2023年12月、保険適用となったアルツハイマー病の新治療薬「レカネマブ(商品名レケンビ(R)」。どんな人が治療を受けられるのか、治療方法はどういったものか、自己負担はいくらなのかなど、詳しく解説します。
※この記事は月刊誌『毎日が発見』2024年3月号に掲載の情報です。
新薬レカネマブとは
アルツハイマー病発症のきっかけとなる脳内のアミロイドβを除去して、進行を遅らせることが期待できる初の治療薬。臨床試験によると、レカネマブを2週に1度投与した人たちは、1年半後、投与していない人たちに比べて、悪化が27%抑制されました。
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治療を受けるには
レカネマブの適用となるのは、アルツハイマー病による、軽度認知障害(MCI)と、軽度の認知症の人です。適用を判断するためには、脳内に実際にアミロイドβが蓄積されているかを調べるアミロイドPET検査または脳脊髄液検査を受ける必要があります。
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治療法は?
2週ごとの点滴
2週間に1回、約1時間かけての点滴治療。1年半をめどに行う。
MRIの撮影
2、3、6カ月目にMRI検査が必要。
料金
薬価は200mg1瓶4万5777円、500mg1瓶11万4443円。体重が50kgの人の場合、年間費用は約298万円。患者の自己負担額は1〜3割。高額療養費制度の適用あり。

こんなことがあったら病院へ
レカネマブの治療を受けるには、早期発見が何よりも大切。「おかしいな」と思ったら、ためらわず医師に相談を。
・1年前と比べて物忘れが多くなった
・何度も同じものを買ってしまう
・半年前に比べて家事の段取りが悪くなった
・自分では意識がないが、家族から「最近、物忘れが多い」と指摘される

2025年には、認知症の患者数は約700万人となり、中でも6割以上を占めるのがアルツハイマー病です。
「レカネマブは、アルツハイマー病の原因となるアミロイドβ(ベータ)というたんぱく質を取り除き、進行を抑える薬です。残念ながら、すでに低下した認知機能を元に戻す効果はありません。使用できるのは、アルツハイマー型の軽度認知障害(MCI)または軽度の認知症の人で、なおかつ脳内にアミロイドβが蓄積されていると診断された場合のみになります」と、羽生春夫先生。
18カ月間の臨床試験によると、レカネマブの治療によって病気の進行を7.5カ月遅らせる効果が見込まれたといいます。
もっとも、副作用もあります。
点滴直後の発熱や倦怠感の他、脳内で出血が起こったり、脳がむくんだ状態になることも。
深刻な副作用が見られる場合は、投与の中断や中止も必要です。
治療を受けられる医療機関は、認知症の専門医がいることやMRIで脳画像を撮影する検査ができることに加え、アミロイドβの蓄積を確認するためのPET(ペット)検査や脳脊髄液検査に対応できることが条件。
治療を希望する場合は、かかりつけ医や市区町村の相談窓口である地域包括支援センターに認知症の専門医を紹介してもらうのが近道です。
構成・取材・文/寳田真由美(オフィス・エム) イラスト/坂木浩子



<教えてくれた人>

総合東京病院 認知症疾患研究 センター長
羽生春夫(はにゅう・はるお)先生

1981年東京医科大学卒業。東京医科大学高齢診療科主任教授等を経て同大学名誉教授。2020年4月より現職。専門は老年病学、神経病学。特に認知症、脳血管障害など。