優先すべきは子どもたちの心

発達障害(神経発達症群/神経発達障害群)とは、先天的な脳機能の問題によって社会生活に困難が生じる疾患のことです。かつては「本人の努力が足りない」「家庭環境のせい」「親の躾が悪い」などと言われていましたが、現在は医学的に否定されています。発達障害は先天性のものであり、いわば生まれつきの特性なのです。

それゆえに、発達障害に気づかないまま、あるいは勘違いしたまま子どもに厳しい躾をしたり、過剰な努力を求めたりすれば、改善するどころか症状が悪化し、二次障害)を招く恐れもあります。

発達障害が現れる原因は、いまだ解明されていない部分が多く、残念ながら現代では根本的に治す方法は見つかっていません。しかし、定型発達の子どもに比べるとペースはゆっくりですが、発達障害の子どもの心も発達を続けます。症状の改善ばかりに目を向けがちですが、優先すべきは彼らの心です。

このため、治療は「療育などによる支援」が中心となります。特性に合わせて適切な環境を整えれば、彼らが自らの意思で選択・行動し、あらゆる物事に前向きに取り組みやすくなります。そうして充実した生活を過ごしていくことによって、結果として症状の改善も期待できるようになるのです。

発達障害は特別に強い個性【眠れなくなるほど面白い 図解 臨床心理学】

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 臨床心理学』監修/湯汲英史