刺激が強過ぎて「もう無理!」となる人も?

 マンガの実写化が発表されると、作品によっては「観たいけど、さすがにあのシーンは再現できないでしょ」「マンガだからできた表現だから実写は向かない」など。懸念の声が出てSNSでトレンド入りすることも珍しくありません。また、目を逸らしたくなるような暴力シーン、激しい性描写が特徴的な青年マンガの実写化では、「再現して大丈夫なのか……?」とさらなる心配も生まれるでしょう。

 今回は過激シーンから逃げずにR15+指定で公開された、激しすぎるマンガの実写映画を紹介します。

●『ヒメアノ〜ル』

『行け!稲中卓球部』や『ヒミズ』などで知られる古谷実先生による同名マンガの実写化映画『ヒメアノ〜ル』は、快楽殺人犯の森田を中心とするサイコスリラー作品です。

 2016年に実写版映画が公開された際は、人間をターゲット(餌)としか考えておらず、人の首を絞めることに性的興奮を感じるサイコパス的な一面を持つ森田を、当時現役のジャニーズアイドルだった森田剛さんが演じたことも大きな話題となりました。

 最初は冴えない青年、岡田(演:濱田岳)と先輩の安藤(演:ムロツヨシ)、安藤が思いを寄せるカフェ店員・ユカ(演:佐津川愛美)の三角関係を描くラブコメかと思いきや、後半から森田の手でありふれた日常が狂気に染まっていく同作は、原作とはまた別の残虐シーンも多々あり、レーティングはR15+に指定されています。

 特に岡田とユカのベッドシーンと、森田の殺人シーンが交互に描かれる演出や、侵入した家の女性を犯して殺した後、平然とカレーを食べ始める森田の姿、殺される寸前に失禁する被害者など、生々しい描写が相次ぎました。2015年に行われた関係者向けの試写会では、途中退席者が出たことも明らかになっています。そんな人として壊れてしまった森田のバックボーンは、原作とはまた別の設定で描かれており、過激ながらも最後は切ない涙を誘う作品として支持されました。

●『愛しのアイリーン』

 前述の『ヒメアノ〜ル』を手がけた吉田恵介監督は、同じくR15+指定となった実写映画版『愛しのアイリーン』でもメガホンを取っています。

『宮本から君へ』『ワールドイズマイン』などで知られる新井英樹先生による『愛しのアイリーン』は、国際結婚した主人公を通して地方の農村が内包する問題までも真っ向から描いた作品です。原作は生々しい性描写に加え、暴力シーンも多く、映画化発表の際も「実写化は難しいのではないか」という声も出ていました。

 40歳を過ぎても恋愛経験がない主人公・岩男(演:安田顕)は、貯金をはたいて結婚したフィリピン人女性のアイリーン(演:ナッツ・シトイ)を連れて実家に帰ってきますが、息子を溺愛する母・ツル(演:木野花)から猛反対を受けます。持て余した性欲が発散できないあまり放送禁止用語を叫びまくる岩男も強烈ですが、息子が突如連れてきたアイリーンに初対面で猟銃を向けるツルも常人離れしたキャラクターです。

『愛しのアイリーン』は、実家で暮らす中年独身男性や閉鎖的で固定観念に捉われた老人ばかりの村社会、売春の斡旋を行うヤクザといった社会の闇に斬り込んだ作品でもあります。あるキャラの局部がモザイクなしで映り込むほか、流血シーンも多く、観た人からは「思ってた以上にエロもグロもあった」「ツルさんがハサミ使って○○の場面に目背けた」などの感想も続出しました。それでも「キャストの演技が凄過ぎて震えた」「万人にはおすすめできないけど、観て良かった」「過激だけど純愛もの」と、好意的な声も目立っています。

「読んではいけないマンガ」がついに実写化!

●『シマウマ』

映画『シマウマ』ポスタービジュアル (C)2015 東映ビデオ

 2011年より雑誌「ヤングキング」で連載がスタートしたマンガ『シマウマ』(作:小幡文生)は、とあるきっかけで主人公ドラが依頼主から寄せられる復讐を代行する「回収屋」の世界に足を踏み入れていく作品です。

 回収屋は依頼主が感じた以上の苦痛を復讐相手に与えていきますが、内容はどれも精神的、肉体的にもハードで目を塞ぎたくなるほどであり、2016年に実写化された際は「絶対に読んではいけないマンガが映画化」と発表されました。

 実写映画では、ドラ役の竜星涼さんが時にボロボロになりながらも、回収屋として活動していく姿がバイオレンスかつスリリングに描かれています。奇抜なメイクが特徴的な快楽殺人者のアカ(演:須賀健太)、回収を失敗したアカの歯を砕くほど殴ったボスのシマウマ(演:加藤雅也)、男女を問わず色仕掛けが得意な紅一点のキイヌ(演:日南響子)など、一癖も二癖もある回収屋の面々もリアルに再現されており、「よくここまでやったな」と驚きの声もあがりました。

 実写化が発表された際の橋本一監督の「血とゲロにまみれた、爽やかな感動青春映画」というコメント通り、作中では激しい人体欠損シーンや吐瀉物もたびたび映り込んでおり、苦手な人はかなりギョっとする内容になっています。

●『ダブルミンツ』

 官能的なストーリーから青春ドラマ、ボーイズラブまで多彩な作品を数々発表している漫画家の中村明日美子先生の『ダブルミンツ』は、実写映画化が発表された際に「R指定ないと厳しいでしょ」「本当に実写化するの?」と、喜びと衝撃が入り混じった反応がSNSに多数寄せられていました。

 同作は同じ名を持つふたりの男が大人になって再会し、ある事件の共犯者となって、主従関係が変化していく物語で、「ダークBL」とも形容されています。

『ダブルミンツ』は壱河光夫/ミツオ(演:淵上泰史)が高校の同級生だった市川光央/みつお(演:田中俊介)から、「女を殺してしまった」と電話を受けるところから始まります。高校時代、ミツオは同じ名前のみつおから激しいいじめを受けて下僕となっていたため、彼に逆らうことなく共犯関係となりますが、その後かつての主従関係が変化していきました。

 衝撃的なストーリーに加え、暴力シーンや激しいベッドシーンもあり、「観た後ガツンとくる作品」などの感想も少なくありません。ただ、「暴力」という形でしかミツオに感情をぶつけられないみつおのキャラクター性や、耽美にも感じる濡れ場は、原作ファンからも「実写化は不安だったけど、世界観はそのままだった」「原作も好きだけど、実写の骨太な男同士の関係性も良かった」と高く評価されています。