人気はさながら休載の多さでも注目される

 マンガ作品の結末や、結末に向けた新たな展開は誰しもが気になるものですが、原作者の事情で物語が完結しないまま、連載がストップして早数年……という作品も少なくありません。長期間、空いてしまってもファンが心待ちにし続ける名作にはどんな魅力がつまっているのでしょうか。

●『HUNTER×HUNTER』(著:冨樫義博)

 1998年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)にて連載が開始された『HUNTER×HUNTER』は同誌を代表する作品のひとつで、シリーズ累計発行部数は2022年10月時点で8400万部を超えています。

 本作品は、財宝や遺跡発掘、幻獣探しなどに生涯をかける偉大な「ハンター」の父親に強く憧れる主人公のゴン=フリークスが、父親に会うための旅をする物語です。個性豊かなキャラクターたちの細やかな心理描写や、生命エネルギーを操る「念能力」を使用したユニークな戦い方などが人気を集めています。

 1999年と2011年にはTVアニメ化もされ、全世界に熱狂的なファンを抱えているにもかかわらず2006年より数か月から数年の単位で休載を繰り返しています。2022年10月に約4年ぶりに連載再開した際には、多くのファンが歓喜しましたが、同年12月に「400話を最後に週刊連載終了」、そして「週刊連載ではない掲載形態で継続」する旨が発表されました。

 SNS上では「Xに連載再開のワードがトレンド入りしていると『HUNTER×HUNTER』を期待してしまう」「再開を急かすより今は読み返すことだけで幸せを感じる」などと、続きを待ち望む声が絶えません。

●『NANA−ナナ−』(著:矢沢あい)

『NANA−ナナ−』は、2000年に「Cookie」(集英社)にて連載開始されたのち2002年、第48回「小学館漫画賞」受賞した作品です。

 同作は、新幹線で偶然となり合わせ、同じタイミングで上京を試みていた大崎ナナと小松奈々が、ひょんなことから東京で同居を開始することから物語が始まります。プロのミュージシャンを目指して上京し音楽に生きるナナと、恋人のため上京し恋愛に生きる奈々という正反対の人生を歩む主人公ふたりを中心に、若い世代が経験しがちな挫折や苦悩、成長がリアルに描かれた作品です。

 同作は、どこか純粋さや綺麗さのある従来の少女マンガのイメージとは一味違い、つい共感してしまう人間の弱さや寂しさなど負の感情まで鮮明に描かれたストーリーが話題となり、2005年に実写映画化、2006年にはTVアニメ化もされました。また実写映画に関しては、興行収入40億円という大ヒットを記録し、特に大崎ナナの自立した女性像や独自のファッションセンスが、女性を中心に多くの観客の心を捕らえ、日本に社会現象を巻き起こします。

 近年も若者の間でブームになった「Y2K」ファッション(2000年前後のテイストを取り入れたファッション)の先駆けとなったのは『NANA』といわれており、時代を超えてリバイバルを起こしました。

 しかし、『NANA』の作者である矢沢あい先生の体調不良により、2009年以降、連載が休止されています。その後、一度も連載再開はなく、「再開してほしいけど矢沢先生の健康が1番」「生きてるうちに続きが読めたらいいな」といった声が聞かれました。

 そんななか、2017年11月にアーティストJUJUさんの楽曲「いいわけ」からインスピレーションを受け、書き下ろされたイラストが音楽番組で放送され、SNSではトレンド入りするなど注目を集めます。多くのファンから「涙が止まらない」「イラストがみられただけで幸せ」などの声があがり、『NANA』がどれほどの人に愛され続けているかがうかがえました。

表情からメンバーたちの真剣さが伝わる TVアニメ『あひるの空』メインビジュアル (C)日向武史・講談社/「あひるの空」製作委員会 ・テレビ東京

作品以上に「作者の安否が心配」の声も

●『あひるの空』(著:日向武史)

『あひるの空』は、2004年より「週刊少年マガジン」(講談社)にて連載がはじまった作品で、バスケットボールに打ち込む高校生たちの奮闘や高校生活が描かれた青春スポーツマンガです。コミックスの累計発行部数は2400万部を超え、連載から15年後の2019年にはTVアニメ化もされました。

 主人公はバスケットボールに情熱を持ちながらも、小柄であることを理由にスタメンに選ばれなかった少年の車谷空(くるまたに そら)です。高校入学後に不良のたまり場となっていたバスケ部に入部した空は、純粋なバスケへの情熱で周りの部員を巻き込んでいき、さまざまな逆境を乗り越えて成長します。

 当初、部活動として機能していなかったバスケ部の部員も、空の働きかけによって真剣に取り組むように変わっていく展開や、試合に負けてばかりでも、それを糧(かて)に前を向いてバスケに取り組む彼らのひたむきな姿には胸が熱くなるものがあります。

 そんな本作は過去に2回、半年〜1年ほどの休載から再開していたものの、2019年からは再び休載に入りました。作者である日向武史先生のX(旧:Twitter)も2021年で更新が止まっているため、作者自身の安否を心配する声もありました。

 作品の掲載がストップした部分が因縁の相手との試合直前ということもあり、「再開が待ち遠しい」「どっちが勝つんだろう?」などと、待ちわびているファンが多いです。特に、今年は2004年の連載スタートから20周年を迎えるため、新しい動きはないか、と期待せずにはいられません。