平安時代の長編小説『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を、吉高由里子主演で描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。4月7日放送の第14回「星落ちてなお」では、理想に燃えるまひろが厳しい現実に直面する一方、ファーストサマーウイカが演じるききょう(清少納言)のすがすがしいほどの直球キャラに、喝采の声が数多く上がった(以下、ネタバレあり)。

■ 第14回「星落ちてなお」あらすじ

農家の娘・たね(竹澤咲子)に文字を教える日々を送るまひろは、高階貴子(板谷由夏)から、彼女の息子・藤原伊周(三浦翔平)の婿入り先を選ぶための和歌の会に招かれる。そこで同じく、会に興を添えるために呼ばれたききょう(ファーストサマーウイカ)と再会。後日まひろの元を訪れたききょうは、会に出ていた姫君たちを「志も持たず、己も磨かない」とこき下ろし、まひろにも同意を求める。

さらにききょうは、夫も息子も捨てて、宮中に女房として出仕すると宣言。「己のために生きることが、ほかの人の役にも立つような道を見つけたい」と語るききょうの強さに、まひろは圧倒される。その翌日から、文字を習いに来なくなったたねを訪ねたまひろは、たねの父・たつじ(平田理)に「一生畑を耕して死ぬ子に文字なんかいらねえ。俺ら、あんたらお偉方の慰み者じゃねえ!」と罵倒され、まひろは言葉を失ってしまう・・・。

■ 平安時代の庶民、識字率はほぼゼロ

常人には理解できないような大きな志を持っている人ほど、周囲の人々に理解されずに空回りをするという時期を、必ず経験するもの。自分の教養を生かして「庶民の識字率を上げる」という高い理想を掲げ、さっそく先週から実行に移したまひろだったが、わずか1週間後となる第14回で、そうそうに挫折する姿を、私たちは目にすることになってしまった。

文字を教えていた少女の父から、自分のやってることを全否定されてしまったまひろ。一見するとひどい父親だが、時は庶民の識字率がほぼゼロに等しかったと言われる平安時代。周囲の人にとって、まひろがやろうとしていることは・・・割とひどい例えをすると、動物に人間の言葉を教えようとするのに近い行為に見えたのだろう。進歩的な考えのききょうすら、若干引いていたのはそういうことなのだ。

この大きな壁にはばまれたまひろに対して、SNSでは「慰み者・・・受け取り方の違いでそうなるのか」「まひろの志は尊いけど、貴族の道楽だと民には思われちゃうよね」などの、ドンマイ的な声が多かった一方、「たねちゃんひとりが文字を覚えても、あの仲間の中ではただの異質となってしまう。それはたぶん、のちに彼女を苦しめるから、父母はあんなに怒ったんだろうな」と、たつじの心境を推し量るようなコメントもあった。

■ キャスティングに絶賛、清少納言ウイカ

そんなわけで、ちょっと重苦しい雰囲気となった14回だったが、その暗さを思い切り打ち消す大活躍を見せてくれたのが、我らがききょう姐さん、のちの清少納言だ。まひろちゃんが、自分と同じぐらい教養がありそうで、世の女性の生き方に疑問を持っていそうな女の子だと、すかさずロックオン。その足で、周囲の女性たちの無関心ぶりを愚痴り、家族を捨ててまで社会に出ていく希望をマシンガンのように語る様は、まさに『枕草子』で世の理不尽をぶった切った清少納言先生そのものである。

SNSでも、「ききょうが相変わらずキレキレで何より(もっと見たい)」「この清少納言パイセンがイメージ通りすぎて気持ちがいい」「これ『枕草子』で読んだ!めっちゃ同じこと言ってる(喜)」「国会議員が『離婚しづらい社会は健全』って言ったその週に『自分の望みのために夫と子どもを捨てるぜ!』と宣言する清少納言、実に清少納言」と、歓喜のような言葉が続々と。

そして演じるファーストサマーウイカには、「清少納言ウイカ似合いすぎ大拍手」「キャストと人物のどちらに当て書きしたかすらわからない圧倒的な存在の強さ・・・(好き)」「毒舌、酷評、怖いもの知らず。もう清少納言はファーストサマー納言しか思い浮かばなくなってしまう」「キャスティングした人には金一封送りたい」という絶賛が、今週も数多く寄せられた。

『枕草子』を読むと、清少納言は確かに正論ド直球&自意識高めではあるんだけど、同時に茶目っ気とユーモアもあって、それゆえに永遠のベストセラーエッセイとなっている。その「正論」「自意識」「ユーモア」を、バランスよく兼ね備えたウイカのキャラだからこそ、将来『枕草子』を書きそう=清少納言そのもの! と受け止められているのだろう。来週はいよいよ、主人であり「推し」となる定子(高畑充希)とのご対面。人が恋に落ちる瞬間の最高の表情を、我々は目撃することができそうだ。

『光る君へ』はNHK総合で日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。4月14日放送の第15回『おごれる者たち』では、藤原道長(柄本佑)の兄・道隆(井浦新)の独裁政治が加速していく様と、まひろが友人・さわ(野村麻純)と石山寺詣に行くところが描かれる。

文/吉永美和子