がんばって服を処分しても、すぐにリバウンド。溢れるクローゼットから捨てる服を選ぶのは至難の業。1000着から6年かけて21着までに減らしたという、ファッションエディターの昼田祥子さんに、「服捨て」を成功に導くための心得を教えていただきます。

教えてくれた
昼田祥子さん profile

ファッションエディター昼田祥子さん
ファッションエディター歴21年。2016年に大規模な服捨てに着手し、1000枚近くあった服を21枚まで減らす。その体験をWEBマガジン「mi-mollet(ミモレ)」の連載で綴ったところ大反響を呼ぶ。

昼田さん流“服捨て”の5つの極意

#01 思い込みを捨てる

ファッションエディター昼田祥子さんのクローゼット整理と服捨てのコツ

ワードローブを本音で選んでいくうちに、たくさんの思い込みがあることに気づきました。「おしゃれでなければ」「バリエーションを持たせなければ」という考えは、意識が“外”に向いているから。意識を自分の内側に向け、思い込みを捨てることで、不必要な服を手放せます。

昼田さんが服捨てで捨てたもの

❶「こうでなければ」という思い込み
「大人は靴やバッグはいいものを選ぶ」などのおしゃれルールに縛られずに、自分が心地よい、しっくりくるという感覚を大切に。

❷他者からの評価に一喜一憂すること
おしゃれかどうかは見る人の視点によって変わるもの。大切なのは他人からの評価より、自分の価値観で選び、その服に満足することです。

❸過去への執着
ご褒美で買った服や思い出が詰まった服も、その服自体に意味はありません。もう着ない服ならば縁は切れていると思って早めに手放して。

❹なくなることへの不安と恐れ
手放したときに何が起こるかを書き出して客観視してみると、案外どうでもいいことが多いもの。不安も恐れも、勝手に描いている幻想です。

#02 自分を全肯定する

ファッションエディター昼田祥子さん
クセ毛を活かした髪型がきっかけで自己肯定できるように

ヘアサロン「コクーン」との出合いによって、自分という存在の捉え方が激変。クセ毛で剛毛、大嫌いだった自分の髪を「いいクセ毛」ですねと褒めてもらい、クセやうねりを活かしたスタイルに衝撃を受けました。それまでは自分に対して何か足りないと感じていて、その足りない部分を服で補おうとしていましたが、その必要はないと自分を全肯定できるように。これを機に、いっそう服捨てが進みました。

#03 自分の“心地いい”に従う

私のワードローブの基準は「自分が心地いいかどうか」。まず、クローゼットから選んだ服を一日着たときに感じた「心地いい」「不快」などの感情をていねいに拾ってみましょう。私は毎朝コーディネートを考えるのが大好きだと思っていたのですが、自分の本音と向き合ううちに、それが大きなストレスになっていることに気づきました。本音と照らし合わせると、必要な服が見えてきます。

昼田さんの心地いい状態
・コーディネートをできるだけ考えない
・おしゃれは時々でいい
・いつも同じ印象でいい

#04 がんばらないとできないことはやらない

ファッションエディター昼田祥子さんのクローゼット
年間を通して服はこれだけ!

面倒くさがりなので、実は整理整頓が苦手。そこで収納術に悩むほどモノを持たないよう決めました。服はラックにかけるだけ、バッグはひとつ、帽子もないので棚はスカスカです。
服捨てを機に、仕事にも変化が。以前は人に自分の弱さを見せられなかったのですが、今は苦手なことを開示して、手放せるように。余計なエネルギーを消耗せず、得意なことに集中できるようになりました。

ファッションエディター昼田祥子さんの愛用ハンガー「NAKATA HANGER」
服を輝かせるこだわりのハンガー
愛用しているハンガーは「NAKATA HANGER」のもの。人間の肩のラインを再現したカーブが特徴で、かけるだけで服が輝いて見えるところがお気に入りです。

#05 捨てたら絶対新しいことが入ってくる

ファッションエディター昼田祥子さんのクローゼット整理と服捨てのコツ

服捨てをきっかけに、自分の本音と向き合ったら、さまざまな変化が。以前は波風を立てないことを重視していましたが、「いい人」であることを捨てたら、長年悩まされていた扁桃炎から解放されました。義理の両親が住む山形への移住も、自分の本音に向き合って叶えたことのひとつ。
東京の暮らしを捨てたら、新しいクローゼットの出合いにより、のちに書籍化される連載へとつながりました。呼吸と一緒で、何かを得ようと必死になるより、ただ吐いていれば新しいことが飛び込んでくるはずです。

photograph:Ai Tomatsu styling:Kyoko Toyoshima [prop] text:Naomi Morimoto cooperation:AWABEES
リンネル2024年3月号より
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