地球を守る存在

恐竜の絶滅が天体衝突によるものだったとの学説が1980年に発表されてから、天体衝突が地球への脅威になり得ることがわかってきました。その対策について真剣に討議されはじめていた1994年、木星へのシューメーカー・レヴィ第9彗星の衝突が観測されました。衝突により木星には地球とほぼ同じ大きさである直径1万2000キロメートルのダークスポットと、7500キロメートルのキノコ雲を形成。その爆発力は、地球上の全核兵器を1度に爆発させたエネルギーのおよそ600倍といわれています。この事件を受け、天体の地球衝突に対応する「スペースガード」活動が行われるようになりました。

さらに、近年では、宇宙観測の技術が大きく進歩し、過去には観測することができなかった、地球接近天体(NEO)やポテンシャル・ハザード・アステロイド(PHA)と呼ばれる衝突の危険性がある小惑星が地球のそばをびゅんびゅんと飛んでいるということがわかってきました。PHAはそう簡単には衝突しないと考えられてはいますが、もし衝突したら大変なことになります。そこで2000年ごろから国連のなかでも議論がはじまり、「プラネタリーディフェンス」と銘打たれた活動がはじまりました。プラネタリーディフェンスでは、まずNEOを発見し、観測で軌道を正確に求め、その軌道が地球に衝突するか確認し続けます。これがPHAと判断された場合のための衝突回避方法の研究を行っています。ただ、地球への衝突を回避できない場合には、どうやって被害を最小化するかも重要な検討課題です。

2022年半ばまでに、発見されたPHAは約3万個。そのうち10個の天体には探査機が近づいて観測を行っています。さらに、衝突回避の方法として小惑星の軌道を変更するための実験「アイーダ計画」が行われています。この計画はダート探査機と2024年打ち上げ予定のヘラ探査機の2つのミッションからなります。

そして、2022年9月に米国のダート探査機が地球に近づく小惑星を想定し、その進路を変えるため、時速2万4000キロメートルの速度で飛ぶ探査機を直接小惑星にぶつける実験を行いました。そして小惑星ディディモスの衛星ディモルフォスに探査機を衝突させ、その軌道を変更することに成功しています。ヘラ探査機は、2027年にディモルフォスに到着し、衝突の影響について詳しく調査を行う予定です。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 宇宙の話』