原作ファンも納得!体当たり演技へのこだわり

 近年さまざまなマンガの実写化作品が制作されていますが、なかでも現実離れしたギャグマンガの実写化はイメージとの乖離を心配する原作ファンを特に戸惑わせています。クセが強過ぎるビジュアルのキャラクターやナンセンスなギャグも多く、「中途半端な実写化だったらやらないでほしい」とまで言われることも珍しくありませんが、なかにはそんな声を吹き飛ばす成功作もありました。

 例えば、『究極!!変態仮面』(作:あんど慶周)を原作とする実写映画『HK 変態仮面』において、人気俳優の鈴木亮平さんが肉体改造を経て原作通りの「変態仮面」を再現した際には、「原作リスペクトを感じる」「ここまでやられたら文句言えない」と原作ファン以外からも高い評価を得ていました。

 文字通り「身体を張り過ぎた」あまり、その後のキャリアに響く懸念すらありましたが、鈴木さん自身は現在も同作を「代表作」として公言しており、多くのファンを獲得し続けています。

 今回はそんな、俳優の体当たり演技に「そこまでやる?」と原作ファンも驚いた、ギャグマンガの実写化作品を振り返ります。

●『銀魂』中村勘九郎

 強烈な下ネタギャグや賛否を呼んだパロディなど、さまざまな意味で話題を集めていたマンガ『銀魂』は、実写化が発表された際に「どこまでやってくれるんだ?」「キャストもハードル高そう」と原作ファンを戸惑わせていました。

 しかし、坂田銀時役の小栗旬さん、神楽役の橋本環奈さんなど、原作に寄せたビジュアルのキャストや全力での顔芸、ギャグの再現は高い評価を得ており、1作目、2作目と大ヒットを記録しています。

 実写『銀魂』のキャストは万事屋だけでなく、人気の真選組も同じくビジュアル、演技の再現度が原作ファンから好評を得ていました。なかでも、中村勘九郎さんは真選組の局長である近藤勲を演じるうえで文字通り「身体を張った」シーンがあり、「原作リスペクトがすごい」といった声が挙がっています。

 そのひとつが、近藤が道場で素振りの鍛錬をするシーンです。当初は前貼りで全裸に見せながら撮影するはずが、中村さんは「近藤さんが前貼りなんてしてるわけねぇだろ!」と拒否して全裸のまま撮影に挑みました。

 そのため、土方役の柳楽優弥さんが全く演技に集中できずにNGを連発してしまう事態となりましたが、ファンからは「リアル真選組過ぎる」「モザイク越しでもガチなのがなんとなく分かる」と、絶賛と驚愕の声が集まっています。

 さらに万事屋の3人がカブトムシを捕まえに行く「かぶと狩り」のシーンでは、近藤がふんどし一丁で全身にはちみつを塗りたくる「ハニー大作戦」が完全再現されており、普段は歌舞伎俳優として活躍されている中村さんのイメージが大きく変わった方も続出しているようです。

 ちなみに実写『銀魂』2作目の冒頭「将軍接待篇」のシーンでも徳川茂茂役の勝地涼さんが全裸になっており、「出演者が体張り過ぎて笑える」「よく出演OKしてくれたな」と驚きつつも笑いを誘っています。

●『ぐらんぶる』竜星涼、犬飼貴丈

 ダイビングサークルを舞台にしながら、ダイビングよりも飲酒シーンが多い青春ギャグマンガ『ぐらんぶる』(原作:井上堅二、作画:吉岡公威)は、あまりの登場人物の脱ぎっぷりから実写化は難しいと考えられてきました。

 しかし2019年に実写映画化が発表され、主人公の伊織と同じサークルメンバーの耕平を竜星涼さん、犬飼貴丈さんが演じることがわかると、SNSには「あのイケメンふたりが全裸になるってこと?」「よくオファー引き受けてくれたな」と困惑の声も出ていました。

 実際に竜星さん、犬飼さんがともにほぼ全裸のまま大学のキャンパス内で失踪する様子がうかがえる特報や全裸のキービジュアルには、「本気で原作に寄せてきた」「ここまでされたら文句言えない」といったコメントも相次いでいます。キャストのふたりのマネージャーから「イベントに裸で出てくださいと言われたらどうしようと思うと怖くて眠れない」「文字通り裸一貫頑張りました」と、やはり裸に触れるコメントも発表されており、注目ポイントとなっていました。

 本編では冒頭からふたりが何度も酒で記憶を飛ばし、大学内で全裸で目覚めて騒動を起こす場面がタイムループのように描かれたほか、さまざまな「体当たりシーン」が登場します。原作者の井上堅二先生が「実写映画『ぐらんぶる』に、僕から愛を込めて一言。―――『誰がここまでやれと言った』」とコメントするなど、大きな話題を呼びました。

●『珍遊記』松山ケンイチ

 かつて「週刊少年ジャンプ」で1990年に連載されていた伝説のギャグマンガ『珍遊記 -太郎とゆかいな仲間たち-』(作:漫☆画太郎)も、過激な下ネタギャグやさまざまなパロディネタ、際どいブラックジョークが多く、のちに実写化されると思っていた人はほぼいなかったのではないでしょうか。

 2016年に公開された実写版『珍遊記』では、主人公の山田太郎を演じる松山ケンイチさんが後ろ姿であるものの全裸になっていたり、太郎とともに旅立つ僧侶の玄じょうを演じる倉科カナさんが躊躇することなく際どいセリフを口にしていたりと、原作の持つはちゃめちゃな世界観が再現されています。

 松山さんは過去にも『デトロイト・メタル・シティ』のヨハネ・クラウザーII世、『DEATH NOTE』のL、『聖☆おにいさん』のイエスなど実写化作品でクセの強い役所を見事に演じていますが、『珍遊記』の山田太郎も「もうこの人にしかできない」「思い切り良過ぎて笑った」「カメレオン過ぎる」「実写化で一番信頼できる」と、観た人からは軒並み高評価を得ています。

 原作者の漫☆画太郎先生も、「史上最低の糞映画にしろって言ったのに、なんでこんなに面白くしたんだバカヤローッ!!」とコメントするなど、松山さんの体を張った演技には原作者も思わず納得していたようです。