今年3月5日、総務省は情報漏洩問題が発生したLINEヤフーに対し、行政指導を実施。それを受けて報告された再発防止策ではスピード不足として4月16日にさらなる行政指導を行い、韓国のNAVER社との資本関係の見直しを検討するよう求めました。指導の矛先が民間企業の出資関係にまで向かったのはなぜなのでしょうか。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが、この指導に苦悩するソフトバンク宮川社長の言葉を紹介。そのうえで、資本関係が見直された場合に一番得をするのが誰なのかを考えています。

総務省がLINEヤフーの出資関係見直しを行政指導──ソフトバンクは「願ったり叶ったり」か

2024年5月17日、LINEヤフーの出資関係を巡る問題について、AbemaPrimeに出演してきた。ひろゆき氏などが参加するなか「行政指導で民間に資本関係の変更を迫るのはおかしい」「なぜ、純国産メッセージサービスはないのか」「日韓問題に発展しないのか」といった議論が飛び交っていた。

LINEヤフーの出資問題については、5月9日に開催されたソフトバンクの決算会見でも、質疑応答のメイントピックとなっていたほどだ。宮川潤一社長は「できれば、本日の決算発表まで間に合わせたいと思っていたが、いまだ詰めるところが残っており、これからも継続して議論していく。(総務省への報告タイミングである)7月1日が次のターゲットになるが、私の直感ではそこまでにまとまるのは、非常に難易度が高いのではないか」と、突然、降って沸いてきた出資関係の見直し問題ににっちもさっちもいかず、相当、お困りの様子が窺えた。

打ち合わせの時に「ソフトバンクとしても、どうしたらよいのか困っているのではないか」とディレクターさんに伝えたのだが、AbemaPrimeの議論に参加している真っ只中、ひろゆき氏が「陰謀論」を語り始めたところでハタと気がついた。

この出資関係を巡る問題で一番得をするのは誰なのか。それはなんと言っても、ソフトバンクなのではないか。総務省の言うこと通りにすれば、出資比率が上がり、LINEヤフーを大きくグリップできるようになる。

数年前、NAVERとソフトバンクで「LINEとヤフーを一緒にする」と交渉していた際も、本来であればソフトバンクとしては赤字に苦しむLINEをまるっと抱え込みたかっただろうが、思い入れのあるNAVARが首を立てに振らなかった。結果として、Aホールディングスを50:50で出資することになったが、これまでは上手くいきそうにない。

ソフトバンクとしては、ヤフーやPayPayとの連携を強化していくためには、もっとLINEヤフーへの出資比率を上げ、取り込む必要があると判断したのではないか。

LINEとヤフーが一緒になる際、ヤフー関係者は「うちの会社とあまりにセキュリティに対する考え方が違いすぎて驚いた」と語っていた。このままLINEとヤフーと一緒にするとヤフー側に大きな悪影響が出かねないと、早いうちからLINEのセキュリティ問題について、膿を出したなんて見方もある。

総務省としても、国内9500万人が使うLINEを、自治体が平時の情報発信や災害情報を発信したりさらには区役所の窓口業務の入り口として活用していくには韓国資本は邪魔になる。今回の資本関係の見直しという行政指導はソフトバンクと総務省にとってお互いメリットがある話とも言えなくもない。

宮川社長は「たとえばうちが100%保有となると、ソフトバンクにいろいろと自由な選択ができるし、今後の戦略の中でもいろいろ考えられる。51%対49%ということであれば、ほぼ変わらない」と語る。

あくまでも妄想に過ぎないが、少なくとも総務省による資本関係の見直し要求というのはソフトバンクにとって見れば「願ったり叶ったり」なのではないだろうか。

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