「W主人公アニメ」を代表する1作、劇場版が大ヒット!

 2024年1月26日に公開された劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』は、公開から3週間で興行収入が31億2630万円を突破するヒット作となりました。TV版の『機動戦士ガンダムSEED』は、幼い頃に親友同士であった「キラ・ヤマト」と「アスラン・ザラ」が、敵対する陣営に所属し、戦いを余儀なくされました。「W主人公アニメ」を代表する1作として人気を博したアニメです。

 劇場版『ガンダムSEED』では、TV版の続編『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の新たな主人公として登場した「シン・アスカ」も共闘します。キラ、アスラン、シンの「トリプル主人公アニメ」ともいえるでしょう。

 また、物語の中心にはキラの恋人である「ラクス・クライン」も存在します。映画のポスタービジュアルではキラとラクスが大きく描かれ、アスランとシンの比重はかなり小さめです。劇場版『ガンダムSEED』はキラとラクスの「W主人公アニメ」ととらえることもでき、観る人それぞれによって、解釈が変わってきそうです。

「W主人公アニメ」は、主人公ふたりの関係値はさまざまで、「どちらに感情移入するか」で作品の楽しみ方も変わってきます。

 ふたりの主人公が敵、味方に分かれた作品の例として、『ガンダムSEED』と同じくSF作品であれば『アルドノア・ゼロ』が挙げられます。舞台は、地球と火星に住む人びとの戦争を終えた世界です。主人公のひとりは、まだ戦争からの復興中である日本の高校生「界塚伊奈帆」です。

 火星の第一皇女である「アセイラム・ヴァース・アリューシア」は、地球との和平を望んでいました。しかし、親善を深めるために来訪した日本で、アセイラム姫は地球人によるテロを装ったミサイル攻撃の危機に見舞われます。アセイラム姫が地球人により殺害されたと偽り、火星は地球に宣戦布告。生き延びたアセイラム姫と偶然出会った伊奈帆も、戦争に巻き込まれることになります。伊奈帆は天才的な頭脳を持ち、訓練機を実戦でも使い続けるエースパイロットとして活躍します。

 そして、もうひとりの主人公は、アセイラム姫の従者であった「スレイン・トロイヤード」です。地球生まれである彼は、火星では虐げられる存在でした。しかし、アセイラム姫だけがスレインを尊重してくれ、彼は姫に恋心を抱いていました。

 火星側の人間であるスレインは、地球人である伊奈帆と戦うことになります。アセイラム姫を守りたい、という想いはふたりとも同じであり、邂逅(かいこう)した際は「共闘するのでは?」という可能性が見えるのですが……? ライバルであり、光と影のような存在のふたりは分かり合うことなく、戦いは続いてしまいます。

 一方で、「相棒」としてお互いの能力を認め合う「W主人公」アニメといえば、『TIGER & BUNNY』が有名です。最初は衝突していた「鏑木・T・虎徹(ワイルドタイガー)」と、「バーナビー・ブルックスJr.」のふたりですが、任務を通じて絆を深めていきます。第2期である『TIGER & BUNNY 2』では、第1話の時点で周囲から一目置かれるほどの名コンビぶりを見せています。

 近年の作品では、中国Webアニメ『時光代理人 -LINK CLICK-』が名コンビぶりを見せる「W主人公アニメ」です。特殊な能力を持ち、依頼者からの任務を遂行する「トキ」と「ヒカル」のふたりが主人公です。トキが依頼人の写真のなかに「ダイブ」し、撮影者の意識に「リンク」します。そして、ダイブ中のトキと意思疎通し、撮影後12時間の出来事を把握して指示を出すのがヒカルの役割です。

 トキは正義感が強く、依頼者に干渉しすぎようとして、冷静なヒカルとたびたび衝突します。しかしふたりはお互いを「信頼できる相棒」として認め合っています。中国ではすでに配信されている第2期『光代理人 -LINK CLICK-II』が、2024年4月より日本でも放送予定です。

 ほかにも、男女の「W主人公アニメ」では、『君の名は』や『かぐや様は告らせたい』などの大ヒット作があります。「キャラが立っている」という点で、主人公格の人物が複数人いる、というのはヒットの要因のひとつなのかもしれません。