アメリカのTVドラマ『glee/グリー』のシュースター先生で知られる俳優、マシュー・モリソン。彼が出演するブロードウェイミュージカル『シカゴ』の来日公演が、4月18日から「オリックス劇場」(大阪市中央区)で開幕。華やかでセクシーなダンスと、ギリギリのユーモアにあふれた舞台は、ミュージカルファンならずとも必見だ。

◆ 度肝を抜く「フォッシー」のダンスシーン

1975年の初演以来しばしばロングラン上演され、2002年にはレニー・ゼルウィガーらが出演した映画版が大ヒットを記録するなど、ミュージカル界を代表する名作のひとつである『シカゴ』。1920年代のシカゴを舞台に、殺人の罪から逃れようとする女性たちが、悪徳弁護士やメディアの力を借りながら無罪を勝ち取っていく姿を、ヴォードヴィルショーのような独特のスタイルで見せていく。

とにかく度肝を抜かれるのは、伝説の振付家ボブ・フォッシーが手がけた、なんとも官能的な「フォッシー・スタイル」と呼ばれる振付だ。しなやかな腕の動きと、ギョッとするほど大胆な足さばきは、見ているだけでほれぼれする。しかも今回のキャストは、マシュー以外は長年この作品を演じてきた百戦錬磨の俳優ぞろいなので、そのダイナミックさが一味違う。

◆ 「字幕」と併せると、新たな解釈も?

そして注目のマシュー・モリソンが演じるのは、女囚たちから法外なギャラを取り、メディアのスターにすることで無罪に持ち込む弁護士、ビリー・フリン。映画版ではリチャード・ギアが悪辣かつ貫禄たっぷりに演じていたが、マシューのフリンはもっとライトでさわやかだ。英語がわからなかったら、ものすごく良いことを言ってそうな雰囲気だけど、字幕を見たらクズ発言の連発。その落差を楽しめるのは、日本語字幕公演ならではかもしれない。

海外のミュージカルということで、尻込みをする人もいるだろうけど、『シカゴ』は前述の通り歌やダンスがわかりやすくハイレベル。内容の方も、関西人なら「おいおい!」とツッコミを入れたくなるような、とんでもない展開がもりだくさん(これが実話ベースというのが恐ろしいところ)。

どう考えても有罪のものを無罪と言い張る厚かましさ、あらゆる犯罪を娯楽に変えては消費していくメディアのいい加減さなど、笑っちゃいつつも「これ、今の日本でもあるよなあ・・・」と、チラリと考えてしまうかも。

◆ 『シカゴ』のマシューが観られるのは、日本だけ

間違いのない名作に、世界的なスターと言える俳優が出演というだけでも貴重なのに、マシューがフリンを演じるのは、実はこの大阪公演が世界初! と聞けば、これはもう行くしかないだろう。このチケット代でトップスターが歌って踊る姿を生で観られる、一生に一度の機会かも?

ブロードウェイミュージカル『シカゴ』大阪公演は4月21日まで上演(生演奏・英語上演・日本語字幕付き)。チケットはS席1万5000円、A席1万円ほか、平日は各1000円引き(現在発売中 ※公演スケジュールは公式サイトにて)。

取材・文・写真/吉永美和子