中古車の中には、一般の人たちが使っていた車だけでなく、ディーラーなどで使われていた「試乗車」も一緒に売られています。試乗車としての役割を終えた車両は「試乗車落ち中古車」と呼ばれています。これらの中古車は「高年式の人気車種を安く買える」というメリットがありますが、いくつか注意が必要なポイントがあります。試乗車落ちした中古車の買い方について解説します。

試乗車とは

試乗車とは、顧客が購入前に公道で試し乗りし、走行性や乗り心地を体験する車両です。ディーラーなどでは自社で登録した車両を大よそ半年〜1年ほど試乗車として活用します。

試乗車としての役割を終えた車両は、その後「試乗車落ち中古車」として販売されます。販売時点での走行距離は、数百キロ〜5,000キロ程度の場合が多いです。

▽登録済み未使用車や展示車との違い

試乗車落ち中古車と混同されやすい存在として、「登録済み未使用車」や「展示車」があります。

   ◇   ◇

【試乗車】
用途:顧客が試乗する
新車登録:済み
販売時期(目安):登録後半年〜1年
走行距離(目安):数百キロ〜5,000キロ

【登録済み未使用車】
用途:(売上実績を作る)
新車登録:済み
販売時期(目安):登録後1カ月〜
走行距離(目安):数キロ〜数十キロ

【展示車】
用途:顧客が内外装を見る
新車登録:未登録
販売時期(目安):展示開始半年〜1年後
走行距離(目安):数キロ〜数十キロ

   ◇   ◇

▽登録済み未使用車とは

売上実績を作るなどの理由からナンバー登録のみ行われ、実際の走行には使われていないクルマを指します。登録済みなので中古車として扱われますが、年式が極めて新しく、走行距離もゼロに近い(店舗への移動などはあり)です。

▽展示車とは

ディーラーなどで展示されているクルマです。公道を走っておらず、一般にナンバーも未登録なので「新車扱い」されます。試乗車と同様に一定期間を経て販売されることがあります。

試乗車落ち中古車のメリット

試乗車落ちとなった中古車の主なメリットは以下の通りです。

▽メリット①新車より納期が短い

新車の場合、一般にクルマの納期は概ね1〜3カ月程度です。さらに最近では納期遅延が起こっている車種も多く、納車まで半年以上待つケースも少なくありません。これに対して試乗車落ちした中古車であれば、車両自体は既に用意されているので2週間〜1カ月程度で納車できます。

▽メリット②新車より安い

試乗車は一定の走行距離を走っており、登録済みなので新車とは言えません。そのため車両価格が安いのは当然ですが、新車と比べて10〜20%ほど安価になります。

▽メリット③高年式で走行距離も短め

試乗車落ちの中古車は、基本的に高年式で新車登録からの経過期間が短いです。登録からの期間の目安は半年〜1年程度で、走行距離は数百キロ〜5,000キロ未満の場合がほとんどです。

一般的なクルマの1年あたりの走行距離は8,000キロ〜1万キロ程度。これに比べると、試乗車落ちの中古車は走行距離が短いと言えるでしょう。

▽メリット④上位グレードで人気装備付きが多い

試乗を通して顧客にクルマを買ってもらうため、試乗車は上位グレードで人気のオプションを付けたものが比較的多いです。特に「自分でオプション等を選ぶのが面倒」「どのオプションを付けるべきか分からない」という人にとっては、こうした点もメリットと言えます。

試乗車落ち中古車のデメリット

試乗車落ち中古車では高年式の車両を新車より少し安く購入できる一方、以下のようにデメリットも多いです。

▽デメリット①色やオプションを選べない

製造済みのクルマである以上、試乗車落ちの中古車では色やオプションを自分で選ぶことができません。これは登録済み未使用車や展示車にも共通しているデメリットです。

▽デメリット②小さなキズなどは付き物

試乗車は多くの顧客に利用されており、また販売店では展示車のような役割も果たしています。そのためドアノブなどを中心に、小さなキズがあることは多いです。内装でも目立たないキズができている可能性があります。

▽デメリット③車検の残期間が短め

試乗車は公道を走行するためにナンバー登録を済ませており、その際に車検も通しています。試乗車落ちの中古車として販売されるまでに半年〜1年あるので、その分車検までの残期間が短いです。

