コロナによる衛生意識の高まりや社会問題となった「迷惑行為」の影響で、回らなくなりつつある寿司チェーン。実際、回転ベルトを使って寿司を回している大手チェーンは「くら寿司」(本社:堺市中区)のみになっており、このままだと回転は消滅してしまうのかと思いきや・・・?

◆ くら寿司史上最長の「回転ベルト」も導入

「くら寿司」は4月24日、2024年度の事業戦略として「回転寿司のリニューアル」を発表。その内容というのが「リアル回帰」をテーマに、より進化した回転寿司を目指すというものだった。2025年に控える『大阪・関西万博』に向けても「回転ベルト」を主軸にした店舗を出店予定だといい、日本のエンタメのひとつとして世界に発信していく計画だ。

また、4月25日に東京・銀座にオープンした「グローバル旗艦店」(訪日外国人をターゲットに、分かりやすく日本の回転寿司文化を具現化した店舗、関西には2店舗)には、同店史上最長となる123メートル超えの回転ベルトを導入。「Sushi go round」(英語で言う回転寿司)を求める観光客に、より強固なアプローチをかけてゆく。

◆ タイパ重視の若者にとっては「すぐに食べられる」

競合相手の大手チェーン「スシロー」や「はま寿司」、「かっぱ寿司」は現在、ベルトでの商品陳列を取りやめ、注文ごとに専用レーンでビューンと運んでいるだけだが、「リアルなお寿司を回すのは必須」との方針を固めた「くら寿司」。その決定の裏には「消費者の声」もあったとい、同社が独自に調査したアンケートによると、52.7%の人が「ベルトにお寿司が流れている回転寿司の店を利用したい」と応え、なかでも20代(特に男性)からは70%以上の期待が寄せられたという。

この結果に担当者は、「回転寿司は今まで食べていなかったお寿司に出合え、リアルに流れてくる楽しさというのはやはりエンタメ性が高い。そして『タイパ』を重視する若年層にとっては、席に座って、すぐに食べられるというのは使いやすさにも繋がる」と分析する。

◆ 増える「迷惑行為」には、どう対応?

また、最近話題に上がる「迷惑行為」に対しては、AIを駆使したカメラシステムで、カバーの不審な開閉を感知し、一連の行為を防止するほか、同社が10年以上かけて開発したという透明のカバー「抗菌寿司カバー鮮度くん」を使って、衛生面も担保する。

「回す」か「回さない」か。どちらが正解とは一概には言えないが、おそらく多くの人にとって「回転寿司」というのは、子ども時代にドキドキの高揚感、夢を与えてくれた場所であったことには間違いない。孫世代から祖父母世代まで、さまざまな世代を繋いでくれる場所が、今後世界にどう影響を与えていくのだろうか? 目が離せなくなりそうだ。