無慈悲な対応が「むごすぎる」

『ONE PIECE(ワンピース)』では、迫力満点なアクションシーンと、秀逸な伏線回収で多くのファンを魅了しています。一方で、ナミは海賊に、ロビンは海軍に母を殺され、サンジは父から虐待を受けて……など、つらい幼少期を送ったキャラも少なくありません。

 そのなかでも、消されてしまったトラファルガー・ローの地元「フレバンス王国」の過去は特出した「鬱展開」といえたのではないでしょうか。

 フレバンス王国は、かつて「北の海(ノースブルー)」に存在した国で、そこから採取される「珀鉛」が特産物の町でした。

 しかし、実は「珀鉛」は掘り起こしすぎると人体に害となってしまう物質だったのです。王国と世界政府は事実を知りながらも掘り起こすことを止めず、その事実を知らされなかった民は珀鉛病を発症してしまいます。

 悲劇はそれだけではなく、周辺諸国からの無慈悲な対応によって状況はさらに悪化しました。周辺諸国の医師は珀鉛病を伝染病と勘違いして、救いを求めてやって来た人への治療を拒否するばかりか殺害をもくろみ、最終的には火を放ったことでフレバンス王国は滅びてしまいます。当時まだ幼かったローは、死体の山に隠れてどうにか生き延びますが、その恐怖ははかり知れないものでしょう。

 続いては、シーザークラウンによって開発された人造悪魔の実「SMILE(スマイル)」です。笑顔以外の感情が奪われてしまう作用の恐ろしさは、「ワノ国編」えびす町から実感できます。

 えびす町は笑顔が絶えず、常に笑い声にあふれた楽しい町でした。しかし、実際は笑うことしかできなかっただけで、人びとの本心ではありません。特にトの康(本名:霜月康イエ)の処刑を見た町人の爆笑シーンでは「こんなに悲しい笑顔はない」「笑顔なのに苦しすぎる」「なんて残酷な……」との声があがっていました。

 さらに「SMILE」の恐ろしい点は解決策がまだ発見されていないことです。「SMILE」の被害にあった人が心から感情をあらわにできる日は来るのでしょうか。

 ほかにも、ジュエリー・ボニーの過去もかなり苦しい過去が明かされました。「エッグヘッド編」で描かれた回想シーンによって、バーソロミュー・くまの娘、ボニーは血のつながらない親子であることが判明します。明確な表記はないものの、ボニーの実の父は母を拉致した天竜人と推測できるでしょう。

 そして、母の死因である病気「青玉麟(せいぎょくりん)」を幼くして発症、ボニーの命を救うためにくまは自らの肉体を実験体として提供し、自身のサイボーグ化と自我の消失も了承します。楽し気な親子のやり取りから一変する、むごい展開に「過去一でつらい」「くま、幸せになってくれ……」との声があがっていました。

『ONE PIECE』は最終章に突入したとはいえ、まだまだ先は長いことでしょう。今後のエピソードで鬱展開に巻き込まれた人たちが、心から幸せになれる展開に期待したいところです。