金正恩が韓国と北朝鮮を同族ではなく「敵対的交戦国関係」と再規定しました。このことについて今回、無料メルマガ『キムチパワー』の著者で韓国在住歴30年を超え教育関係の仕事に従事している日本人著者が、朝鮮日報を参照にして紹介しています。

金正恩、韓国と北朝鮮「同族概念」を否定

国情院の韓基範(ハン・ギボム)前第1次長は18日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が南北を同族ではなく「敵対的交戦国関係」と再規定し、憲法改正を推進することについて「我々が北朝鮮の『敵対的二つの国家論』のフレームに巻き込まれてはならない」と述べた。

韓元次長は「北朝鮮の『二つの国家』攻勢は、韓国を国家として認めるということではなく『同族ではない』という点で傍点が付けられたもの」とし、「同族ではないので核攻撃の対象だと私たち韓国を脅しているのだ」と述べた。国情院1・3次長を務めた韓元次長は、長い間北朝鮮分析官として在職した代表的な北朝鮮専門家だ。

──金正恩が先代の金日成(キム・イルソン)、金正日(キム・ジョンイル)を否定してまで、韓国への敵愾心を高めている。「数十年間『わが民族・同胞』と言って『祖国統一』を語っていながら一夜にして先代から続けてきた方針を覆すとなると逆作用が発生する可能性が高い。

住民たちは「首領様たちがこれまで同胞と言っていたが…」とひそひそ話をはじめることになるだろう。金正恩が「同族」「統一」の概念を消すように言ったのは、それだけ北朝鮮内部の住民の間に、豊かな韓国に向けた憧れや韓国と統一されることを期待する心理が広がったという証拠かもしれない」

──韓国国内でも「これを機に南北が違う国家で過ごそう」という「二つの国家論」に同意する主張が出ている。

「二つの国家論を認めることになれば、北朝鮮住民を韓国国民として保護することは難しくなる。北朝鮮住民も憲法上、韓国国民であるため包容できているのだが、北朝鮮を他の国家と見なすことになれば憲法も変えなければならず、領土問題や脱北民の受け入れも複雑になる。我々を揺さぶろうとする北朝鮮の誘導戦術に絶対に巻き込まれてはならない」

──政府はどう対応すべきか。

「かつて西ドイツが(2国家・2民族を主張した)東ドイツに対して同じ民族・包容の対象という立場を一貫して維持したように、韓国政府も「二つの国家論」に慎重に対応しなければならない」

──「大韓民国完全焦土化」など、対南脅威の水位が高すぎる。

金正恩、いったいどうしたんだろうか。「金正恩は政権初期から好戦性を誇示することで軍事的リーダーシップを浮き彫りにするために南北関係を内部政治に活用してきた。

核・ミサイル高度化の長期化による内部不満を外部に回し、米国と韓国の対北朝鮮政策転換を圧迫するための意図と見られる。

2017年の核・ミサイル高度化の疾走で米国の対北朝鮮軍事的オプション検討など対外圧迫が激しくなると、2018年に南北関係を「大転換」すると出てきたが、2019年の米朝核交渉が「ハノイ・ノーディール」に帰結し計画に支障が生じると、今回は「韓国領土平定大事変」を持ち出してきた。

ハノイ交渉が失敗に終わったことは金正恩にとって想像以上の失望と怒りを抱かせる結果となっているようだ。文在寅に対してクソミソに言っているのをみてもそれが窺える。文在寅があのとき金正恩に「トランプとの交渉で制裁撤回ができるよ」と蜜のような意見を言っておいてそれが見事外れと出てしまったわけだから。

2019年、ハノイでトランプと会うためにどれだけの金を使い労を使い希望に燃えて汽車旅でやってきたのに交渉決裂。その瞬間の金正恩の絶望・怒り・落胆に満ちた表情を覚えておられる方々も多いと思う。大事な大事な任天堂スイッチがドブに落ちた幼子のような情けない表情をしていたものだ。

──ところで、なぜよりによって今なのか。

「金正恩のリーダーシップに最も重要な北朝鮮内部の政治行事は、2026年1月の第9回党大会だ。党大会の時、この5年間の政権の成果を住民に発表しなければならないので、来年までに何でもいいから成果を出さなければならない。経済は限界が明確で、4月の韓国総選挙と11月の米大統領選挙が局面転換のための最後の機会だと見たようだ。高強度・複合挑発に出ると考える理由だ」

──南北関係をただ断絶してもいいのに、あえて憲法改正までして無理をするのは、帰ってくる道をもシャットアウトしてしまうものではないのか。

「そうだ。そこまでする必要はないのに、とても極端だ。金正恩が政権10年目を超えたが、依然として「支配」だけできて「統治」はできていないのだ。

後継者時代から金正恩が北朝鮮幹部の間で『後継者はとても度胸があって怖い人だということをしきりに見せようとしている』という話が出ていた。『若造コンプレックス』と韓国に対する劣等感をまだ克服できていないようだ」

──北朝鮮の挑発の様相はどうなると予想しているか。

「西海北方限界線(NLL)と軍事境界線(MDL)挑発、『準戦時状態』を宣言した2015年と2017年グアム包囲射撃威嚇、大型核弾頭開発のための7回目の核実験などを混ぜたハイブリッド型複合挑発が予想される。全面戦争まではいかなくても、韓国を人質にして米国国民まで脅威を感じるような強力な挑発に出るだろう」

──韓国に対する核攻撃もありうるか。

「北朝鮮の兵器は多くの欠陥があるが、対応する立場では最悪の状況に備えなければならない。従来のレベルの挑発では韓米両国を動かすのは難しいと考えるので、挑発の強度を引き上げるだろう」

──米朝非核化交渉は今後可能か。

「非核化交渉はもうしない。北朝鮮は非核化交渉ではなく、核軍縮交渉を行うという立場だが、米国が受け入れれば我々には北朝鮮の核を認める最悪の状況が起こり得る」
(朝鮮日報参照)

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