電飾の新潮流ネオンカスタムの歴史

 さまざまなクルマのカスタムがあるなかで、発光ダイオード(LED)やネオン管を使ったカスタムは、電飾による変化が比較的取り入れやすいことから「ネオンカスタム」と呼ばれている。

 かつてのライト系カスタムは、ハロゲンタイプのヘッドライトの電球を交換するか、内部ユニットごとHIDやLEDに交換して明るさや色味を追加する程度だった。

 しかし、明るさ、軽さ、小型化が進んだLEDになってからは、デザイン重視の電飾(イルミネーション)カスタムも取り入れられるようになった。

 特に2001(平成13)年に公開されたカーアクション映画『ワイルド・スピード』の影響は大きかった。

 この映画には多くの日本車が登場し、派手なアクションと鮮やかなクルマのカスタムが印象的だった。

・トヨタスープラ
・日産スカイライン
・マツダRX-7

などのスポーツカーが登場し、それぞれ特徴的なネオンカスタムが施されていた。その華やかさに引かれ、日本でも同様のカスタムが流行した。

 特に車体の下で光る「アンダーネオン」は印象的で、ドライバーの好みに合わせて色を選ぶことができ、走っていても駐車していても目立つというドレスアップ効果で人気を集めた。

 そんなネオンカスタムだが、最近では以前ほど見かけなくなったと感じる人も多いのではないだろうか。その理由は何なのだろうか。

約4割の人が愛車をカスタムしている(画像:ナイル)

ネオンカスタムを見かけなくなった理由

 結論からいえば、多くのドライバーが「見た目」よりも「乗り心地・居心地」を重視するようになったからだ。

 1990年代前半に大量に存在したネオンカスタムは、スポーツカーだけでなく、セダンやミニバンにも広がった。特に車体の下側を照らして目立たせるアンダーネオンが人気だった。光源にはLEDテープが使われることが多く、クルマに貼り付けて好みの色に照らすことができた。

 LEDテープは、直線状のテープにLEDライトが等間隔に配置されており、曲げたり切ったりすることができる。そのため、取り付けたい場所に合わせて加工できる。ボディの下端に貼り付ければ、下部を照らすことができる。ネオン管が使われていた頃は破損の心配があったが、LEDテープの普及でその心配は少なくなった。

 ただし、LEDテープならどのようなものを選んでもよいわけではない。貼り付ける部分がボディの下にあるため、雨などでぬれる危険性がある。そのため、必ず防水または防滴タイプを使用することが求められる。また、切り口には防水加工と絶縁処理が必要だ。

 こうしたカスタムを施しても、見た目の派手さはクルマに興味のない女性にはわかりにくく、「無駄に目立つ」「まぶしい」と評判は芳しくないことが多い。加えて、カスタムの目的にも違いが出始めている。

 ナイル(東京都品川区)は2022年11月、全国の自動車保有男女1227人を対象に「車をカスタムした経験」に関する調査を実施した。それによると、「カスタムをしたことがある」と回答した人は36.4%で、約4割の人がカスタム経験者であることがわかった。

 また、「カスタムをしたことがある」と回答した人に、「カスタムの一番の目的」について聞いたところ、最も多かった回答は「居心地をよくするため」で34.9%、次いで「乗り心地をよくするため」が31.8%。一方、「見た目をよくするため」は28.2%にとどまった。

 この結果から、最近はクルマ自体の見た目をよくするカスタムよりも、居心地や乗り心地をよくするカスタムにシフトしていることがわかる。

保安基準適合標章(画像:写真AC)

保安基準のグレーゾーン

 ネオンカスタムが見られなくなったもうひとつの理由は、その適用条件があいまいなことが多いからだ。禁止する法律も取り締まる法律もなく、保安基準もないグレーゾーンにある。

 国土交通省が定める交通運送車両の保安基準では、「その他灯火類」に該当する。この基準を満たしていれば合法であり、車検にも通る。ただし、地域や担当者によっては「車検不適合」「違法改造」とみなされることもある。

 適合要件は次のとおりだ。

・フロントとサイドは赤、リアは赤・橙・白を使用しない
・光の明るさが300カンデラ以下
・点滅や光の明度が増減しない
・光源が車外から見えない

 当然ながら、LEDテープなどが走行中に脱落しないようにしっかりと固定されていることも重要である。つまり、これらの要件を満たしていれば、保安基準に適合し、車検にも合格できる。

 しかし、保安基準を満たしていても、取り外しを求められたり、正規ディーラーの車検で入庫を拒否されたりするケースもある。さらに、装着していることで不審に思われることも多く、警察官による職質の対象になるなど、不便を強いられることもある。

保安基準と経済的制約

 ネオンカスタムは少なからず不都合が生じ、保安基準もグレーゾーンにある。そのため、施すクルマは減ってきていると考えられる。

 一昔前なら、リーズナブルな価格でクルマを購入し、カスタムを楽しむことができたが、いまはなかなか難しい。また、その時々の流行やステータスが違うのだから、クルマに対する考え方に違いが出るのも当然である。

 実際、現在では外観よりも居心地や乗り心地を重視する方向にシフトしている。

 しかし、最近では技術の進歩により、ほとんどのクルマが乗り心地のよいものになっている。そうなると、乗り心地だけでなく「見た目」も重視されるようになるかもしれない。

 その結果、以前のようにネオンカスタムが再び流行する可能性は十分にあるのだ。