▽デメリット④部品の劣化・摩耗のリスクがある

現在のクルマは丈夫に造られており、簡単に故障することはありません。しかし、短距離走行はエンジンに負担をかけやすい走り方の一つです。また試乗の際に急加速や急減速を試されるなど、タイヤやブレーキ回りに負担がかかっている場合もあります。

▽デメリット⑤売却時は「ワンオーナー車」でない

クルマを数年で乗り換えたい場合、試乗車落ちしたクルマは登録済みなので自分が2番目のオーナーになり、売却時は「ワンオーナー車」として売却できません。そのため殆ど同条件のワンオーナー車に比べると、査定額が落ちてしまいます。

試乗車は「人によってはオススメ」

試乗車落ちの中古車については「安く買えてよかった」「問題なく走っている」という意見も多いです。しかし、その一方でデメリットも多く「やめた方がいい」という人もいます。

購入には向き不向きがあるので、以下の内容を参考に「自分に合っているか」を考えてみてください。

▽試乗車落ち中古車をお勧めする人

試乗車落ちの中古車は、特に以下のような人と相性が良いです。

・人気車種の高年式車を安く買いたい
・色やオプションにこだわりがない
・小さなキズなどは気にしない
・部品のちょっとした劣化も気にしない
・ちゃんと走ってくれれば良い

「ある程度新しいクルマが欲しいけど、それ以外の大きなこだわりはない」という人ならば、試乗車落ち中古車との相性は良いでしょう。自分でオプション等を細かく検討する必要がなく、高年式の人気車種を少し安く手に入れられます。

▽試乗車落ち中古車をお勧めしない人

以下のような人には、試乗車落ちの中古車は向かないでしょう。

・使用感があるのは気になる
・キズがあるのは嫌
・部品の劣化が不安

車に乗っていれば、いずれはキズや汚れがつくもの。しかし「他人によって付けられたものは気になる」という人は少なくありません。 また少しでも故障などのリスクが気になるのであれば、試乗車落ちの中古車は避けた方が良いでしょう。

試乗車落ち中古車の買い方

ここでは、試乗車落ちした中古車の買い方や購入前のチェックポイントを解説します。

▽試乗車落ち中古車が出回る時期

試乗車が中古車として販売されるのは、一般に試乗車として利用を開始してから半年〜1年後です。しかし「いつから試乗車として使われているか」は、基本的にそのお店の人しか分かりません。

一般の人にとっても目安となりやすいのが、モデルチェンジやモデル改良のタイミングです。特にマイナーチェンジやフルモデルチェンジの際は試乗車を入れ替える可能性が高く、その際に試乗車落ちの中古車が出回ります。ただし、ここで購入できるのは「一つ前のモデル」であることも留意しましょう。

▽購入できる場所

試乗車落ちした中古車を購入できるのは、基本的に以下の2カ所です。

・ディーラー
・中古車専門店

特に手に入りやすいのはディーラーですが、車両価格は中古車専門店より高い場合が多いです。そのため価格を重視したい場合は、中古車専門店に問い合わせてみましょう。

▽購入前のチェックポイント

試乗車落ちの中古車を購入する場合は、以下の点をよく確認しましょう。

・支払総額と諸費用の内訳
・車両状態と整備の状況
・車検の残期間

クルマの購入時は車両価格の他に諸費用がかかります。たとえ車両価格が安くても、諸費用が高くては元も子もありません。そのため購入前には諸費用の内訳まで確認しましょう。

また「車体に気になるキズや凹みはないか」「タイヤの溝の減り具合はどうか」など、車両状態を自分の目でよく確認し、試乗することも重要です。

▽保証もチェックを!

一般に、試乗車のように初度登録から3年以内の車両はメーカー保証を継承できます。また中古車専門店が独自の充実した保証プランを用意していることもあります。万が一の故障などのために、保証サービスも確認しましょう。

登録済み未使用車もオススメ

試乗車落ちの中古車は、高年式の人気車種を少し安く買う上でメリットがあります。しかし購入にあたってはデメリットやリスクもあるので、自分の目的に合っているかよく考えて購入しましょう。

似たような条件のクルマとしては、登録済み未使用車もおすすめです。未使用車は新車登録後の早い段階で販売されており、試乗車より流通量も多いです。走行距離も極めて短いので、安さより質を重視する場合はぜひチェックしてみてください。

(まいどなニュース/norico)