現する技法。言葉だけでは表現しきれない思いを伝えるため、喜怒哀楽などの表情を表すものが多く生まれたのも特徴です。

( ´∀`)や(´・ω・`)、(゚Д゚)など1行・数文字で表現されるものから、数行・数十行に及ぶ“大作”まで、数え切れないほどのアスキーアートが誕生しました。

 AA文化の醸成を支えたのは、当時、インターネット文化の発達に大きな影響を与えた匿名掲示板「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」です。ユーザーたちは基本的に匿名で書き込むため、AAのほとんどは“詠み人知らず”。汎用(はんよう)性が高く絵柄としてキャッチーなAAは、瞬く間に普及し長らく愛され続ける作品として定着していきました。

絵文字に統一規格が導入されるなど、IT技術の進歩に伴いAAは表舞台から姿を消していった……

平成のムードを今に伝える「作品群」

 言うまでもなく、当時はLINEもなく(つまりLINEスタンプなどは存在せず)、携帯電話各社の絵文字のUnicode統一規格も定められていませんでした。それによりオンライン上でのコミュニケーション・ツールとして発展したAAは、当時のネットユーザーたちの創意工夫を物語っていると言えます。

 また、携帯電話ではなくパソコンでのやり取りが主流だった時代背景なども、1行当たり数十文字が何十行と並ぶ大作AAから垣間見ることができます。

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 2024年現在、先述した絵文字やスタンプなどがオンライン・コミュニケーションを彩っており、数十文字×数十行の大型AAはスマートフォン中心のやり取りにおいて視認性が担保されなくなるなど、その存在感は極めて薄いものになっています。

 ワードの注目度の変遷が分かる「Googleトレンド」では、「アスキーアート」という言葉は20年前の10分の1以下の注目度を低空飛行しており、Xなどでは「インターネット老人会」を自称する歴戦のネットユーザーらが酒のさかなの回顧トークとして時折話題に出す程度です。

 しかしAAの絵柄は今見てもどこか愛らしく、また限られた手段で思いを伝え合い、掲示板を盛り上げようと腐心した先人たちのほとばしる情熱を感じさせる現代遺産的存在。

 令和の今、SNSであえてAAを貼ってみたら、「懐かしい!」や「平成レトロだね」、「逆にエモい」など新鮮な反応を得られるかもしれません。

(LASISA編集部)