2022年4月から、すべての事業主にパワハラ防止措置が義務化されました。しかし、残念ながら、職場での嫌がらせやいじめは一向になくならないようです。パワハラ(パワーハラスメント)を見逃している企業は、社会的な評価を大幅に下げてしまう要因になります。どのようなことがパワハラに該当するのか、改めて確認しておきましょう。


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3人に1人がパワハラ被害の経験者

厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査(2020年度)」によると、過去3年間にパワハラを受けた経験がある従業員は「3人に1人」です。


パワハラ防止措置の義務化が中小企業にも適用される前のこととはいえ、職場では上司から罵倒を浴びせられることや、明らかに嫌がらせと思えるような接し方をされることが、日常的に行われていたことがわかります。


こうしたパワハラが横行するような職場は、社員のモチベーションや生産性も低下し、企業には大きなマイナスとなります。また、パワハラ被害者から莫大な損害賠償を請求されることもあるため、会社としてそのまま放置しておくことはできないでしょう。


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パワハラの典型的な6ケース

職場からパワハラをなくすためには、まず、どのような言動や態度がパワハラに該当するのか、パワハラの定義を確認しておく必要があります。


「労働施策総合推進法」によると、同じ職場で働く者に対して「優越的な関係を背景とする言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」「労働者の就業環境が害される」という三つの要素をすべて満たす言動をパワハラと定義しています。


また、職場のパワハラの典型的なケースとして、「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「過大な要求」「過小な要求」「個の侵害」の六つが挙げられています。


殴る・蹴るなどの行為は、パワハラ以前に暴行・傷害の犯罪にもつながる、完全にアウトな行為ですが、人格を否定するような言葉による攻撃もパワハラに該当します。


たとえば、部下がミスしたことに対して上司が「お前はバカか!」「この役立たず」「早く辞めろ!」などは、パワハラとなる可能性がきわめて高い言動です。


判断が難しい指導や育成に関しての言動と行動

パワハラは、職務上の地位や人間関係の優越性を背景に行われるケースが多くみられますが、部下が上司に対して行うこともあります。


また、パワハラかどうかの判断が難しいのが、指導や育成に関しての言動や行動です。部下の成長を促すための叱責が、受け止め方によっては不満と感じ、「業務の適正な範囲」を超えていると判断されることもあるからです。


たとえば、「みんなの前で、上司から大声で怒られた」「処理能力以上の仕事量を与えられた」などは、受け取り方によってニュアンスが違ってきます。上司は、部下の奮起を願っての言動や行動であっても、それを嫌がらせと感じてしまうと、パワハラになっていくのではないでしょうか。


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職場のパワハラ放置は企業にマイナス

このように、パワハラかどうかの判断がつかないケースもあります。できれば面倒なことには巻きまれたくないと考え、面倒を起こしそうな人を遠ざける人もいるかもしれません。


しかし、自分の意に沿わないからといって、職場で仲間外れや無視、業務から外すといった行為は、パワハラに該当する可能性があるため注意が必要です。


いずれにしても、パワハラを見逃していては職場の雰囲気も悪化し、生産性も下がっていくのではないでしょうか。ひいては従業員の心身の健康にも悪影響を与え、離職する人が増えていくことも十分に考えられます。


企業の評判にも影響しますから、全社一丸となってパワハラの定義を再確認し、予防と解決法を見出すことが重要です。


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まとめ

場合によっては、パワハラ被害者から「不法行為責任」や「安全配慮義務違反」などの法的責任を問われ、損害賠償を請求されることもあります。そのような事態に陥る前に、パワハラに対する会社の方針を明示し、従業員に周知を促すことや相談窓口の設置などを行うことが重要です。