大きな社会問題となって久しい、SNS上で展開される有名人なりすまし投資詐欺。5月に入ってからは大阪府の八尾市議がスマホの乗っ取り詐欺被害に遭っていたことを公表するなど、日本社会に詐欺が蔓延していると言っても過言ではない状況となっています。これらの犯罪について、「旧統一教会の信者らは40年以上前から行っていた」とするのは、かつて自身も同会の信者だったジャーナリストの多田文明さん。多田さんはメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』で今回、その手口について解説するとともに、信教の自由を盾に自らの行いを正当化するかのような旧統一教会の姿勢を強く批判しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:スマホ乗っ取り詐欺 有名人をかたる詐欺 なりすまし手口の源流に霊感商法をみる

スマホ乗っ取り詐欺 有名人をかたる詐欺 なりすまし手口の源流に霊感商法をみる

有名人になりすまして、偽の投資サイトに誘導する。スマホの持ち主になりすまして偽造のマイナンバーカードを使い、携帯ショップでSIMの再発行をしてスマホを乗っ取り、詐欺行為をするなど、何者かに「なりすまして」お金を騙し取るのが、最近の詐欺の傾向です。しかしさかのぼって考えれば、この手法はすでに、旧統一教会の霊感商法で行われていたように思います。その理由は後でお話します。

1.スマホ乗っ取り詐欺は、私たちの身近に起こる可能性も

スマホを使う利用者が頭に入れておかなければならないのが、乗っ取られるかもしれないというリスクです。

もしご自身のスマホが圏外になり続けていると思えば、すぐに携帯ショップに行って、スマホのなかにあるSIMが再発行されていないかを確認してください。それが、単なる故障ではないかもしれないからです。

先月から今月にかけて、大阪の市議のスマホが偽造のマイナンバーカードを使って勝手に機種変更をされて、高級時計を買われたり、キャッスレス決済にオートチャージされていたりと、金銭的被害に遭ったことが報道されています。

その出発点となっているのが、個人情報の流出です。このケースでは市議ということで個人情報を公にしなければならないので仕方のないところですが、私たちも氏名、生年月日、電話番号が詐欺犯側に知られることで、身分証の偽造がなされて、それを使ってのスマホの機種変更がなされる可能性があります。

スマホの中には、銀行口座情報などの重要情報が詰まっていますので、それを使われてしまうと多額の金銭的被害に遭うことになります。昨年も、この手口でネットバンキングから1,000万円ほどが不正送金された事例があります。

● スマートフォン乗っ取り詐欺 不正利用を止めたから安心ではない 被害に遭わないために必要な対応とは?

すでに記事にもしていますが、この被害に遭った時には、スマホの不正使用を止めたからといって安心しないでください。Wi-Fiなどを使って、スマホのあらゆる情報にアクセスできるからです。スマホのなかにある金銭被害につながりそうなメールやサイトなどのパスワードは必ず変えるようにしてください。

2.この時期、カルト思想を持つ団体や悪質マルチ商法の勧誘には気をつける

この時期に気をつけなくてはいけないのは、5月病と言葉もありますが、悩みに付け込む悪質商法です。

特に学生や新入社員などの騙しの知識のない若い世代を狙って声をかけてくる傾向があります。それはカルト思想を持つ団体だけでなく、悪質なマルチ商法も同じです。

私も大学4年生の時に、旧統一教会の布教を隠したバレーボール大会や教義を教え込むビデオセンターに誘われたのが、この時期でした。

「正体を隠して近づく」これが、旧統一教会の手口における肝になります。ネット上におけるステルス信者の存在もそうですが、長年してきたことですので、今後も様々な形でし続けると思います。

「私は統一教会員(食口)です」とはっきりと名乗らずに活動することは、関連団体も同じです。おそらく多くの方が、今回の報道によって、世界平和女性連合、天宙平和連合(UPF)、様々な自治体がかかわったピースロード(自転車イベント)などが教団の関連団体であることを知ったのではないでしょうか?これらの団体は旧統一教会の教祖文鮮明の提唱によりスタートしており、その内部にいるものたちは教団の信者です。

旧統一教会の信者らが常に考えているのは「布教活動」です。

私の信者時代にも、この世(サタン世界)の人々を救う(信者にする)ために、アベル(教団の上司)を通じて「最低、霊の子3人は立てなさい!」と信者獲得への発破をかけられました。

これは教義にもとづいての活動です。つまり、その目的を心に抱く人たちですので、形は教団の関連団体であっても、「タイミングがあれば布教をしよう」ということをまったく頭に入れていないはずがありません。

悩みを持ちがちなこの時期ゆえに、旧統一教会への注意だけでなく、それ以外の様々なカルト団体や悪質マルチ商法からの正体を隠して近づく誘いに注意をする必要があります。

3.「なりすまし」の手口は40年も前から霊感商法でも行われてきた!?

有名人になりすました人物から、偽の投資サイトに誘導させられて億のお金を騙し取られる事例が相次いでいます。

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先にも例をあげたスマホ乗っ取り詐欺も、本人の偽造マイナンバーカードを提示していますが、すべて「なりすまし」から出発しています。

過去に旧統一教会が行っていた霊感商法の手口でも、霊能師や占い師になりすました人物が、霊がみえたり、先祖霊と交信できるフリをして「あなたに救いを求めている」などと言って、高額な壺や印鑑などを売り付けて、多くの被害を出しました。

つまり、すでに40年以上前から、何者かになりすまして相手からお金を取るという行為を、旧統一教会の信者らは行っていたわけです。

もっといえば、有名人をかたる詐欺やスマホ乗っ取り詐欺では、役割分担をしながらお金を騙し取ろうとしており、個人ではなく組織的な犯行といえます。

実は、役割分担をして相手を騙すという組織性も、すでに旧統一教会で行われてきました。

詐欺グループには犯罪の絵図を描く指示役がいます。それは霊感商法でも同じで、「壺を売る」という絵図を描いた幹部がおり、それをマニュアル化して、末端の信者らに「信仰」の名のもとに指示通りに活動させて壺や印鑑などを売りつけていました。

信者らは、アベルという指示役のもとでの手足となる実行役です。

まさに今の組織的詐欺の源流というべきものが、40年以上前から構築されていました。

悔しいことですが、お金を集める術に関しては先見の明があったということになります。彼らは信教の自由を口にしますが、それが保証されているからとって、何をしても許されるわけではありません。そうした団体が公益宗教法人としてあり続けてはならず、文科省が解散命令請求を行うのは至極当然なことだと思います――(この記事はメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』2024年5月14日号の一部抜粋です。続きは初月無料のお試し購読をご登録の上お楽しみください)

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