調子が悪い電化製品を「空手チョップ」で直していた昭和は遠くに過ぎ去り、いまやパソコンでもスマホでも、何か不具合が発生したら「とりあえず再起動してみましょう」という時代。そんなわけで日々さまざまな機器を「再起動」させている私たちですが、そもそもなぜ再起動でトラブルが解消するの?と聞かれると、答えに窮してしまうのも事実です。昔のチョップには「斜め45度」のコツがありましたが、現代の「再起動」にも、それに勝るとも劣らない秘密があるのでしょうか?Windows95を設計した日本人として知られるエンジニアの中島聡さんが解説します。(メルマガ『週刊 Life is beautiful』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです

プロフィール:中島聡(なかじま・さとし)
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

「とりま再起動」はエンジニア的にも鉄板

(「私の目に止まった記事」より)
普段から当たり前のようにしていることですが、パソコンに限らず、電気製品は再起動するとトラブルが解消することがあるのは事実です。

● なぜPCでトラブルが発生した際に「再起動」すると解決することが多いのか?

先日も、我が家のスマートTVがWiFiに接続しなくなってしまい、色々と試しても治らないので、一度電源を落として再起動したら解消しました。

記事の中にある通りに、電源を入れたばかりの「初期状態」はソフトウェアが「プログラマーが期待した通りの動き」をしやすい環境にあり、しばらく走らせていると、メモリーリーク(確保したメモリが解放されないバグ)などが生じて、ソフトウェアがちゃんと動かなくなることがあります。

メモリーリークがなくても、メモリのフラグメンテーションというものが起きて、それがソフトウェアの実行に支障をきたすこともあります。

お互いをリセットし合う、飛行機のコンピュータ

ボーイング(飛行機会社)のエンジニアだった知り合いに聞いたのですが、飛行機には同じソフトウェアが乗った3つのコンピュータが搭載されており、多数決でものを決めている上に、時々お互いをリセットし合うように設計されているそうです。

時々「初期状態」に戻すことによって、常に安定して動くことを目指しているのです。この設計思想は、NASAの宇宙船向けのコンピュータから来ているそうです。

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煮詰まったら「18分の昼寝」で人間の脳も再起動!

ちなみに、人間が1日に一回眠る必要があるのも、「再起動」に同様のことをしていると解釈することも可能です。

起きて考え事をしていると、脳の中には老廃物が溜まるため、その老廃物を脳の外に排出するために、一度、眠る必要があるそうです。

瞑想(メディテーション)にも同様の効果があるのかもしれませんが、私は昼食後に18分の昼寝をします(18分は、色々と実験をしてたどり着いた「ちょうど良い長さ」です)。

ソフトウェアを書いていると、時々、問題が解決できなくて、脳が煮えたように感じることがありますが、そんな時は、眠るのが一番です。

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